論文のAI翻訳:無料ツールと留意点
学術研究においては、国内外の文献を読むことによるインプットや、論文作成によるアウトプットが欠かせませんが、多くの学術分野の共通言語は英語です。
このことは英語を第一言語としない研究者にとって不利に働きますが、近年ではAI翻訳の精度が大きく向上し、無料で使えるツールも増えてきました。こうしたツールとうまく付き合うことにより、研究にまつわる様々な効率を向上させることが可能になるでしょう。
ここでは、AIを論文翻訳に活用するメリットや、無料で使えるサービス、利用時の注意点について考えていきます。
そもそも何のためにAIを使って論文を翻訳するのか
AIツールを使った論文翻訳と一口に言っても、目的や言語ペアは様々です。
論文翻訳にAIを用いる場合、倫理的に許容される、あるいはAIツールでの翻訳が効率をもたらすような用途とそうでないものがあるかもしれません。
例えば、同等の情報量の英文と日本語の文章の読解速度に大きな差のある日本語話者が、たくさんの文献を下読みして情報を得たいというような場合に、引用数の多い文献などを大量にツールに掛けて斜め読みしていくようなケースもあるでしょう。
あるいは、自身の英語論文の草稿をまず日本語で執筆し、それをAIツールに掛けて英文にするという研究者もいるかもしれません。それぞれに、利点や留意すべき点があります。
論文をAI翻訳するメリット:スピードと効率
人力では何時間、あるいは何日も掛かる論文翻訳も、AIツールを使えばほんの一瞬で完了します。
ツールの精度向上により、語学が堪能な研究者や学生であっても、使い方によっては研究や学習を大幅に効率化することができるでしょう。
無料で使えるAI翻訳ツール
まず、論文翻訳においても活用できる、そして実際に研究者たちも活用している代表的な無料ツールをいくつか挙げてみます。
DeepL
DeepLは自然な訳文に定評があり、学術文書の翻訳に利用する研究者も少なくないでしょう。無料版でも、それなりの文字数を翻訳でき、読みやすい文章に翻訳することができます。
Google翻訳
Google翻訳はブラウザ上で手軽に使えます。.docx、.pdf、.pptx、.xlsxのファイル翻訳も可能で、非常に多くの言語に対応しています。
ChatGPTなどの生成AIツール
主要な生成AIツールでも、翻訳専用ツールと同様の翻訳精度が期待できます。翻訳だけでなく要約や解説も同時に依頼できる点も強みです。
AI翻訳ツールの落とし穴
便利なAI翻訳ですが、その便利さとは裏腹に、あるいは、その便利さゆえに、利用者にとっての落とし穴もはらみます。いくつかのポイントを見てみましょう。
AI翻訳による「自然な訳文」
AI翻訳エンジンは、訳文の読みやすさを優先する傾向があります。
場合によっては、単純ならざる内容を単純化してしまうこともあります。いくつもの英語文献を日本語訳して素早く読み進める上でAI翻訳は役立ちますが、重要な洞察を読み飛ばしてしまうきっかけともなりかねません。
内容面や文脈面での違和感があれば常に原文を辿る心づもりで訳文を読み進めることが肝要です。
AI翻訳に関するジャーナルのポリシー/論文の文体
英語のジャーナルに投稿する論文原稿を、まず日本語で執筆した上でそれを翻訳にかけて作成するようなケースも考えられます。
多くの出版社・ジャーナルでは、人による入念なチェックを行うなど責任ある使い方をする場合に限って翻訳ツールの使用を認めています。
しかし中には翻訳ツールの使用や生成AIによる翻訳を認めていないジャーナル/出版社もあるため、このような形でのAIツールの使用を検討している場合は、事前に著者ガイドラインを確認しておく必要があるでしょう。
また、日本語原稿を翻訳して英語論文を作成する際に特に気にしておきたいのは、英語の文体です。
例えば一般的な日本語の文章表現では、受動態の割合が英語に比べて多いとされます。英語論文の文章でも、客観性を持たせるために、受動態での記述が推奨されていた時期もありましたが、現在では能動態での簡明な記述が推奨されることが多いようです。
機械翻訳をへて、表現がどのように置き換えられているかにも注目しましょう。
AIツールと著作権、データの機密性
AIツールを使用して翻訳した外国語文献の文章をターゲット言語で引用したり紹介したりする場合、原文を確認して引用者自身が手を入れた上で、出典および引用者による翻訳であることを明記しなければなりません。
これは、AIツール・翻訳ツールを使わずに翻訳をした文章の引用の場合と同様です。
また、AIツールは利用者が入力した情報からも学習します。そのため、機密性の高い論文のデータや内容を不用意にAIツールに流し込むべきではないでしょう。
AI翻訳ツールによる論文翻訳についての留意点
AIツールを使った論文翻訳は便利ですが、上述のようなポイントは理解した上で利用することが重要です。
そして原文に照らして訳文を確認することや、ツールに過度に依存せずにその分野の英語や日本語の文体、ワーディングを把握しておくことも大切です。
研究分野・研究領域によっては、専門用語の概念などが翻訳を介することによって分かりづらくなり、初めから原文を読むこと、初めから対象言語で書くことがかえって効率的である場合もあるでしょう。
AIツールを使って外国語に翻訳した論文原稿を公開・発表する場合には、その分野の文体や慣例に詳しい論文校正サービスを利用して必要な改稿を行うことも選択肢となるでしょう。
論文のAI翻訳のまとめ
AI翻訳ツールやサービスサイトを活用すれば、専門性の高い論文の原稿もかなりの精度で翻訳することが可能です。DeepLやGoogle翻訳、生成AIツールなどの無償版・有償版を活用することで研究や執筆を格段に向上させることもできるようになっているのです。
その一方で、AIツールの使用には、様々なリスクが伴います。それらを理解した上でツールを適切に活用し、コンプライアンスに適った情報の収集・発信を行うことが求められています。


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