研究論文にストーリー性はいかが?

読んでいて面白い文章、また読みたくなる作品とはどんなものでしょうか。専門性、表現の豊かさ、意外性……。人によってさまざまでしょうが、多くは物語性のあるものではないでしょうか。書いてある内容にストーリーがあるほうが、淡々とした解説を読むより、よほど興味をそそるはずです。では、小説などの文芸作品ではない科学論文でも、同じことが言えるのでしょうか。科学的観察にストーリー性を持たせることで面白みを高められるのかを考えます。

■ 科学論文に面白みを加える要素

論文においても、どのように書けば読者を惹きつけられるかを考えることは重要です。物語には一般的に、登場人物・背景・緊張・行動(アクション)・盛り上がり(クライマックス)・解決の6つの要素が含まれているとされます。日本語で小論文を書く時の構成としては「起承転結」が必要と言われ、また映画や舞台などの脚本の構成では、設定・対立・解決の役割を持つ三つの幕で構成する(三幕構成)のが基本ともされます。つまり文章や作品の中に流れや変化があることが、人々を惹きつける鍵になるのです。では論文の場合に必要な、ストーリー性を加えるための要素を考えてみましょう。

明確な目的

物語において、登場人物の性格や行動を理解できなければ話を理解することができないのと同様、研究論文においては、目的と目的に到達するための方法が理解できなければ、研究を理解することはできません。読者があなたの研究内容に理解を示し、かつ共感してもらえるよう、目的を明確にしておかなければなりません。

研究の背景

物語では、登場人物の行動を理解してもらえるよう、心理描写や回想シーンといった「背景」が共有されます。論文の場合でも、読者が研究の重要性や位置付けを把握するために背景が必要です。研究分野が置かれている状況や、あなたがその研究に取り組むに至った過程などを記すとよいでしょう。ただし、専門的すぎる解説は読んでも面白くないと思われがちです。読者に楽しんでもらうには、簡潔かつ的確な言葉を使用すべきです。専門用語は最小限に抑えたほうがよいでしょう。

実験の内容と結論

研究論文 でアクションやクライマックスに相当するのは、どの部分でしょうか。アクションとは「動き」、「行動」を指すので、予期せぬ発見に至るまでの方法・実験にあたると考えられます。情報が蓄積されていくに連れて見えてきた問題解決の道筋を記しましょう。クライマックスとは、論文を締めくくる結論部分です。アクションを経て導かれた筋道を明確に示すことで、物語は最高潮に向かいます。結論もはっきりと分かりやすく伝え、研究が信頼できるものであることをアピールすることが重要です。

■ ストーリー性の高い論文は読者を惹きつけられるか

ストーリー性の高い研究論文がより多くの読者を惹きつけ、影響力や評価も高まる――。と言いたいところですが、これがすべての研究分野に当てはまるかは不透明です。何をもって効果があったとするかによっても、結果は異なるでしょう。しかし、少なくとも気候変動に関する科学論文における文章スタイルの影響力の調査(PLOS ONE誌掲載の研究)では、ストーリー性のあるスタイルの論文のほうが引用された数が多く、さらには学術雑誌(ジャーナル)に採択されるに可能性が高まった、と示唆されています。一般的な論文発表のプロセスにおいては少なくとも、論文にストーリー性を持たせるという発想は有用な手法であると言えそうです。

優れた研究論文には、図解や図表だけでなく、魅力的な文章が必要です。ストーリー性のあるわかりやすい文章が読者によい印象を与え、より大きな影響力をおよぼすのであれば、使わない手はありません。

ストーリー性のある論文を執筆するには、研究者の創造性と文章力が十分に発揮される必要があります。これは大変な作業ですが、ストーリーに必要不可欠な要素を押さえ、時に感覚的な言葉や表現を使うことで、読者に伝わりにくい情報を上手く伝え、読み手にとってより面白みのある論文とすることができるでしょう。自分が伝えたいことを伝えるためにどうしたらよいか――そのためのひとつの策として、論文にストーリー性を持たせるという発想を取り入れてみてはいかがでしょうか。実際にストーリー性のある論文を書いてみたら、あなた自身もより、研究を楽しめるかもしれません。

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