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国際ジャーナルと国内ジャーナル

「国際ジャーナルと国内ジャーナルの違いは?」と聞くと、多くの人が「国際ジャーナルは英語の論文が掲載されており、国際的に認められている。対して国内ジャーナルは日本語の論文が掲載されており、国際的にはあまり知られていない。国際ジャーナルのほうが国内ジャーナルよりも名声が高い」と答えます。本当でしょうか?ここで、この2種類のジャーナルの違いについて考えてみましょう。
国際ジャーナルと国内ジャーナルの違いは、その配布先の違いだけです。つまり、仮に日本在住の日本人の研究者から投稿された、日本語で書かれた論文のみを掲載しているジャーナルでも、もしそれが複数の国にまたがって配布されていたら、国際ジャーナルということになります。逆に、世界各国の研究者から投稿された論文を掲載していても、配布が一国内に留まっていれば国内ジャーナルということになります。
たとえば医学一般を扱うジャーナルで名が知られているものとして、『ランセット』、『ニューイングランド医学雑誌(NEJM)』、『アメリカ医師会雑誌(JAMA)』などがあり、国内ジャーナルでは『日本医師会雑誌』が挙げられます。また各大学、各学部が発行している『紀要』なども実質的に国内ジャーナルでしょう。


一昔前までは、世界各国の研究者から論文が投稿されてくるようなジャーナルはすべて、知名度が高く、さまざまな国で配布されるものでした。「国際ジャーナルは、国際的に認められた、より名声の高いジャーナルのこと」という認識はここからきていると思われます。しかし、これからの学術論文の出版はインターネットなどを通じて、よりオープンになっていくことが予想され、名声や信頼度にかかわりなく、すべてのジャーナルが国際化していくと考えられます。そのような状況に加えて、あるジャーナルを国際ジャーナルと呼ぶか国内ジャーナルと呼ぶかは、そのジャーナルの編集部が決めることなので、誇張されて国際ジャーナルと呼ばれるものも多くなることが予想されます。
このような状況を踏まえ、今後はこれまでよりも、「国際ジャーナル 対 国内ジャーナル」という二項対立は薄れ、「国際ジャーナルに出版したほうがいい」という従来の常識は少しずつ通用しなくなり、インパクト・ファクターなどを参考したジャーナル選びが不可欠となっていくと思われます。
では、日本語で書かれた論文のみを掲載する国内ジャーナルはなくなっていくのでしょうか?
国内ジャーナルの最大の利点は、国際ジャーナルと比べて、自分の研究論文の読者と実際に会うチャンスが比較的高いということではないでしょうか? 国際ジャーナルに論文が掲載されたほうがより多くの読者に読んでもらえるかもしれませんが、実際にはそのうちの何人が、あなたの研究にコメントをしてくれるでしょうか?
国内の学会などで実際に何度も顔を合わせて話をする。そうした相互交流(インターアクション)から次の発見と疑問が生まれるものです。より多くの人へ情報を発信するのも大切ですが、研究者として最も糧になるのは相互交流です。インターネット上の学術雑誌でも、ブログやコメントという形で研究者間の相互交流を促そうとしていますが、まだまだ実際に顔を合わせてなされる会話に取って代わるレベルまでには達していません。そのため今後も、ジャーナルの国際化が進む中、国内ジャーナルの必要性も失われないでしょう。研究者にとっては、今まで以上に国際ジャーナルと国内ジャーナルのどちらをも最大限に利用する才が求められることになりそうです。

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