英文校正に出した論文原稿が戻ってきたとき、手直ししてほしかった箇所がそのまま残っていた、という経験はないでしょうか。校正者が見落としたわけではなく、そこが校正の範囲外だった可能性もあります。
英文校正で修正されるのは、主に言語表現の部分です。通常の英文校正であれば、研究データや結果の妥当性といった内容そのものは、修正・改訂の対象には含まれません。
この記事では、日本語話者の英語論文で指摘が生まれる理由から、校正のサービス対象範囲と対象外の範囲、そして依頼時に伝えておきたいことを整理しました。
日本語話者の英語論文において指摘されやすいポイント
英語で論文を書く際に指摘されやすい点には、一定の傾向があります。個人の英語力に起因するものというより、日本語と英語の仕組みの違いから生じる誤りや分かりにくさなどです。
日本語にない文法カテゴリ
冠詞や単数・複数の区別などは、日本語にそれに相当するものがありません。また他動詞が目的語を必要とすることなども、日本語的な思考ではとらえにくい仕組みです。日本語では明示していない情報も、英語では明示しなければならない場合があり、こうしたことが、日本語話者による感覚的な記述では、不正確な英語や違和感のある英語が生み出されてしまうひとつの理由です。
語順の問題
英語を含む西欧語では、主語の直後に動詞(述語)が置かれますが、日本語では述語は多くの場合文末近くに置かれます。こうした日本語の語順やロジックに囚われて英訳を行った文章では、たとえ文法としての誤りがなくても、読みにくい文章になってしまうこともあるでしょう。
日本語では段落単位でも結論を後ろに置く構成が許容される傾向にありますが、英語の学術文章では主張や結論を先に示す形が一般的です。こうした学術英語の文章作法からの逸脱は通常の英文校正では手直しされることはないかもしれません。情報提示の順序については普段から同じ分野の学術英語に触れるなどして意識しておくとよいでしょう。
具体的にどのような点が指摘されやすいかは、「日本人がよくする英語の間違いトップ20」で項目ごとに解説しています。
英文校正で直せること
英文校正で行われるのは表記レベルの修正だけではありません。時には、文章のつながりや構成に関する改訂も行われます。
| 修正対象 | 修正事項 |
|---|---|
| 表記・文法 | スペルミス、文法ミス、時制、句読点、表記の揺れ等 |
| 表現・構成 | 不自然な言い回し、文と文のつながり、段落の論理構成、不正確な専門用語の用法 |
表記や文法の修正は、どのような英文校正でも基本的に含まれます。一方、表現や構成の調整については、原稿の状態や依頼内容によって対象となる範囲が変わることもありえます。
どこまで踏み込むかは、依頼するサービスの種類によっても変わります。文法の正確さのみを整えるものから、論理の流れまで確認するものまで幅があるため、依頼前に対応範囲を確かめておくとよいでしょう。
英文校正で直せないこと
校正が扱うのは言語表現の範囲です。研究の内容そのものは対象に含まれません。ここを理解しておくと、納品後の受け取り方が変わります。
| 修正の対象外 | 校正者の対応 |
|---|---|
| 不正確な研究データや結果 | 内容の妥当性は著者が責任を持つ領域のため校正者は介入せず |
| 著者の意図が読み取れない箇所 | 推測による書き換えは行わず、確認のための質問や、文意を限定した上での修正案を申し送り |
| 情報の不足 | 原稿にない情報、不足していると思われる主張や説明の加筆なし |
意図が伝わらない箇所は、勝手に直されるわけではありません。校正者からの質問や、「こういう意味であれば」という限定のもとの修正案が返されます。
校正者からのコメントが、原稿とは別の書面で届く場合もあります。修正の意図が分からないときに問い合わせられるかどうかは、サービスによって異なります。
より踏み込んだ英文校正をしてもらうために
意図を正確に伝えられているか覚束ない箇所については、依頼の段階で補足しておくと何度もキャッチボールを行わずとも、最初の校正の段階で踏み込んだ改訂が期待できるでしょう。原稿に情報を添えて渡すことで、結果的に手戻りを減らせます。
投稿先のジャーナルが決まっている場合は、その名称と投稿規程を伝えておきましょう。学術専門の校正サービスであれば、指定された書式や引用スタイルに基づいて校正が行われます。専門分野も細かく伝えることで、その原稿に合った英文校正者が担当となり、専門用語の精度も上がるでしょう。
特に丁寧なチェックを希望する箇所については細かく説明しておくとよいでしょう。書いていて自信のなかった段落や、査読で指摘を受けた部分など、何を伝えたいのか、何を指摘されたのかを英文校正者と共有することで最適な英文を提案してくれる可能性が高まります。
まとめ|英文校正の対象は言語表現
英文校正によって直る/手直しされる/修正されるのは、基本的には、表記や文法の誤りや、文章の流れにそぐわない表現や構成などです。研究データや結果の妥当性は、著者自身の責任の範疇で英文校正者がそれらに手を加えることはありません。依頼の段階で投稿先や専門分野、そして原稿の内容や文言についての情報を伝えておけば、校正の精度は上がるでしょう。




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