14

共用ラボ使用時のマナー – 暗黙のルール10

ラボ(実験室)のドラフトチャンバー(ドラフト装置)を使いたい?順番待ちをしているのは、あなただけではないはずです。誰もが自分専用の実験設備や機器を持てる幸運に恵まれているわけではありません。なので、共用ラボで作業をするためには、そこでのルールに従うことが不可欠です。マグネチックスターラー(攪拌機)、ガスクロマトグラフ(GC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などを使っている時は、こうした機器をいつでも好きなだけ使えたら……と誰もが思うことでしょう。

なぜラボ・ルールを守る必要があるのか

あえて書き記されていなくても、共用ラボを使う研究者であれば誰でもそこでの礼儀を守るためのルールに従うべきです。そうすることで、パンデミックのような状況下で実験を続ける際にも、共同研究者間の相乗効果を高めるだけでなく、マナー違反が起こることを防ぎ、誰もが実験を計画通りに完了できるようにするのです。

共用ラボで作業する際の暗黙ルール10

1.自分の物以外は触らない

これはラボに限ったことではなく、生活していく上でも言えることです。一番初歩的かつ最も重要なルールは、他の研究者の酵素、プライマー、液体培地、それ以外のさまざまな溶液、特に汚染されやすい溶液は絶対に触らないことです。どうしても使いたい場合には、許可を取りましょう。そして、使用許可を取っても、コンタミネーション(汚染)を防ぐため、常に必要な量だけを滅菌フード下で別の容器に移し替えて使いましょう。このルールは、化学物質や培地に限らず、ピペットなどの実験器具にも言えることです。

2.他人にしてもらって嬉しいことを他人にする

このルールにおいては例を挙げておきます。保存溶液を作る際、ラボ内で作業している別の研究者も必要かどうか聞いてみると良いでしょう。ラボの他の作業者に、自分が使っているのと同じような機器(重量計、ガラス機器など)や化学薬品が必要かどうか尋ねてみることもお勧めします。いつか、同僚が同じようにあなたを助けてくれるはずです。

3.自分のミスは自分の責任

保存液を誤ってこぼした?気づかないうちに培地をコンタミさせた?落ち込む必要はありません、誰でもミスはするものです。ミスをすることが問題なのではなく、自分の過ちを認めず、他の研究者に汚染された溶液や培地を使わせてしまうことは問題です。なので、自分が起こしてしまったミスを認め、自分だけでなく、他の研究者が行う実験でもはっきりした結果が得られなくなることを避けるための対策を講じることが大切です。小さなミスを隠すことの影響は計り知れません。特に、他者の研究を台無しにしてしまったり、他の人を危険にさらしたりしてしまうことになれば大問題です。自分の過失を認め、問題を起こすのを回避することを意識すれば、同僚はあなたの正直さに感謝することでしょう。とはいえ、いつも同じミスを犯すのではなく、失敗から学ぶように意識的に努力してください。

4.ため込まない

自分の後ろのロッカーに数十枚ものペトリ皿をため込んで何をするつもりですか?誰もが使いたいと思っている実験器具の利用予約をするシートがなければ、それを作っておきましょう。サインアップシート(使用予約用紙)があれば、誰もが必要な実験装置や器具を必要なときに確保することができるようになり、誰かが使っていないものをため込みすぎていることが原因で、他の人が実験を行えないという事態は避けられるはずです。

5.在庫確認を行う

あなたが在庫棚からマイクロピペットを取って、残りが1つとなった場合には、ラボの管理者に残りがひとつであることを伝えましょう。そうすれば、ラボの管理者は他の研究者の使用に備えて棚の在庫を補充しておき、研究者が新しい品の入荷を待つことなく実験を続けることができるようになります。

6.クリーンなラボでこそクリアな考えがまとまる

シンクに汚れた器類が置かれたまま?棚、冷蔵庫、ボトル類、細胞培養室のドア、冷凍庫などを開けたままにしないでください。液体窒素の容器の蓋はしっかり閉まっていますか。自分のワークステーション(作業場)をきれいに整頓しておくことは重要です。ゴミの山は問題を起こしかねません。捨てるべきものはすぐに捨てましょう。物事を忘れていたり怠けていたりすると、他者の研究の邪魔になりかねません。

7.研究者の序列を理解しておく

経験の浅い研究者として、いろいろな人に助けを乞うこともあるでしょう。時に、あなたが尻込みすることで、相手を苛立たせてしまうかもしれません。それでも大丈夫です。誰もが経験することです。ここで重要なのは、序列を理解しておくことです。問題が起こった場合には、まず担当してくれている指導員か主任研究員(PI)に相談してください。

8.足下にも注意する

かかとのないサンダルは楽ですが、ラボでの履き物として決して適切とは言えません。ラボでは、滑りにくい底でつま先が覆われた靴を履くようにしましょう。雪や土、泥を実験室に持ち込むのを防ぐため、ラボで履くための別の室内履きを容易しておくことをお勧めします。

9.あらゆる物に名前を付けておく

「君のものだって知らなかったんだ」というのは、準備しておいた器具などを誤って使われたときに良く聞かれる言訳です。こうした状況になるのを防ぐためには、全てのものに名前と日付、物質および機器の詳細(その物質が要冷蔵かどうかなど)を書いておくことです。そうすれば、時間的制約のある実験の進行を追跡するのにも役立ちます。また、緊急性のあるものや他と区別が必要なものには、色付コードを付けておいても良いでしょう。

10.プロトコール(手順)に従って進める

それぞれのラボには、実験のセットアップ(設定)や撤収についての手順書があるのが一般的です。ラボが自発的に手順書を作成していない場合、ラボの機器の使用、洗浄、保管、メンテナンスについてラボの手順を設定し、手法を文書化しておくと、ラボを使用する全員が同じ認識を持つのに役立ちます。

ここで記した10の暗黙ルールを頭に入れた上で、研究ラボそれぞれの状況に合わせることで、共用ラボでの作業状況を改善することができるはずです。次にラボを訪れた際には、自分自身がこの10個のルールに準じた行動をしているか確認してみてください。ここに書き出している事以外に、気をつけていることなどありましたか?誰かに注意される前に自分が利用しているラボのルールを把握し、それに準じて研究活動を進めるようにしてください。

X

今すぐメールニュースに登録して無制限のアクセスを

エナゴ学術英語アカデミーのコンテンツに無制限でアクセスできます。

  • ブログ 560記事以上
  • オンラインセミナー 50講座以上
  • インフォグラフィック 50以上
  • Q&Aフォーラム
  • eBook 10タイトル以上
  • 使えて便利なチェックリスト 10以上

* ご入力いただくメールアドレスは個人情報保護方針に則り厳重に取り扱い、お客様の同意がない限り第三者に開示いたしません。

研究者の投票に参加する

研究・論文執筆におけるAIツールの使用について、大学はどのようなスタンスをとるべきだと考えますか?