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引用

今回は、学術著作物における引用の基本を説明します。人の言葉や文章を自分の著作物、口頭発表などで用いる際、以下に述べる点に留意すべきです。

引用したものであることを明確にする

引用文が自分の言葉ではないことを明確にする必要があります。その手順は下記のとおりです。

a) 本文と引用文をはっきり区別する
引用文と本文を区別するための標準的な方法は、引用文の長さに応じて2通りあります。引用文が短い場合は*、引用文を(一重、または二重の)引用符で囲むだけです。長い場合には、いわゆる「block quotation」のスタイルを使用します。block quotationを本文に入れるのにはまず、引用文を導く文を(多くの場合はコロンで)区切ってから改行し、その後引用文を導入します。引用文が終わったら、もう一度改行して本文を続けます。さらに、引用文と本文をより区別しやすくするため、引用部分の余白設定を変えて行の長さを短くします(引用文をイタリック体にしたり、フォントのサイズを小さくしたりすることもありますが、あまりそうする必要はありません)。

*「短い」と「長い」を区別する厳密な基準はありませんが、その目安としてThe Chicago Manual of Style(University of Chicago, The Chicago Manual of Style (16th ed.), (Univ. of Chicago Press, 2010). ISBN 978-0-226-10420-1.)では、100語をひと区切りとすることが推奨されています。

b) 引用の出所を明示する
引用の出所を明示するための主な方法は2つあります。
1つは、参考文献を引用文終了の箇所に配置する方法です。もう1つは引用文が終了した箇所に引用番号だけを振り、参考文献と引用番号を、論文の最後2にまとめる方法です。

参考文献の書き方

参考文献の書き方は、分野によってもスタイルや内容に関して若干の違いがあり、また同じ分野であってもジャーナルによっても違いがあります。しかし基本的な内容は変わらず、以下の要素を含める必要があります。

a) 本i) 著者名あるいは編集者名
ii) 書名
iii) 出版社名
iv) 出版年
v) ISBN

b) 論文i) 著者名
ii) ジャーナル名(本に記載される場合には上記の情報)
iii) ジャーナルの巻数・号数、掲載ページ
iv) 出版年
c) 記事
i) 著者名
ii) 記載される雑誌名または新聞名
iii) 記事のタイトル
iv) 巻数・号数、記載ページ
v) 出版年月日

d) ウェブページi) 著者名(情報が提供されている場合)
ii) ウェブページの所有者、管理者
iii) ウェブページのURL
iv) ウェブページのタイトル(もしあれば)
v) アクセスした日付

なお、引用文が著者によって翻訳されたものである場合は、その情報を参考文献の最後に付け加える必要があります。

引用文の内容

引用文の内容については、注意すべき点が3つあります。

1つ目は、引用文に手を加えてはいけないということです。これは、引用文がたとえ文法的な誤りやタイプミスを含んでいても、絶対にしてはならないことです。なお、読みやすさを向上させるために短い語句を加えることは許されますが、その語句を引用文とはっきり区別するために角かっこ([ ])で囲む必要があります。

2つ目は、引用文として使うのは必要な文章だけということです。必要なテキストが連続して続かない場合は、不必要な部分を省略しその部分を省略記号(「…」あるいは「…」)で置き換えます。

3つ目は、引用文の役割が本文を補足する程度以上のものになってはならないということです。引用文がメインとなれば、本文は本文としての意味をなさなくなってしまいます。


1. 「短い」と「長い」を区別する厳密な基準はありませんが、その目安としてThe Chicago Manual of Style(University of Chicago, The Chicago Manual of Style (16th ed.), (Univ. of Chicago Press, 2010). ISBN 978-0-226-10420-1.)では、100語をひと区切りとすることが推奨されています。

2. かつてはページごとに脚注で参考文献を示すことが標準的でしたが、そのスタイルは現在ではほとんど使われていません。

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