自己引用は、倫理的に良くないことでしょうか?
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ご質問ありがとうございます。自分の論文を引用することは「自己引用(self citation)」と呼ばれています。自己引用そのものは倫理的に問題ないのですが、度が過ぎると、やはり良くありません。出版規範委員会(Committee on Publication Ethics: COPE)は、過度な自己引用により引用件数が操作されていると指摘しています。
実際、多くの研究者が自分の論文の引用件数を増やすために、自己引用をしています。ある調査によると、10万人の研究者のうち約250人において、自身あるいは共著者の引用が50%を上回っていたとのことです。このような現象が起きるのは、採用やグラント申請において、論文の引用件数が非常に大きな影響力を持つためと考えられます。
もちろん、すべての自己引用が引用件数を高めるために作為的に行われているわけではありません。自己引用をせざるを得ないケースも存在します。例えば、長期的に継続しているプロジェクトで、現時点でどこまで研究が進んでいるかを論文の中で説明しなければならないケースです。このような場合、もし、引用せずに過去の論文の内容に言及してしまうと、自己盗用(または重複出版)という別の倫理的な問題が生じてしまいます。
ですから、今回のご質問のケースにおいては、過度な自己引用に気を付けたうえで、ご自身の既発表論文を引用するのが適切と思われます。
もし、他にも倫理的なジレンマでお困りでしたら、エナゴのオンライン学術カウンセリングサービス、までご相談ください。様々な分野における学術出版のコンサルタントが、あらゆる視点から研究倫理についてアドバイスさせていただきます。
グレン・パケット
1993年イリノイ大学(University of Illinois at Urbana-Champaign)物理学博士課程修了。1992年に初来日し、1995年から、国際理論物理学誌Progress of Theoretical Physicsの校閲者を務める。京都大学基礎物理研究所に研究員、そして京都大学物理学GCOEに特定准教授として勤務し、京都大学の大学院生に学術 英語 指導を行う。著書に「科学論文の英語用法百科」。パケット先生のHPはこちらから。