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【東洋大学】川口 英夫 教授インタビュー (前編)

各大学の研究室に訪問し、研究者たちにおける英語力向上の可能性を探るインタビューシリーズ。十四回目は、東洋大学の川口英夫教授にお話を伺いました。インタビュー前編では、ご自身と英語との格闘秘話を語ってくださいます。


■ 先生の研究室の専門分野、研究テーマを教えてください。
私の研究室名は「脳神経科学研究室」、英語で言うと「ニューロサイエンス」になります。ただちょっと私の研究室は変わっていて、人の行動と脳の関係性という分野と、もう1つ全く別個に、山中伸弥先生が確立したiPS細胞を神経細胞に分化誘導させる時の成熟過程などを扱う分野にも携わっています。
この2つの分野は、脳や神経というところで一応結びつきはするのですが、はるか遠く離れているとも言えます。ただ、例えば学生の教育という点で言えば、どういうふうにものを考えればいいかといった研究の方法論は変わらないだろうと思います。
■ 身近なところではどういったものにつながる研究でしょうか。
人の行動と脳機能の関係性については、具体的には2つの研究が主になります。1つは、メンタルヘルス不調の予兆を被験者の筆跡の特徴量から把握できないか、という研究です。企業や大学でメンタルヘルスの不調から休職・休学している人が増えている中で、不調を早く察知して対応できるための指標を作れないか探っています。
もう1つの研究も発想は似ているのですが、主に高齢者の方が転倒して寝たきりになってしまう前に、運動機能の低下をその人の筆跡から予測できないか研究しています。どちらも予防医学的な発想なのですが、そこに工学を持ち込んで、メンタルヘルスや運動機能と脳との関係を科学的に導き出そうという位置づけです。
iPS細胞を扱う分野は再生医療の領域ですが、実はもともと私は細胞を扱う研究者ですので、両方やってしまえということで二本立てになっています。
■ 英語での論文執筆や学会発表などで苦戦した経験はありますか。
日立の研究所に在籍していた頃は、研究報告を2つ3つまとめて1つの論文を日本語で書き、それを英語化するという流れで英語論文を書いていました。頭の中でまずは日本語のロジックがあり、それを自力で英語に直して上司などに直してもらっていたわけですが、最初はぼろぼろでしたね(笑)。何度も社内で直されて、経費で英文校正の会社に出して、その後さらに自腹でまた校正してもらっていました。最近はソフトが非常に発達していて、キーワードを入れると論文に出てくるような英文をいくつも例示してくれる辞書があります。それを駆使して書いた英語論文をエナゴに出しても、そんなにひどい文章だとは言われませんね(笑)。
■ 昔と比べると英語の苦労は減りましたか。
いつも苦労しっぱなしです。学生の前ではあまり言えませんが、私は英語が好きではありませんでした。だからもう大変です。読み書きのほうはまだしも、聞いて話すのは本当に大変です。実は今、大学の「キャンパス英会話」というプログラムに学生に交じって参加しています。毎日40分の講座を年間100回やるというもので、どちらかというと一般的な英会話のテキストを使っています。私は学術的な英語のほうが非常に聞きやすいし話しやすいのですが、あえてそれを外しています。
東洋大学はスーパーグローバル大学に認定されており、このキャンパス英会話以外にも、土曜日にマンツーマンで教えてくれる教室や、春・夏の長期の休みに開かれる集中講座もあります。毎日のレッスンを受講しながら短期留学に行けば、学生は格段に英語力が上がると思いますね。
■ 身近に英語を学べる環境があるのですね。
少しずつ、キャンパス全体で「英語を勉強するのは当たり前だよね」という雰囲気になってきているように感じます。このまま定着するかどうか、ここ1、2年が勝負ではないでしょうか。


後編では、英語力を必要とする「現場に放り込む」という、獅子の子落としを想起させる学生や若い研究者への指導方法についてお話くださいます!

【プロフィール】
川口 英夫(かわぐち ひでお)教授
東洋大学 生命科学科 脳神経科学研究
2009年04月 – 現在 東洋大学(教授)
2004年07月 – 2011年03月 (独)科学技術振興機構(統括補佐/グループリーダ 兼任)
1998年04月 – 2009年03月 (株)日立製作所 基礎研究所(主任研究員/ユニットリーダ)
2001年11月 – 2006年03月 東京工業大学(客員助教授 兼任)
1985年04月 – 1998年03月 (株)日立製作所 基礎研究所

 

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