グラフィカルアブストラクトとインフォグラフィックを活用しよう

論文を書き上げて一息ついたところで、学術雑誌(ジャーナル)からグラフィカルアブストラクトの提出を求められたらどうしますか?

論文の中で複雑なデータを視覚化するのに慣れていても、研究成果を一枚の画像に集約しようとすると難しいかもしれません。あるいは、所属機関の広報部から、最新の知見を紹介するインフォグラフィックを作成するように指示されたらどうでしょう?複雑な情報や研究の内容を単純化しすぎず、一般の人にもわかりやすく、理解しやすくするにはコツが必要です。

最近は、グラフィカルアブストラクトやインフォグラフィックのような視覚的コミュニケーションの素材がソーシャルメディアなどのデジタルプラットフォームで活用されています。今回は、グラフィカルアブストラクトとインフォグラフィックの違いと、それらを活用するために押さえておくべきポイントを紹介します。

グラフィカルアブストラクトとインフォグラフィック

情報を画像で表現することは、複雑な内容を簡潔かつ効率的に説明するのに役立ちます。グラフィカルアブストラクトとインフォグラフィックは、どちらも複雑な情報を視覚的に伝えるものです。ソーシャルメディアなどで不特定多数の視聴者に情報を共有するためによく使われていますが、この2つには異なる特徴があります。

グラフィカルアブストラクトとは?

グラフィカルアブストラクトとは、研究における主要な発見、研究論文の要旨を簡潔かつ分かりやすく視覚的に表す画像です。論文の要点を素早く理解してもらうために活用されます。画像として認識されるものなので、論文のアブストラクトや抄録(テキスト)に完全に代わるものではありませんが、研究成果をアピールするために幅広い分野で活用されつつあります。

グラフィカルアブストラクトに、研究の背景情報から課題、方法、結果、結論など、論文の「要約」に書き込んだものを全て入れるのが良いとの意見もありますが、書き込めるテキストの量は限られるので、読みやすく分かりやすいキーワードやキーフレーズを入れ込むようにすると良いでしょう。

グラフィカルアブストラクト作成の際には、ジャーナルの投稿規程などに特定の指示や基準がないかを確認しておいてください。グラフィカルアブストラクトを作成する目的は、研究成果を簡潔にまとめて伝えることであると覚えておくことが大切です。

インフォグラフィックとは?

一方、インフォグラフィックは、研究の要点にデータや手法、社会的な背景や影響結果を含めて、もっと複雑な情報を明確に、視覚的に表現するものです。

インフォグラフィックは、グラフィカルアブストラクトよりも幅広い情報をカバーすることができ、必ずしも一つの研究論文の結果を伝えることに限定されるものではありません。図表や画像などによって、伝えたいトピックを視覚的に表現するものです。専門的な情報を多くの対象者(読者)に提供することが目的なので、専門的な内容を簡略化したり、取捨選択したりする必要があります。また、インフォグラフィックを作成する際には、自分の伝えたい内容に適したビジュアルスタイル(グラフの種類など)を選ぶようにしましょう。その上で、視聴者の理解度や関心にも考慮しつつ、どのようなビジュアルが魅力的なのかを見極めます。インフォグラフィックは発表スライドやポスターなどに使うのに適しています。

グラフィカルアブストラクトとインフォグラフィックの違い

グラフィカルアブストラクトとインフォグラフィックの比較表を見比べてみてください。両方とも伝えたいことを分かりやすい形で視聴者(読者)に提供することを目的として作成されますが、ビジュアル・コミュニケーションのツールとして効果的に使用するには、それぞれのフォーマットの有効性とデザインやテキストなどの違いに注意を払う必要があります。

特徴 グラフィカルアブストラクト インフォグラフィック
フォーマット

(形式)

画像または図 マルチ画像またはスクロールなどの動的なコンテンツの作成も可能
内容 研究の主要な結果に焦点を当てる 取り上げたいテーマの複数の側面を取り上げたり、複数の研究を網羅することも可能
表現 研究結果を直接的に表現 様々な情報源からの情報をあわせて表現
テキスト使用 最小限、ラベル程度 簡潔な説明を含めることは可能
対象 主にその分野の研究者 一般の人々を含めたより広い対象
準備 研究の主要な発見を視覚的な形で抽出する 様々な情報源からの情報の収集と整理を行う

グラフィカルアブストラクトとインフォグラフィックを作成するための違い

グラフィカルアブストラクトとインフォグラフィック作成時のポイント

グラフィカルアブストラクトやインフォグラフィックなど、論文を補完する視覚的な素材を作成する際に考えておくべきことがいくつかあります。

  • 研究内容をどのように、誰に伝えたいか
  • 読者を引きつけるグラフィカルアブストラクトを論文とともに提出するのか
  • 発見したことを世界に知らせるためにインフォグラフィックを使うのか

グラフィカルアブストラクトとインフォグラフィック作成のための8つのポイント

  1. 簡潔に、焦点を絞る。論理的な流れに沿って、鍵となるメッセージや発見を1~3個の要点に落とし込む
  2. 不要に細かいことを書きすぎず、文字を詰め込まない
  3. 分かりやすい視覚的階層(ビジュアルヒエラルキー)を使う
    *視覚的階層:色、サイズ、コントラスト、位置、テクスチャなどの要素を使って情報に視覚的な優先順位をつけること。文字色を変えて重要な情報を他によりも目立たせることもこれに当たる。
  4. 効果的な視覚的要素(適切な図表やイラスト、関連するアイコンや記号など)を使い、時間をかけずに概念が理解できる構成にする
  5. 視覚障害者にも伝わりやすい配色とし、オンライングラフィックにはテキストによる解説をつける
  6. 提示するデータの科学的な正確性を保ち、結論を誇張せず、適切な引用/帰属を示す
  7. 印刷、オンライン閲覧、ソーシャルメディア、それぞれに適したバージョンを作成し、多様なプラットフォームへの最適化を図る
  8. 必要であればプロの手を借りる

グラフィカルアブストラクトを作成することは、自分の研究という「作品」を宣伝するためのポスターを作るようなものです。研究の認知度を向上させることができます。

そしてインフォグラフィックを作成することは、様々なデータや洞察を織り交ぜてまとまりのあるビジュアルストーリーを作りあげるようなものです。単純なチャートだけではなく、説明や洞察を描写に含めることで多面的にストーリーを伝えることができるので、インフォグラフィックは科学的コミュニケーションに最適なツールであると言えます。

研究における重要な発見を力強いビジュアルに凝縮することに集中するのか、複数のソースから情報を集めてより広く研究内容を視覚化するのか。アプローチが違えば、どちらを作成するのか変わってきます。

ビジュアルを使って情報を示すことによって、観衆(読者)が複雑な研究内容やデータを読み解くことを助けることができます。さらに、ソーシャルメディアなどで使用することで、人々の関心を引くこともできます。

グラフィカルアブストラクトとインフォグラフィックの作成にプロの助けは必要か?

研究者はそれぞれの専門分野に特化した知識を有していますが、研究を効果的に伝えるためのビジュアル・コミュニケーションの作成には別のスキルが必要なため、苦労するかもしれません。

プロフェッショナルなグラフィックデザイナーやサイエンティフィック・イラストレーターは、複雑な研究結果を明確で視覚的に魅力的なグラフィカルアブストラクトやインフォグラフィックを作成することができるので、そうしたプロの手を借りることも一案です。英文校正と合わせて研究プロモーションのサポートを提供しているところもあるので、活用を検討してみても良いでしょう。

自分で作るにしても、プロに依頼するとしても、配色にも配慮し、投稿先ジャーナルのガイドラインに準拠することが大切です。グラフィカルアブストラクトやインフォグラフィックを使うことによって、研究を正確に反映しつつ、視覚的、かつ美しい表現で、研究内容を分かりやすく伝えることができるので、是非活用してみてください。

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