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お客様の声・井上 亜依 先生 へのビデオインタビュー

井上 亜依 先生

東洋大学 経済学部 教授 

専門分野:フレイゾロジー(英語定型表現研究)

 

先生の研究について教えてください

「フレイゾロジー (phraseology)」、日本語にすると「定型表現研究」という研究をしています。定型表現研究でも「英語」を研究対象としていますので、「英語定型表現研究」が専門です。「定型表現」というのは、分かりやすく言うとフレーズです。私たちの言語というのは、文法規則に則って話す場合もあれば、文法規則を超えたかたまり、つまりフレーズで話されることがあるというのが分かっているんです。文法規則に則った発話/言語活動と、文法規則を超えた言語活動、この両輪で私たちの言語活動は成り立っているという考えですね。

文法規則に基づく言語活動の方は、これまでいろいろ研究されているんですが、フレーズの方は、まず何がフレーズなのかというのが分かっていない。既存のフレーズというのは、辞書などに載ってはいるんですが、正しくありのままのフレーズの姿が反映されているかというと決してそうではないんですね。

ですので、これまで辞書に記載されていたフレーズの見直しから研究を始めて、今は新しく観察されるフレーズというのに着目しています。さらに研究を進め、その新しいフレーズがどういう風にできるのか、という体系的説明を、2018年の12月に研究社から出した本(『英語定型表現研究の体系化を目指して――形態論・意味論・音響音声学の視点から』http://books.kenkyusha.co.jp/book/978-4-327-40170-2.html)で明らかにしました。

今はそのフレーズの中の一分野である「イディオム」を研究しています。イディオムというのは昔からたくさんあるんですが、「変化しない」という固定観念がずっとまかり通っていました。しかし、意味的にも形態的にも変化しないと思われているイディオムも、やはり変化しているんですよ。そのイディオムが、どういう風にして変化するのか、どこが変化するのかについての研究に今着手していまして、今後それを体系的に明らかにしていこうと考えています。

 

先生の研究は、英語教育に応用できますか?

今言ったとおり私たちの言語活動は、文法規則に則って発話/会話/言語活動をする場合と、フレーズに則ってやる場合があり、教育面から言いますとフレーズを覚えた方が効果的なんですよね。特に第二言語習得理論では、人間が物凄いスピードで話ができるのは、文法規則を覚えているけれど、それと同じ位、状況や場面に応じたフレーズを覚えているからなんです。

日本人英語学習者は、文法知識などはたくさん持っているんですが、それを使って瞬時に話せるかというとそうではないですよね。文法規則を使って話せるんですけれども、それが英語らしいかというと、全く英語らしくない。じゃあその英語らしさを伴った言語活動をしていくには何が重要かというとフレーズなんです。学生には大学での英語教育で、まずは状況とか場面に応じたフレーズを教え、そのフレーズというのはどういう文法的な要素があるのか、例えば完了形で使うフレーズもあれば、進行形で使うフレーズもあるといったことを教える、そういう風に段階を経た英語教育に今は携わっております 。

 

ネイティブと非ネイティブの英語はどのようなところで差が出るのでしょう?

特に「英語らしさ」の違いは何に出るかというと、やっぱり論文とかそういうアカデミックなものに出てくるんですよ。これはイギリスの研究者が明らかにしているんですが、イギリスに留学した学生のどういうフレーズの使い方がネイティブと違うのかという点に着目すると、如実に差が出るんです。どんなに良い内容でも、やっぱりアカデミックなジャーナルなどに出す時に、英語らしさにかけていると採択されないんですよね。私自身もエナゴに校正をしていただく前に、自分でいろいろ論文を読んで、使える表現とかフレーズを書きためて、それを使って論文を書かないと、やはり世界に発信できないっていうのが現状です。

 

日本人研究者はどうすればアカデミックな英語を習得できるでしょうか。

もう本当にこれは、日々鍛錬というか日々勉強です。言語の習得には終わりってないじゃないですか。言語って時々刻々と変化しますよね。今回だってCOVID-19でいろんな表現ができてきたわけですし、そういうのに追いついて理解をしていくってことが必要なので、日本人英語学習者、日本人の研究者にとっては英語というのはすごくネックというか、大変なことになってくる。少しでもそれを軽減させるために、序論(Introduction)にはこういうフレーズを、要旨(Abstract)、本論( Body)、結論(Conclusion) ではこういうフレーズを使ったほうがいい、とか、そういうのを自分なりにまとめて蓄積していくことが必要ですよね。

 

どのような場面でエナゴを利用されていますか?

まずアブストラクトを出す時と、海外のジャーナルに出す論文の英文校正をお願いしています。海外の英語学のジャーナルに投稿しようと思ったら、やはり英語学を専門とされる方々が投稿する雑誌なので英語ができて当たり前なんですよね(笑)。ですので、そういう時に2名のプロの方に見ていただくとすごく安心感があります。エナゴのおかげなんですけれども、それをやっていただいて、いつも採択されているので、本当に助かっています。

 

エナゴを知ったきっかけは?

インターネットで英文校正会社をサーチして、エナゴのホームページを見たのですが、一番料金体系や、どういう風に英文校正しますよ、という点が分かりやすかったんですよね。他の英文校正会社で要旨(Abstract) だけお願いしたことがあるんです。2、3社違う会社に。返ってきた要旨(Abstract)を見ると、あまりきちっと校正されていない感じで、私が求める内容が返ってこなかったんです。エナゴだと、私が求める以上にいつも鋭い指摘というか、こういう書き方をすればいいんだという指摘とか、「アカデミックに応じた単語の格上げ」とかをしてくださるので、それからずっと利用しています。

 

先生が英語論文を書く際の一番ネックになる部分とは?

科研費も普通に使えるし、強いて言えば英語論文を書く落ち着いた時間が欲しい一番欲しい。どの大学の先生方もお忙しい中、自分で時間をうまく調整してやっておられるので、やればいいだけの話なんですけれど。でもやはり落ち着いて書く時間って必要じゃないですか。一回書いたものでも数週間とか置いて見直すと、ここおかしいなということもあるので、やっぱり時間が欲しいです。量を書くということも大事ですが、一本一本の論文の質というのがこれからより重要になっていくのではないかなと思います。

 

日本語で書いた論文を全文英訳に出して英語論文にする研究者もいますが、そのような論文は通用すると思いますか?

私はやはり通用しないと思います。日本語の発想というのを、英語を書く時には抜かないと駄目だと思うのです。日本語論文というのは、日本語の特徴でもあるんですが、ざっくりとした感じでも伝わることがあると思うのですが、英語論文を書くときには、主語は何で動詞は何で、目的語は何でという風に、緻密に書かなければいけません。

翻訳自体は、それはそれでアリなのかもしれないんですが、翻訳していただいたらしていただいたで、それを自分の目で読んで、自分の内容がちゃんと正確に伝わっているのか研究者として確認しなければいけないと思います。自分の名前で論文が出るわけですから、責任を伴うため、そこはきちっと翻訳を利用した方には確認した方がいいのではないかなと考えます。医学などを専門とされている先生方で、時間がないとか、英語を書く訓練を受けいないないという方は、翻訳を外部に頼るのは仕方がないのとは思います。でも英語を専門とする場合には書けないと駄目ですよね。

 

先生のような専門家がプログラムを作れば、様々なジャンルの研究者の英語力向上につながるのでは?

仰っていただければ、私教えにいきます(笑)。研究室でもよければ行って、ここはこう書いた方がいいですよとか。日本人の、特に理系の日本人の研究者ってノーベル賞を取るぐらいの素晴らしい先生方がたくさんいらっしゃって、後は発信の問題じゃないですか。なのでそれで私がお役に立てるのであれば、喜んでやりたいんですが、なかなかその接点がありません。

 

内容の薄い研究でも、ディスカッションなどで素晴らしい研究に見せかけるのがすごく上手い海外の研究者もいっぱいいるとか・・・。

それは本当にありますよ。こういっちゃ悪いんですけど、内容的にはイマイチなんだけど、やはり英語が書ける。考察(Discussion)ならその考察をいかに重要に見せられるかっていう英語の書き方、単語の選択とか、それこそフレーズとかの使い方が巧みなんですよね。そこで負けちゃうんですよね、日本人の研究者って。だからそれは本当に逆の発想で、じゃあそういう風に見せかけで上手く書けるのであれば、その人を真似ていく。言語活動というのは子供の頃の言語活動を思い出してもそうですが、親の言うことを真似るというところから始まるので。上手い人の書き方を真似て、この論文は参考になるな、とか、自分の研究に近い論文があれば、書き方を真似て書くというのもひとつの手かなと思います。

 

エナゴを評価しているポイントは?改善してほしい点はありますか?

そうですね。見積もりとかも早く返送してくださるし、いつも要旨(Abstract)でも論文でも、英文校正をきちっとしてくださって安心できるので、これからも使っていきたいなと思っています。改善点というとそれは難しい質問ですね。あまりないですかね(笑)。

※ビデオ内に表示された先生のご所属先は2020年インタビュー当時のものです。2022年現在のご所属先・御役職は 東洋大学経済学部 教授でいらっしゃいます。

※井上亜依先生には、研究室での英語学習法について、エナゴアカデミーでもお話いただいています。
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