優秀な研究者になるための10の資質
科学研究は、何世紀もの間、技術革新の最前線にあり、私たちを取り巻く世界の理解を前進させ、生活を変える多くの先駆的発見への道を切り開いてきました。そんな科学の発展の一翼を担う研究者として成功するには何が必要なのでしょうか。単に知力と技術的なスキルがあれば良いのか、それともそれ以上の何かが必要なのでしょうか。
優秀な研究者と聞くと、研究室に閉じこもって顕微鏡をのぞきこみ、ひたすらデータに目を通したりする天才肌の人物がステレオタイプ的なイメージかもしれません。しかし実際に優秀な研究者になるためには、実際の研究に必要な知力と技術力だけでは十分とは言えません。専門知識や学歴は確かに重要ですが、他にも科学研究の分野で成功するために不可欠な資質が多数あります。これらの資質を養うには、生涯にわたる意識的な努力と献身を必要とします。この記事では、高い業績を上げる優れた研究者となるために不可欠な資質を10のポイントにしぼって掘り下げてみます。
批判的な考え方から創造性、情熱を注ぎ続ける根気といった幅広い資質を有する研究者こそが、それぞれの分野で秀でた業績を成し、世界に長期的な影響を与えることができるのです。科学的な研究における自分の潜在能力を最大限に引き出す極意を見つけてください。
優れた研究者の資質
研究分野のトップ研究者になりたいと願っているのであれば、内に秘めた類まれな能力と、他者と大きく差をつけるための10の本質的な資質を解き放ちましょう。以下に優秀な研究者に必要とされる10の資質をひとつずつ概説していきます。
1.情熱(研究への熱意)
“Science is not only a discipline of reason, but also of romance and passion.”
– Stephen Hawking
科学は理性の学問であると同時に、ロマンと情熱の学問でもある。-スティーブン・ホーキング博士(イギリスの理論物理学者)
研究者は自分の研究に情熱を持って取り組む必要があります。研究者は、各自の研究分野に変化をもたらし、より大きな利益に貢献したいという願望に突き動かされています。特定のテーマに心から興味を持っていれば、大きな発展を遂げるために必要な時間と努力を惜しげなくつぎ込むでしょう。
2.好奇心
“Millions saw the apple fall, but Newton was the one who asked why.”
– Bernard Baruch
何百万人もの人がリンゴが落ちるのを見たが、なぜなのかと問うたのはニュートンだけだった。
– バーナード・バルーク(アメリカの投機家・政治家)
高い業績を上げる研究者は、飽くなき好奇心を持っています。好奇心こそが、疑問を投げかけ、答えを求め、新しいアイデアを探求し、既存の限界を押し上げる原動力となるのです。好奇心があるからこそ、ひとつの研究テーマに深く潜り込み、真に画期的なものを発見するまで探求し続けるとともに、複数の可能性を検討し、潜在的な解決策を創造的に考えることもできるのです。これは、イノベーションが必要とされる分野や、斬新なアプローチを必要とする複雑な問題がある分野では、特に重要な資質です。好奇心とは、研究への情熱に火をつけることができるものなのです。
3.忍耐力
“Talent is quite common; it is not intelligence that is scarce, but perseverance.”
– Doris Lessing
才能とはごくありふれたものである。不足しているのは知性ではなく、忍耐力なのだ。- ドリス・レッシング(英国の女流作家)
研究者は、忍耐力、つまり挫折や障害に直面してもやり続ける気概と決意を持っている必要があります。実験結果が期待されたように出ないこともあれば、さらには、ほとんど成功と言えるほど順調に進んでいた実験が失敗に終わることもあります。研究は長く困難なプロセスなので、あきらめてしまっては高い業績を上げることはできません。原稿がボツになろうが、ストレスの多い博士課程での作業に追われようが、情熱と何かを見いだしたいという願望があれば、それらに突き動かされながら前に向かって進み続けることができるのです。
4.批判的思考
“Nothing in life is to be feared. It is only to be understood.”
– Marie Curie
人生において恐れるべきものは何もありません。ただ理解すべきことのみです。- マリー・キュリー(フランスの物理学者・化学者)
優れた研究者のもう一つの重要な資質は、批判的思考です。研究者は、データを分析し、パターンを特定し、証拠に基づいて結論を導き出すことに長けていなければなりません。細部に鋭い目を注ぎ、自分の研究の矛盾や誤りを見抜けなければならないのです。成功する研究者は、さまざまな角度から問題にアプローチする能力を有している必要があります。複雑なデータを分析し、その結果から意味のある結論を導き出すことができなければなりません。
5.コラボレーション(協業・協力)
“The hardest problems of pure and applied science can only be solved by the open collaboration of the worldwide scientific community.”
– Kenneth G Wilson
純粋科学と応用科学の最も困難な問題は、世界中の科学者コミュニティのオープンな協力によってのみ解決することができる。- ケネス・G・ウィルソン(アメリカの物理学者)
研究とは孤独に追求するものではありません。時には、チームを組んで行う必要があるため、研究者は他の研究者と協業して効果的に作業を進める方法を心得ている必要があります。自分の考えを明確に伝え、自ら進んで同僚から意見やフィードバックをもらいましょう。チームワークは、多様な視点、スキル、リソースを結集して研究課題に取り組むことを可能にし、専門家としてのネットワークを育み、課題を克服し、知識やアイデアの共有を促進します。研究がますます分野をまたぐようになってきている中、効率的に共同研究を進めるスキルは、研究の成功を助ける重要な要素であると言えます。
6.効果的なコミュニケーション
“You don’t really understand something unless you can explain it to your grandmother.”
– Albert Einstein
あなたの祖母にそれを説明できない限り、何かを本当に理解したとは言えない。- アルバート・アインシュタイン(ドイツ生まれの理論物理学者)
研究者として成功するには、自分の研究成果を幅広い人に効果的に伝えることができなければなりません。同僚の科学者であれ、一般の人々であれ、対象が誰であっても複雑な概念を明確かつ簡潔に説明できなければならないのです。要約を書くにせよ、学会で発表するにせよ、研究資金を得るために説得力のある助成金申請書を書くにせよ、すべての研究者にとって伝える力、コミュニケーション・スキルは不可欠です。自分の研究成果を効果的に伝えることができれば、研究を広め、その分野に大きな影響を与えることができるでしょう。
7.組織力(時間、エネルギー、リソースなどを効果的に使用する能力)
“A goal properly set is halfway reached.”
– Zig Ziglar
適切に設定された目標は、半分達成したようなものだ – ジグ・ジグラー(アメリカの自己啓発作家・講演家)
研究ノート、データ、文献レビューなどを整理する戦略を立てることで、後にデータを分析し、統合することが容易になります。もちろん、優秀な研究者であるためには、時間管理能力の有能さも求められます。さらに、チームで仕事をする場合、誰がどの仕事を担当し、どのような期限があり、それぞれの仕事の進捗状況がどうなっているのかを把握しておくことも重要です。また、自分のためだけでなく、家族や友人との時間を確保することも大切です。ワークライフバランスを保つことは、研究者にとって精神的にも身体的にも良い状態を保つためにとても重要なことです。優れた組織力(Organization skill)は、研究者が常に仕事を把握し、時間を効果的に管理し、他の人とうまく協力するのに役立ちます。
8.慎重さ
“Prudence is a presumption of the future, contracted from the experience of time past.”
– Thomas Hobbes
慎重さとは、過去の経験から引き出された、未来の推定である- トマス・ホッブズ(イングランドの哲学者・政治学者)
慎重さは、優れた研究者の重要な特性だと言えます。というのも、研究者は、時間、資金、材料などのリソースを効果的に管理する上で、適切な判断力と慎重さを発揮する必要があるからです。野心と慎重さの間で適切なバランスを取ることが必要であり、そのためには通常、時間と経験を要します。研究者は多くの場合、限られたリソースしか持ち合わせていないので、研究目標を達成するためにはリソースをどのように配分するかについて戦略的な決断を下さなければなりません。慎重に物事を進めることができれば、研究を最大限の効率と効果で実施できるように、リスクを計画・評価するための意図的な手段を講じることができるようになるでしょう。
9.自立
“Without your involvement you can’t succeed. With your involvement you can’t fail.”
– A.P.J. Abdul Kalam
あなたの関与なくして成功はない。あなたの関与があれば、失敗することはない。- A.P.J.(インドの政治家、科学者、技術者)
自立することにより、研究者は独立して自分の研究を行い、自らの研究を自分で進めることができるようになります。研究の成功を他人に依存することなく、自分の研究を自分のものとして進めることができるのです。自立することで、研究者は自分で決断し、自分で問題を解決することができるため、より効率的で効果的な研究ができるようになります。とはいえ、孤立をすすめているわけではありません。仲間や同僚との協力やコミュニケーションが、研究において重要であることに変わりはありません。端的に言えば自立とは、研究者が必要なときに独立して作業を進め、重要な決断を自らで下す自信と能力を持っていることを意味します。
10.倫理的行動
“Ethics and Science need to shake hands.”
– Richard Cabot
倫理と科学は手を取り合う必要がある- リチャード・キャボット(アメリカ人医師)
研究には最も高度なレベルの倫理と誠実さが求められます。誠実さ、正直さ、被験者や参加者への敬意をもって研究が行われることを保証する倫理的な行動をとることは、優れた研究者の重要な資質です。厳格な倫理指針を遵守し、誠実さと透明性をもって研究を行わなければなりません。さらに、倫理的行動には、研究の限界について正直であること、結果に影響を与える可能性のある利益相反や偏見を認めることも含まれます。
最後にまとめると、優れた研究者になるには、ここに挙げた10の資質、スキル、経験のすべてをバランス良く有している必要があります。自然に身につくものもあれば、訓練やトレーニング、経験を通じて身につくものもあります。こうした資質を培い、常に向上しようと努力することで、一流の研究者となり、自分の研究分野における有効性、生産性、さらには影響力を向上させることができるでしょう。
本記事同様に、研究者として成功するためのヒントをまとめた論文(エルゼビアの学術ジャーナル『Gastroenterología y Hepatología』に掲載)も参考にしてみてください。
Gisbert JP, Chaparro M. Tips and guidelines for being a successful researcher. Gastroenterol Hepatol. 2020;43:540–550. doi: 1016/j.gastre.2020.03.007
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