Author First, Quality First
Home
EnagoBy: エナゴ

研究論文における要旨(Abstract)の重要性

english_editing_tips_e584263714_8775a4c715.jpeg

研究論文の内容を短くまとめた要旨(Abstract/アブストラクト/抄録)は、非常に重要なセクションです。多くの場合、読者がその研究論文の中で最初に目にするものだからです。要旨を読むことで他の研究者たちは、自分の研究と関連性があるかを判断したり、主要な発見・研究成果を把握したりするのです。

この記事では論文の要旨の目的や、要旨の書き方、そして論文の出版において要旨が重要である理由について考えます。

研究論文の要旨とは?

研究論文の要旨とは、読者に研究論文の内容の簡潔な要約を示すものです。いわば論文の「エレベーターピッチ」、つまり手短な自己紹介のようなものです。なぜこの研究を行ったのか。方法はどのようなものだったのか。研究によって何を見出したのか。この研究結果が重要な理由は何か。論文で述べられる研究について、関連するキーワードを使いながら、端的に説明する必要があります。

上手く書かれた要旨であれば、読み手は何についての論文なのか、その分野の研究動向の中でどのように位置づけられる研究なのかを容易に理解することができます。同じ分野の他の研究者たちが、それを読んで、自分の研究と関連性のある研究かを知ることができるのです。

このため、論文の主要なキーワードを要旨に盛り込むことが重要です。また各種データベースに論文がインデックス付けされる際にはキーワードが使われますから、キーワード選びは慎重に行いましょう。

論文の要旨は簡潔であるべきです。一般的には300単語以内とされますが、より短い単語数でのまとめを要求するジャーナルもあります。

要旨に含むべき情報は、学問領域やジャーナルの要件(ジャーナル論文の要旨の場合)によって多少異なるかもしれません。例えば、社会科学系の分野の多くでは、トピックの要約が要旨の主眼になるでしょう。対照的に、科学論文では数値や図表などのデータや結論に重点が置かれることが多いでしょう。

論文の要旨を上手く書くには、自分の研究分野でどの叙述形式が一般的かをしっかりと理解しておき、読者が求めているものを書けるようにすることです。

どのような論文要旨を書くべきか?

当然ながら、学問分野によって研究スタイルは異なり、論文要旨にもさまざまな種類があります。研究分野ごとに一般的な形式がある他、投稿先のジャーナルの要件や、学生の場合には指導教授や学校の決まりもあるでしょう。

論文要旨の種類を大まかに分類したもののうちのいくつかを下に挙げます。形式面では主に構造化要旨/非構造化要旨に大別され、内容面では情報提供型要旨/記述型要旨に分けられます。

構造化要旨(Structured Abstract)

構造化要旨とは、目的(Objectives)、方法(Methodology)、結果(Results)、結論(Conclusion)という明確なセクションに分けられたものです。自然科学系、医療系の論文では通常、この構造化要旨が用いられます。

非構造化要旨(Unstructured Abstracts)

非構造化要旨とは明確なセクションや段落に分けられていない要旨です。多くの場合、非構造化要旨にも構造化要旨と同じ情報が含まれますが、1つの長い段落で記述されます。

情報提供型要旨(Informative Abstracts)

情報提供型の要旨では、主要な論点、研究結果、研究集団と方法論、結論が記述されます。科学系論文の要旨は通常情報提供型で、結果や結論にいたる論文全体の情報の要約が含まれます。

記述型要旨(Descriptive Abstracts)

記述型要旨(叙述型要旨)も、研究論文の情報の要約を示すものですが、結果や結論は示されません。限定的な要旨(Limited Abstracts)と呼ばれることもあり、情報提供型の要旨より短く書かれるのが通例です。人文系や社会学系の研究論文に用いられることが多く、背景情報や研究目的など、研究のアウトラインが記述されます。

構造化要旨/非構造化要旨、記述型要旨/情報提供型要旨など、形式、内容がどうであれ、要旨の目的は、読者たちに論文の内容を簡単に理解してもらえるようにすることです。必要な要素をキーワードを含めて簡潔に記述することで、自分たちの研究情報を、必要としてくれる研究者たちに確実に届けるのです。

要旨はどの段階で書き始めるべきか

論文を多くの人に読んでもらう上で重要な役割を果たす要旨は、いつ書き始めればよいでしょうか。

まず、要旨は多くの読者が論文の中で最初に目を通すものですが、書き手の側では最後に手を付けるべきセクションです。経験の浅い研究者で、執筆の初期段階に要旨を書こうとしてしまう人がいますが、論文は執筆の途中に変化を続けていくものです。論旨が変わったり、データに新たな解釈の余地が出てきたり、新しい情報が入ったり、と論点や方向に変化が生じるのです。残りのセクションの脱稿前に要旨に手を付けると二度手間、三度手間になってしまいかねません。

論文要旨の作成について自信が持てないという方は、最初のうちは論文要旨作成サービスなどを利用してみることで、どのような情報をどのような形で記述すれば良いかが分かるようになるでしょう。

専門の英文校正会社が提供する英文校正サービスでは、キーワードを盛り込む最適化を行い、データベースでの検索に掛かりやすい論文要旨への仕上げまで手伝ってくれます。英文校正サービスと同様、上手に利用することで、研究により多くの時間を割けるようになるでしょう。

要旨は、研究論文の運命を握ります。自力ですべて書く場合も、サポートを利用する場合も、集中して質の高い要旨に仕上げていきたいものです。

 

英文校正者をビデオでご紹介