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後輩指導は博士課程の学生にとって有益か?!

自分の研究を管理するだけでも大変なのに、学部生の指導を行うように言われたことはありませんか?指導方法なんて分からないのに、研究責任者(PI: Principal Investigator)から、学部生の指導を引き受けるように言われたら、どうしますか。確かに大変な役割ではありますが、博士課程(PhD課程)の間に後輩の指導(教育指導)を経験することは、自分自身の知識を広げ、研究に関する目標を学部生と共有し、学部生の研究の対象分野への好奇心をそそるには絶好の機会とも言えます。

もちろん、後輩を指導することは容易ではありません。特に、指導経験がない場合、研究者にとって難しいものになる可能性は捨てきれないでしょう。ただ、博士課程のどの時点で後輩学生の指導を行うか、どのような教育指導を行うか、何名の学生を受け持つのかなどは大学や学部によっても異なるようですし、博士課程になったからといってすぐに教育指導を任されるのではないようです。教育経験を積むために、自主的に教育の機会を持つ研究者もいます。STEM(科学・技術・高額・数学)分野で研究を行う研究者の場合、指導責任には、実験室での講義、例えば、学部生と修士課程学生のために科学的方法と技術の実地説明(デモンストレーション)を行うこと、管理業務、セミナーの開催、そして評価などが含まれるなど、指導内容もそれぞれです。

PhD課程における教育指導の内容

ここでは、PhD課程における教育指導の一例をあげてみます。

教育指導には、実際の教室での授業、学業に関する助言、学生の相談対応、各学部関連の業務、評価を踏まえた履修内容(カリキュラム)の開発、進行中の研究を探究するための学会参加、学部生・大学院生向けセミナーへの参加とそれらへのフィードバック、応用的な研究や学術活動、などといったことが含まれます。教員指導者は、学術方針を順守し、評価データの収集や割り振られた業務に積極的に関与することも期待されています。

大抵の博士課程の学生は、時間を取られる教育指導に関わるのを嫌がるものです。研究者は自分の研究活動に専念したいので、余計な責任を負うのを避けたいと思っています。しかし、博士課程で教育指導に従事することは、研究者としても有益な経験となり得るのです。

PhD課程での教育指導がどう有益なのかを挙げてみます。

1. プレゼンテーション能力を高めることができる
2. 研究テーマに関する知識を磨くことにつながる
3. 研究者自身の研究に関する知識を伝える機会となる
4. 学生からの質問に応える力を高める

教育指導に必要なスキルと得られるスキル

学部生に対する教育指導を行うには、授業計画の作成から、学生の指導、学生の相談対応(カウンセリング)のための事務職員との協力まで、さまざまなスキルが必要とされます。研究者が、学術成果の出版、助成金の獲得、そして影響力の提示によって自らの研究の評価を高めるのに励む間、 (しばしば軽視されはするものの) 教育に関連する活動に従事することは研究者としての成長を示す効果的な方法のひとつと言えます。

学生への教育指導では、効果的な対話(コミュニケーション)力、指導力、さらに適応・洗練するスキルに関する自己の振り返り(自省)、教育指導と研究を両立させる時間管理など多面的なスキルを培います。とはいえ、研究者は自主的な研究を行い、自己管理することに追われているので、こうしたスキルを磨くことが難しい状況にいます。

PhD課程の学生が教育スキルを高める方法

次に、教育指導を行うことで教育スキルを高めるには、どうすれば良いかを挙げておきます。

1. 講義には、研究に関連する題材を選ぶ

研究者は学生の質問に答える必要があります。講義を受け持つ場合に自分が専門とする題材を講義で取り上げることは、効果的な授業計画の準備をするのに役立つだけでなく、学生からの質問に対して的確に回答することにも有用です。

2. 教え方を学ぶ

これまで一度も講義をしたことのない研究者にとって、初めての講義は荷が重く感じられるかもしれません。教え方に関するワークショップに参加することで不安を軽減し、教えることへの自信を高めることができます。何事にも初めてはあるものです。教え方を学び、講義を成功させましょう。

3. 講義の双方向性を保つ

講義の題材について学生が自分の考えを発言しようとしたら、どんなときも耳を傾けます。学生が始めた論議に研究を巡る話や実体験を織り込んでいくことができるはずです。さらに、発言を認めることによって、新しい題材を学ぶことに自分たちも対等に関わっている、と学生に感じさせることができるでしょう。研究に関する専門的な経験を学生と共有してください。理論的な知識が実際にどう機能するかについて学生たちが知見を得るのに役立ちます。

4. 同僚から学び、フィードバック(意見)に対応する

PhD課程の学生が教育指導に関するスキルを学ぶのに最良の方法は、指導教員、同僚、他の部署の職員などがそれぞれの職務でどのような役割を果たしているかを注意して見てみることです。そうすることで、別の教育的技術を学び、学生を研究に引き込む新しい方法を知るのに役立つでしょう。さらに、指導教員や同僚からのフィードバックは、教育指導と教育技術について別の視点を得るのに役立ちます。

5. 作業を両立させる

PhD課程の学生が教育指導を行う場合、研究と教育の2つをどう両立させるかが重要です。教育指導は、自らの研究目標に取り組むこととは異なります。研究はもっと独立したもので、議論する必要があるのは指導教員のみです。一方、教育指導は、コミュニケーション能力と効果的なやり取りなしには成り立ちません。研究者が研究と教育指導をどのように両立させていくかは非常に重要です。
研究者は、研究プロジェクトからの経験を共有しつつ、教育指導を通してプレゼンテーションスキルを身に付けていくことができるでしょう。

6. 学び続ける

もうひとつ付け加えておくと、教育技術に準じ、適宜改良し、PhD課程での研究活動と教育指導の両立に慣れたとしても、時には、失望したり、ストレスを感じたり、素晴らしい授業計画を立てようと苦労することはあることでしょう。しかし、粘り強く目標の達成を目指すことが、優れた研究指導員になる鍵なのです。

教育指導を行う際に気をつけること

「詐欺師症候群(インポスター症候群)」に注意

「詐欺師症候群(インポスター症候群)」とは、自分には能力がないと思い込むことや、自信がなくて不安になること、研究に必要とされる充分な知識を持っていないと思い込むことなど、自己肯定感が低いことに起因する心理状態です。若手研究者はこの症候群に陥りがちですが、自分は学部生を教えるのに充分な専門知識を持っている、と信じて克服することが大切です。

準備は入念に

最初は、授業計画の作成と入念な下調べに多くの労力を使いたいと思うでしょう。初めて教育指導を行うPhD課程の学生にとって、しっかりと準備しておくことはプラスになります。準備が過ぎるということはありませんし、しっかり準備しておけば学生からの質問に答えるのに役立ちます。ただし、学生に対して専門用語を使いすぎないように注意しましょう。

いきなり複雑な概念に飛ばない

講義で、基本的な概念の説明抜きにいきなり複雑な概念を話してしまうと、学部生は理解できないかもしれません。研究者が新たな授業を受け持った場合は、学生に改めて基本的な概念を説明する必要があります。この作業は、研究者自身とPhD課程の研究にとってもためになります。

不正確な情報や誤った情報を学生に伝えない

教育指導には、徹底した準備が必要です。それにより、正しい情報を伝えることができます。学生の質問に研究者が答えられないということがあるかもしれませんが、そのような時には的外れな答えをしたり、誤った情報を学生に伝えたりせずに、答えられないと正直に言うようにします。

初めて教育指導を行う際には、それまでに直面しなかったさまざまな問題に直面するかもしれませんが、そうした経験はPhD課程の学生のキャリア育成において多大な影響を及ぼすものです。確かに両立させるには覚悟も準備も必要ですが、教育指導は博士課程の学生にとって有益と考えて挑戦してみてください。


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