Author First, Quality First
Home
EnagoBy: エナゴ

学術論文における校閲とは(校正と校閲の違い)

what-is-copyediting.jpg

論文を書いたとき、その出来映えを確認し、必要な加筆修正もしくは削除、書き換えなどを行うことで良質な文章にすることができます。学術論文を知名度の高い学術雑誌(ジャーナル)に掲載するためには、所定の投稿規程やガイドラインに従って論文を整えるように求められますが、書式以外にも確認作業が必要です。では、執筆論文を確認する際、「校正(エディティング)」と「校閲(プルーフリーディング)」のどちらが必要なのか迷ったことはありませんか?この2つの違いは?
ここでは校閲と校正の違いを見直してみましょう。

 

校閲(プルーフリーディング)とは - 校正(エディティング)との違い

校正と校閲は、いずれも文章の誤りを訂正し文章の質を底上げ(ブラッシュアップ)する作業です。こうしたサービスを提供する会社でも、この2つの作業をまとめて引き受けるところもあれば、どこまでの作業を求められているか適宜確認する会社もあるようですが、厳密にはこの2つの作業は異なります。

 

校正とは:「正」と書かれるように、表記の誤りを正すことです。一般的には印刷工程の中で原稿の誤植や体裁を確認して訂正することで、スペルミス、誤字脱字のチェックなどを含めて、読みやすい文章にするという観点から文章の確認を行います。例えば、ジャーナルの投稿規程/ガイドラインに沿っているか確認し、数字の示し方(半角・全角)などで規定に合っていない箇所を指摘します。そのためには、表記ルールに関する正しい知識が不可欠です。また、論文の「校正」の場合には、英語のスペルミスや語順の間違いで意味が異なってしまうこともあるので、論文を読み進む際に気になる技巧的ミスがないかを確認することも必要です。そのためには論文の内容(分野)への理解が不可欠であり、該当分野の専門知識がある人が校正を行うべきです。校正を専門的に扱うサービスに依頼する際には、「校正」にどこまでの作業が含まれるのかを確認してください。

 

校閲とは:「閲」には「間違いの有無などを調べる」という意味があり、「校閲」とは印刷・出版前の原稿を読み、内容の正確性や整合性を確認し、誤っている箇所を正すことです。文章の誤記や表記揺れ、矛盾点(論理構成や事実関係の誤りなど内容の整合性、根拠の有無)や不適切な表現(差別につながる表現など)、固有名詞の間違い、構文の一貫性まで、幅広く確認し、本来の意図が明確に伝わるように文章を整えます。適切な言葉で書かれているか、学術的に正確なものになっているかを確認するために資料を調べたりして、正しい内容に修正する指示を出す作業となるので、校閲者には文章力だけでなく、それぞれの分野の専門知識、不適切な言葉の使い方や表現を正すために法令の知識なども必要となります。論理的でない部分や、理解が難しい箇所などについては、修正するか、著者にその旨を指摘することで改善を図ります。

 

校閲でチェックするポイント

校正は誤字脱字のような文章の誤りを正すことに視点をおいているのに対し、校閲は内容が事実に合っているか確認することに視点をおいていることを覚えておいてください。その上で、校閲でチェックするポイントを挙げてみます。

 

1. 用語、言い回し

専門用語、略語、分野特有の言葉が正しく使われているか。

2. 正確性・整合性

論文として正確性・整合性を保っているか。

3. 構成

論文に求められる構成(タイトル、要旨、序論、方法、結果、考察、結論、参考文献)に則っているか。各要素に求められる内容か書かれているか。

4. 論旨の展開

論旨の展開がスムーズで論理的か。漏れがないか。

5. 引用文献

引用されている文献の出典が、文中および参考文献リストに適切に記載してあるか。

6. 一貫性

スペルだけでなく、大文字小文字表記(キャピタライゼーション)、ハイフネーション、略語の使い方なども含めて全体の一貫性が保たれているか。特に、文章量が多い、または複数で共著しているような場合には一貫性を保つことが難しいので、必ず全体を通して確認する。

7. 倫理

研究倫理上の不備(盗用・剽窃など)に加えて、著作権侵害に該当するような記載、人種やジェンダー差別などと取られるような不適切な表現などがないか。差別的表現については、主観ではなく、読者や対象者が「差別だ」と感じる可能性があるかどうかで判断される。この点は、執筆者のモラルだけでなく、論文の内容そのものの信頼性にも影響を及ぼす危険性があるので十分な注意が必要。

8. 信頼性

信頼できるデータであるとの根拠は示されているか。調査データを引用するような場合には、そのデータの出所が信頼できるところか、データ自体が事実かの確認も行う。裏付けが難しい場合には、その数字を引用するか、するとしてもどう記載するかを検討する。また、裏付けが取れた場合でも、データを引用することに許可が必要な場合には、掲載前に許可を取るか、取れなければ引用を控える。

9. 図表や写真

図表や写真の挿入の仕方(配置、タイトルの付け方、タイトルやキャプション表記に使用しているフォントの種類やサイズなど)、図表の内容(文章での説明と図表で示している内容が一致しているか)、説明の正確さ(キャプションなどが文法的にもデータ的にも適切に記されているか)を確認する。

 

校正・校閲の重要性

原稿を完成させるために校正・校閲は必須です。非常に多くの学術論文が言語上のミスや、構成上の問題でリジェクト(却下)されているとの指摘があります。誤字脱字の間違いがないことはもちろん、論理的に矛盾のない文章は読みやすいものですし、学術論文の内容を読者に的確に理解してもらうため、自分の考えについて説得するためには、事実およびエビデンスに基づいて書かれていることが重要です。

 

誤植の修正には余計なコストが生じるだけでなく、小さなミスで執筆者の品位が疑われることになったり、信頼度を下げたりすることにつながりかねません。オンライン掲載の場合には、印刷物に比べると簡単に修正できる反面、拡散スピードが速い上に、転載されたものなどが修正されないままネット上に残ってしまうことや、意図しない解釈をされて引用されてしまうことも懸念されます。誤った情報により誤解を招いたりすることで炎上してしまう事例は多々ありますし、誤解された内容や誤った情報がメディアに取り上げられてしまうと、社会的信用を損なってしまう危険性もあります。どのような出版形式であれ、論文を投稿・出版する前に、校正・校閲を徹底しましょう。

 

論文原稿を書き上げるのは大変な作業です。複数の研究者で共同執筆する場合などは特に表記揺れなども含めたミスが生じる可能性は捨てきれません。表記間違いのような単純なミスだけでなく、文章の内容にまで踏み込んだ徹底的な確認を行うことが重要です。自分以外、特に専門家に校正・校閲の作業を依頼することで、著者が見落とした間違いや矛盾点を指摘、修正してもらうようにしてください。

英文校正者をビデオでご紹介