学術論文における「材料(Material)」は、多くの分野で重要な項目ですが、分野によってその定義や指し示す範囲は大きく異なります。
この記事では、投稿論文における「材料(Material)」の概要と、研究領域ごとの大まかな定義、そして論文内で記述すべき他の要素との対比などを整理します。
「材料」の基本的な定義
学術研究における「材料(Material)」とは、実験・調査・分析に用いる、モノ・生物・情報などを指します。
英語論文では"Materials"という複数形で使われることが多く、研究分野やジャーナルの規定によって、試薬や装置、生物試料、データセットなどが含まれる幅広い概念です。
一般的に「材料」は以下の3つの性質を持ちます。
- 研究対象そのもの。または対象を扱い、結果を導き出すために使うもの
- 出所や仕様を明示できるもの(=トレーサビリティのあるもの)
- 再現実験のため他の研究者でも入手可能なもの、または他の研究者に供与可能なもの
分野ごとに異なる「材料(Material)」
自然科学における材料
化学・生物学・医学分野では、「材料」は主に試薬(reagents)、細胞株(cell lines)、動物モデル(animal models)、臨床検体(clinical samples)などを指します。例えば創薬研究では化合物そのものが材料で、生命科学では実験動物や培養細胞が材料に含まれるでしょう。
工学・材料科学における材料
材料科学の分野での「材料」の定義は、より一般的な語義に近いものです。金属、セラミックス、高分子(ポリマー)、複合材料など、物性を測定・加工する対象そのものが研究の中心です。こうした分野では「材料」自体は研究のテーマであって、単なる実験の道具ではありません。
人文社会科学分野における材料
社会科学や人文科学においては「材料」は、やや異なるニュアンスを持ちます。インタビューの記録、アンケートデータ、古文書、テキストコーパスなど、物理的な実体を持たない情報が「研究材料(research material)」として扱われることもあります。
「材料」と混同されやすい用語
材料(Material) と サンプル(Sample)
材料(Material)は広義の概念、あるいは再度の検証が可能な対象ですが、サンプル(Sample)は実際に採取・使用した個々の標本・モノを指します。例えば「血液」は材料ですが、「患者Aから採取した血液」は具体的なサンプルです。同じ材料で再現実験を行っても、サンプルは異なります。
材料(Material)と 実験装置・機器(Apparatus & Equipment)
実験に使う顕微鏡や分光光度計などは通常「材料」としてではなく、装置や機器(Apparatus/Equipment)として、名称や型番を含めて論文内に明記します。ただし、機器に近いものであっても消耗品は材料とするジャーナルもあります。
「材料(Material)」の定義・範囲の理解が論文執筆で重要な理由
その論文の投稿先ジャーナルにおける材料の定義、何が材料に含まれるかを正しく理解していなければ、求められている論文構成から逸脱しかねません。
何を「材料」として扱い、何を「装置」等とするかは、分野の慣行やジャーナルの規定によって異なるため、同じ分野や投稿予定ジャーナルの掲載論文の記述を確認しておくことが推奨されます。
材料の記述も、専門家の英文校閲で正確に
論文の材料の記述では、分野やジャーナルの慣行に沿った正確な英語表現が求められます。Enago(エナゴ)の英文校閲では、研究分野に精通した専門家が投稿前の原稿を確認し、専門用語の使い方まで含めて論文の仕上げをサポートします。
研究論文における「素材(Material)」についてのまとめ
一般的な語彙でもある「材料(Material)」は、学術文書においては分野によって示す範囲が大きく異なります。自然科学では試薬や生体試料、材料科学では物性研究の対象そのもの、社会科学ではデータや文書といったように、それぞれに定義が異なるのです。
論文執筆の際は、自分の分野や投稿先ジャーナルにおける「材料」の定義を正しく把握することが、査読を通過する上で欠かせません。
参考文献
- Elsevier「STAR methods - Key resources table」
- PLOS ONE「Materials, Software and Code Sharing」
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