論文投稿・研究発表時の所属の書き方
研究論文を提出するときには必ず所属を書きますが、研究者生活の中で所属が変わることはあるでしょう。
研究環境や立場(役職)が変わっても年月をかけて同じテーマで研究を続ける方もいれば、論文の査読期間中に所属先が変わってしまう方もいるはずです。
では、研究プロジェクトの途中、あるいは執筆時と投稿時で所属先が変わった場合には、どちらの所属先を記載すればいいのでしょうか。
また、以前の職場での研究成果を発表する場合には?今回は論文に記載する所属に関する疑問に答えるべく、基本的な書き方を概説していきます。
論文に所属を記載する理由
論文を投稿する際や学会での研究発表などを行う際には、所属大学・機関(Institution)と学部・部署(Affiliation)を記入することを求められます。
何も変更がなければ、著者が投稿時点に所属している大学や機関の正式名称を明確に記載すれば良い話です。所属を明記するのは、どのような著者がその論文を執筆したのか読者に知らせると共に、利益相反の確認をするためでもあります。
同じテーマを同じような時期に別の大学・機関で研究しているとなれば確認が必要ですし、著者と外部組織との間の利害関係などが研究内容やその解釈に影響を与える可能性がないかの確認(利益相反)も重要です。特に、利益相反は研究の公正性を守るためには重要です。
査読者の選定にも所属情報が使われる
さらに、同じ大学・機関の研究者が査読を担当することがないようにとの配慮にも所属機関の情報は必要です。論文投稿に必要不可欠な所属情報の書き方を見直しておきましょう。
所属の書き方
所属を含めた著者情報は冒頭に
一般的に、論文では最初のページの題名の下に著者名と所属を記載します。
研究成果は研究者だけでなく、所属機関(大学や研究組織)の業績でもあるので、正確に所属を記載することが求められます。
その際、混乱しがちなのがInstitution とAffiliationの違いですが、Institutionには投稿時点で所属している組織や大学名/会社名を記入し、Affiliationには大学や組織の部門(学部、部署など)を記入します。
どのような書式で書くべきかは、過去の刊行物が参考になるでしょう。
例:
Institution(大学や研究機関、企業名): University of Tokyo
Affiliation(部署、学部や学科): Department of Environmental Science, Graduate School of Science
所属の書き方のポイント
- 著者名および所属のスペルは正確に記載する。
- 所属は研究を行った組織(大学・研究機関など)であり、正式名称を記載する。所属機関によっては、記載方法が細かく決められている場合もあるので注意する。
- 所属の記載として、組織名だけでよいか部署名まで含めるか、その順番はどうすべきか、ORCIDの番号が必要かなどは投稿先ジャーナルの規定を確認する。一般的に、大学院生や学生は、大学名に加えて学部名・学科名も含める。
- 所在地(国名含む)の表記が求められることもあるので、規定を確認する。
- 英語表記の場合には、カンマや半角スペースの入れ方に指示がある場合もある。また、英語での略記の仕方についても投稿規定を確認する。
- 複数の著者がいる場合には、それぞれの所属を記載する(必要に応じて文字や番号を振る書き方を次項で紹介します)。
著者の所属先が複数ある場合や、現在の所属先が以前とは異なっている場合は注意が必要です。
書き方の例

出典:ACS Chemistry for Life, Author and Address Information for Manuscript Submissions to ACS Journals
所属が複数の場合
所属先が複数ある場合には、所属機関名に上付き文字(アルファベットもしくは数字、記号など)を振っておき、同じ所属機関に属する著者の氏名の末尾にも同じ上付き文字を記入しておきます。
よって、複数の組織に属している著者の場合には、複数の上付き文字が付くことになります。
アルファベットを使うか、数字や記号を使うか、カッコを付けるかなど詳細な書き方については所属先あるいは投稿先ジャーナルの規定をよく確認して対応するようにしてください。
複数の所属先を記載する際にやってはダメなこと
- 複数の所属先だけ、誰の所属先なのかわからない状態で記載する(上付き字を付けないで列記する)
- 所属先の名称を略称表記する、あるいは整合性のない表記をする
- 投稿規定に準じていない書き方をする
- 上付き文字の不統一
所属先の変更
所属先の変更に関するガイドライン
大学や学術ジャーナルによっては、所属先の変更時の書き方につき規定を定めているところもあるので、現在の所属先と以前の所属先、発表先の学会、投稿先ジャーナルのガイドラインに記載がないかを確認することをお勧めします。
投稿時点で著者が複数の組織に所属している場合には、上述のように所属先を名前とともに記載しますが、時間経過とともに所属先が変わっている場合はこの書き方になりません。
論文作成後に所属先が変更になり、論文に記載している所属先と現在の所属先が一致しないような場合は、読者や他の研究者の混乱を招かないように、以前の所属先も現在の所属先も両方ともわかるように明記しておくことが望ましいとされています。
所属先が変更になった場合
仮に、前の所属先で行っていた研究を、新しい所属先に異動してから発表するような場合、考慮すべきはどこでどの程度の支援を受けて行った研究かという点です。
主として前の所属先からの支援を受けて進めてきた研究であれば、その研究論文を投稿する際には、前の所属先とするのが慣例のようです。以前の職場のリソース(研究環境や資金)を使って行った研究を発表する場合、その研究に貢献したのは以前の所属先となるので、以前の所属先を記載すべきとの考え方です。
ただし、その場合は脚注か謝辞などに現在の所属先も記しておきます。研究の内容について読者や他の研究者から問い合わせや質問を受けることのできる連絡先として、現在の職場の情報が必要だからです。
所属先変更の記載
一例ですが、名古屋大学の「著者名と所属 (Authors and Affiliation)」に関するガイドラインには、「所属が変わって、研究をしたときと論文を書いたときの所属が異なるときは、脚注に”present affiliation is ….”などのように書いて、著者名に添える所属は研究をしたところを書くのが原則である。所属が2つある場合、併記することもある。」と記載されています。
ここにも書かれていますが、研究の成果・業績は著者のものであると共に、所属する機関のものでもあるので、単純に現在の所属先さえ書けば良いとせず、きちんと記載に配慮する必要があります。
また、発表する研究を行った所属先を書き、機関名の後ろに丸括弧書きで現在の所属先情報を記すと指定しているケースもあれば、複数の著者が名を連ねる共同研究報告において、共同研究者の所属が変更になった場合には名前と所属機関、職名の後ろに(変更)と記入することを求めているケースなどさまざまです。
詳細な書き方や注意事項については、投稿先のジャーナル、学会や所属機関に確認しておくと良いでしょう。
支援を多く受けた方の所属を記載するとしても、前の所属先と異動後の所属先の両方から同程度の支援を受けて研究を行ったような場合、両方の所属先を記入しておくのが望ましいとはされていますが、どのように記載すれば良いのかは所属機関や学会、ジャーナルによっても異なる可能性があるため、論文投稿先ジャーナルの編集部や、両所属機関に問い合わせて確認することをお勧めします。
最後に、記入した(入力した)所属情報を修正・変更したいとなった場合について補足しておきます。
ジャーナルによっては、所属機関や関連する脚注などの変更をオンラインで行うことができるようになっているので、編集部やジャーナルのサポートセンターなどに確認してみてください。
まとめ
| ポイント | 記載方法 |
|---|---|
| 所属の基本的な構成 | 通常、所属は著者名の直後に記載 ・大学・所属機関名 ・部署あるいは学部・学科名 ・都市名、国名 |
| すべての所属を記載 | 複数の機関に所属する場合は、すべての所属を記載し、上付き文字(アルファベットや数字など)を用いて著者と関連付ける |
| 所属先の変更 | 著者の所属が異動などで変更になった場合は、研究を行った機関を主要な所属先として記載するとともに、現在の所属機関を脚注や注記などに記載する |
所属を明記することは、学術出版における明確性、信頼性を保つのに役立ちます。しっかりと投稿規定を確認して記載するようにしてください。
参考文献
Elsevier What affiliations should I use?
国立極地研究所共同研究報告書兼継続申請書 記入上の注意点
名古屋大学 気象学研究室「論文の書き方」著者名と所属 (Authors and Affiliation)
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