論文翻訳で加速する科学の進歩

文献レビューは、論文執筆において不可欠です。研究題目に関する基礎知識だけでなく、研究を裏付けし、促進するための論拠を特定し、重複を避けるのにも役立ちます。技術革新により、かつてないほど簡単に情報共有ができるようになりました。また、英語で出版される論文数が増え、世界の研究が共有されることで科学の進歩は加速しています。

なぜノンネイティブ研究者による文献レビューに論文翻訳が有効なのか?

ポーランド出身のマリー・キュリーはフランス語で論文を出版し、ドイツ出身のアルベルト・アインシュタインは最初の論文をドイツ語で書き、イングランド出身のアイザック・ニュートンは『プリンシピア 自然哲学の数学的原理(原題:Philosophiæ Naturalis Principia Mathematica)』をラテン語で記しましたが、今では、どのような分野の研究論文を発表するのにも英語が使われるようになっています。

英語以外の言語の使用割合は年々低下し、近年では英語がネイティブか否かに関わらず、出版されている科学論文の98%は英語で書かれているとのことです。これは裏を返せば、英語を母語としないノンネイティブの研究者の中には、情報に「アクセス」できても研究内容を「理解することが難しい」人もいる可能性を示します。その場合、公開されている論文にアクセスし利用するために、翻訳が有効なのです。

機械翻訳の進歩は論文翻訳の精度向上につながったか

機械翻訳とは、米科学者ウォーレン・ウィーバーが1947年に提起した概念であり、以降、日々進歩してきました。最新技術であるニューラル機械翻訳(NMT)は、ニューラルネットワーク、ディープラーニング(深層学習)といった人間の脳のニューロンの活動を単純化したモデルを採用することで、それまでの機械翻訳では難しいとされていた翻訳精度を飛躍的に向上させました。単語ではなく文全体を1つとして捉えることで、より高い精度の翻訳を実現したのです。世界の研究にアクセスし、自分の研究の基礎固めをするために英語論文翻訳を必要とするノンネイティブ研究者にとって、ニューラル機械翻訳の自動かつ迅速な論文翻訳は大いに役立っています。

なぜ論文翻訳が研究にとって重要なのか

簡単に言うと「1つの発見は別の発見につながる」からです。新型コロナウイルスは、知識の共有と協力する努力が対策を進めるための道筋となることを示したひとつの例です。1つ1つの研究成果は、それが成功したかしないかにかかわらず、後続の研究を成功に導く糧となるのです。つまり研究者にとって、自分の活動地域や言語に制限されることなく、あらゆる先行研究にアクセスし、内容を理解することが非常に重要なのです。ほとんどの論文が英語で出版される中、論文翻訳は英語に不慣れな研究者の言語ギャップを埋めることに役立っています。機械翻訳は、どのような言語で書かれた論文であってもそれを翻訳し、参照するための便利なオプションのひとつであり、研究者がより広範な文献レビューを行う助けとなります。研究者が自分の研究成果を向上させられる可能性のある幅広い参考文献にアクセスできることを意味しているのです。

論文翻訳において翻訳者と機械翻訳をどう使い分けるのが得策か

機械翻訳がいつか人間の翻訳者よりも優先される日が来るのでは―という話はよく話題にされますが、それぞれの翻訳には特有の長所と短所があり、いろいろな意味で双方が補い合うことが可能です。例えば翻訳者はコストとスピードでは機械翻訳に勝てませんが、機械翻訳は正確さと、あまり使われない言葉や研究分野に特化した言い回しの翻訳において完璧ではありません。そのため研究者は、翻訳者と機械翻訳の両方の利点を使いこなすことが最適解と言えるでしょう。既存の研究論文の大まかな概要把握には機械翻訳を利用し、学術雑誌(ジャーナル)に投稿するための翻訳には専門的なサービスを提供している翻訳会社に依頼するのが、時間とコストの削減につながるでしょう。

参考文献

Does Science Need a Global Language? English and the Future of Research
Bibliometric Survey of Language Use in Scientific Papers
Disadvantages in preparing and publishing scientific papers caused by the dominance of the English language in science: The case of Colombian researchers in biological sciences

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