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中国が学術不正防止に本腰

学術不正はどの国でも問題ですが、中国の研究者による学術不正は根が深く、中国国内には不正を補助するビジネスが成り立っているとの話や、査読欺瞞まで横行しているとの噂すら聞こえてきます。最近では、2016年3月に英国の出版社が撤回した論文43件のうち41件が中国からのものでした。さらに2017年4月には、学術出版大手のシュプリンガー・ネイチャーが107件もの中国の論文掲載を取り消し、話題となっています。これは数も多かったからか、中国国内でも問題視され、学術不正に関する記事が新聞やテレビで取り上げられました*1,2

このような事態に至り、中国の学術界や政府もようやく重い腰を上げて、対策に乗り出したようです。

5つの禁止事項を公表

中国の主要研究機関の一つである中国科学技術協会(CAST)が、学術上の不正に関わった学者に対する断固たる措置に乗り出しました。「健全な科学的精神を育む」ことと「科学上の倫理を強化する」ことを目的に、CASTや中国科学院、自然科学基金などの組織が共同で「学術論文公刊に当たっての5つの禁止事項」を公表しました*3

この新たな一連の規定は、学術出版を統治する倫理基準を明確化し、中国の研究者の意識を向上させ、中国学会の評価と利益を守るべく導入されました。最近よく見られる、でたらめな査読やゴーストライターの利用といった諸問題に対処するためのものです。これによると、研究者の禁止事項は以下の5つ。

学術論文公刊に当たっての5つの禁止事項」
1.第三者に論文を書かせること。
2.第三者に論文を提出させること。
3.第三者に自分の論文に何らかの内容を書き加えさせること。
(研究者が自分自身で書いた原稿に基づいて、文章の改善を誰かに委託することは許される)
4.虚偽の査読情報を用意すること。
5.学術論文提出にあたっての規則に違反すること。
(論文をいかなるジャーナルに提出する際も、全執筆者がレビューの上、承認しなければならない。いったん原稿が提出されたら、全執筆者はその内容に責任を有する)

論文取り下げ問題への対応

冒頭に記したように、ここ数年、中国人研究者が共同執筆した論文が、複数の国際的学術ジャーナルから学術上の不正あるいは「第三者機関の評価に不正」があるとの理由で取り下げられています。このような事態に際し、中国の複数の団体・機関が2015年12月、声明を発表。「中国の学界への評価を貶めかねないものである」と指摘し、「それぞれの団体・機関の責任として、わが国の学問の権威を守らねばならない」と述べました。

にもかかわらず中国人研究者の関わる不正の摘発は後を絶ちません。2016年8月、the European Journal of Medical Research誌に掲載されたある原稿が取り下げられたケースは、著者である中国人が所属する組織が、論文の執筆者名に誤りがあるとの懸念を表明したものでした。この撤回通知によると、著者とされる研究者の論文への関与を確認することはできず、また査読の過程でも明らかに手加減が加えられていた、とのことです。研究者たちは、原稿の編集と提出を第三者に依頼していたのでした。

こんな事例もあります。the International Journal of Neuroscience誌の編集者が、掲載された論文の提出から公刊に至る過程で著者リストに変更が加えられているのに気づき、原稿を撤回。論文の出自そのものに重大な疑念を持たれるケースとなりました。

明快なルールと管理の必要性

このような研究者による論文不正が続発する背景には「論文を出さなければ生き残れない」という風潮があります。これは何も中国だけではありません。学術界全体が憂慮すべき事態に陥っているのが現状なのです。

中国学術界が、自国研究者の間にはびこる腐敗をいかに根絶するか、「学術論文の5つの禁止事項」の実効性と効果の度合いが試されそうです。大病院や有名大学の識者にも広がっているネガティブな流れに対して断固とした姿勢を示し、非倫理的行動を認めない多くの誠実な執筆者への支援が広がってほしいものです。

この新ルールが適切に実施されることを確実にするため、中国の諸組織は連絡を取り合い、協力体制を築こうとしています。あらゆる倫理違反を記録し、不正に関わった学者をブラックリストにまとめる情報ネットワークが築かれようとしているのです。5つの禁止事項が、学者を学術上の不正から守り、よい研究環境を維持していくことにつながるのか、今後の動きに目が離せません。


<脚注>
*1 新唐人電視合(New Tang Dynasty Television)107本の中国医学論文が不正により取り消しに【禁聞】
*2  Searchina「中国の学術論文でまた大量の不正発覚、どうしてこんなことが起こるのか=中国メディア」
*3 Retraction Watch「Ever heard of China’s “five don’ts of academic publishing?”」

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