14

学術ジャーナルの検索データベースを使いこなそう

共同学術研究や分野をまたいだ研究が増えるにつれ、世界中で行われている重要な研究が迅速に利用できるようになることが求められる中、学術データベースの利便性への要求が高まってきました。論文や学術雑誌(ジャーナル)を探したい研究者は効率よく検索したいと思いますし、研究論文を発表しようとしている研究者は、認知度の高いジャーナル、あるいは自分の研究内容に最適なジャーナルを探し出したいと思っています。主要なデータベースにはインデックス(索引)が付与され、検索しやすいようになっていますが、インデックスの付け方はジャーナルの信頼性、拡散力、評価にとって重要であり、最終的にはそのジャーナルの影響度を示すIF(インパクトファクター)だけでなくそのジャーナルに掲載されている論文の引用率などにも影響を及ぼすことになります。

インデックスの重要性

インデックスとは、収録されている多数の論文から特定の対象を素早く探し出すための識別情報などを固有の原則やルールに従って付与するものです。一般的には、データベース固有の基準やルールに準拠したインデックス化が行われ、特定の機関や出版社が慎重な情報収集・整理の後に選出したジャーナルにインデックスを付与した後にデータベースに収録されます。インデックスは、出版倫理を維持し、論文の信頼性、可視性を高め、さらに読者数を増やす助けとなります。インデックスを付与されPubMed、Scopus(エルゼビア)、Web of Science(クラリベイト)、EBSCO、Google Scholarといった評判の高いデータベースに収録された論文・ジャーナルは、幅広い読者に読まれ、影響力を高めることができるのです。

Institute for Scientific Information (ISI) が学術雑誌に関する最初のサイテーションインデックス Science Citation Index (SCI)を1960年に作成して以降、今ではさまざまなデータベースがオンラインで利用できるようになりました。ここでは、初心に戻って査読済論文データベースとして国際的に評価の高いWeb of Science、Scopus、PubMedを紹介します。

Web of Science

クラリベイトが提供するWeb of Science(WOS)のプラットフォームからは、高品質なジャーナル、プロシーディング (講演要旨集)、書籍から特許データ、研究データセットまで計33,000以上もの情報にアクセスすることができます。WOSに掲載されたすべての論文には、著者名と所属機関、妙録、キーワード、助成金提供機関と助成金登録番号、引用文献などの詳細情報も付けられています。単純な文献検索だけでなく、影響力の強い論文を探し、検索結果を分析すること、年ごとの出版物数、被引用数の合計、引用論文数などをまとめる引用レポートを作成する機能を利用して自分の業績を可視化することもできます。また、WOSでは学術機関・団体や企業の研究情報の検索も可能なので、研究動向・技術動向を探り、最も影響力のある研究に資金を提供している助成金提供機関を特定することにも役立つなど、さまざまな機能が備わっています。

Scopus

エルゼビアが提供するScopusは、全分野(科学・技術・医学・社会科学・人文科学)の査読済み文献の妙録や引用文献、ジャーナル、書籍、会議録を収録したデータベースです。2004年にリリースされましたが、1960年代に発表された論文も収録されています。エルゼビアのデータベースであるBIOBASE(Elsevier BIOBASE、生物学)、EMBASE(生物医学)、GEOBASE(地球科学、Enginnering Villageのコンテンツとして位置づけられている)なども網羅しており、現在(2020年12月時点)は、世界5,000社以上の出版社、逐次刊行物25,751タイトル、会議録130,000イベント、書籍250,000タイトルからの8,000万件の文献が収録されています。基本的な論文検索機能に加えて、論文の引用情報やジャーナルの被引用数や論文数などの分析結果を表示することもできます。また、Scopusでは付加情報として学術論文の影響度をFacebook、Twitter、Mendeley、ニュースなどにおける注目度で測定する新しい指標(オルトメトリクス)である社会的影響度(Altmetric for Scopus)が表示される点が特徴的です。

PubMed

PubMedは、アメリカ国立衛生研究所(NIH)内の国立医学図書館(NLM)の部署である国立生物工学情報センター (NCBI) が無料公開している医学系のジャーナルや論文の検索データベースです。論文アーカイブPMC(全文データベース)に基づき、生命科学や生物医学に関する参考文献や要約の検索が可能です。医学、看護、歯学、前臨床・臨床および医療制度まで幅広い分野に関する論文の引用、要旨および全文にアクセスできます。PubMed に収録されているジャーナルに論文を公開できれば、読者を広げ、論文の可視性を高めることに役立ちます。

検索データベースの違いは?

最近では、オープンアクセスジャーナルや論文の検索ができるDOAJ、WHOが開設した生物医学・健康に関する文献の検索ができるHinari、Google Scholar、ニューヨーク公共図書館の定期刊行物部門によって設立された書籍とジャーナルや不定期な出版物を含めたライブラリ・データベースUlrich’s Periodicals Directoryなど、新しいデータベースが登場しています。これらの新しいデータベースや収録されたジャーナル、掲載論文は十分に信頼できるのかが気になるところだと思いますが、玉石混交な場合もあるので情報の出どころや信ぴょう性には注意が必要です。

データベースは、すべての科学分野を網羅し、あらゆる形式の出版物(査読済論文はもちろん報告書、議事録など)を収録していることが理想ですが、専門性が高くなるほど、ある程度分野別になっています。データベースを利用するメリットは、探したい情報を、分野、著者名やキーワードなどから効率的に探し出せることですので、検索条件に最も適した情報(データ)を提供してくれるかが鍵です。他の評価基準としては、データベースが何をどの程度カバーしているか(収録数)と言語選択、ジャーナルの被引用数の分布情報、引用を収集するための基準、インパクトファクターや対象となる発表論文・出版物のオンライン上での存在感(注目度)を算出するためのアルゴリズムにも着目すべきでしょう。一般的に研究者は、分野に特化した選択や時期の絞り込み、キーワード検索といった付加価値のある設定ができるデータベースを好みます。よく使われている文献データベースにジャーナルが収録されれば、そのジャーナルの認知度が上がり、ひいてはそこに掲載されている論文の露出を高めることにもつながります。データベースによっては使い方に慣れる必要があったり、全文を読むには有料なものもあるので、自分が所属する大学・研究機関で利用できるデータベースを確認し、必要に応じてうまく使い分けることが得策でしょう。

ジャーナル検索機能

研究者がジャーナルを探したい場合のひとつには、投稿先として最適なジャーナルを見つけたいときがあるでしょう。論文を投稿するには、研究分野において一流とされるジャーナルの名前が頭に浮かんだとしても、そのジャーナルが論文の内容にマッチしているとは限らないので、慎重にジャーナルを探す必要があります。そんな時にはデータベースの「Master Journal List」またはジャーナル検索の機能が役に立ちます。

例えば、Web of Scienceのジャーナル検索機能「Master Journal List」は、ジャーナル名、ISSN番号または題名で検索ができます。他にも「Core Collection」と称される分類によりSCIE(自然科学)、SSCI(社会科学)、AHCI(人文学)、ESCI(成長分野)、BKCI(書籍)、CPCI(会議録)といった引用指数による絞り込みも可能です。研究者は、自分がピックアップしたジャーナルがScopusにも掲載されているかを「Scopus:収録コンテンツ」で確認することもできますし、ジャーナルに相対的なスコアを割り当てる指標による分析を行うSCImago Journal Rank(SJR)から該当ジャーナルの評価を確認することも可能です。ジャーナルのタイトル、発行元、またはジャーナルの ISSN 番号を使用してデータベースを検索できます。また、研究者はNLM CatalogでジャーナルがNCBIのデータベースに収録されているか(つまりPubMedに収録されているか)をタイトルまたは ISSN を使用して検索することも確認できます。

ジャーナル検索データベースを使った検索はとても有用ですので、効率的に活用し研究および論文投稿の際のジャーナル選出に役立ててください。


こんな記事もどうぞ

エナゴ学術英語アカデミー 電子ジャーナルプラットフォームIOPscience

X

今すぐメールニュースに登録して無制限のアクセスを

エナゴ学術英語アカデミーのコンテンツに無制限でアクセスできます。

  • ブログ 560記事以上
  • オンラインセミナー 50講座以上
  • インフォグラフィック 50以上
  • Q&Aフォーラム
  • eBook 10タイトル以上
  • 使えて便利なチェックリスト 10以上

* ご入力いただくメールアドレスは個人情報保護方針に則り厳重に取り扱い、お客様の同意がない限り第三者に開示いたしません。

研究者の投票に参加する

研究・論文執筆におけるAIツールの使用について、大学はどのようなスタンスをとるべきだと考えますか?