研究者に有益なオンラインツールと活用のメリット

突然ですが、この記事を読まれている方で「科学者・研究者のためのフェイスブック」と言われるResearch Gateを使用されている方は、少なくないのではないでしょうか。インターネットの急速な発達に伴い、こうした研究活動に役立つといわれるオンラインツールが数多く登場し、インターネット上で利用することができます。用途ごとのツールとメリットを見ていきましょう。

■ 使いこなせば役に立つ

オンラインツールの最大のメリットといえば、やはり手軽さと拡散性でしょう。研究者は、他の研究者と気軽にコミュニケーションできるようになっただけでなく、論文の投稿や掲載情報の共有までできるようになりました。例えば前述のResearch Gate。研究者は研究内容やプレゼンテーションをここで共有することで、研究成果を多くの人に目にしてもらうことができます。オンラインツールを活用すれば、自身の研究成果に注目を集め、広く引用してもらい、結果として研究が高く評価されることにもつながるのです。

米国環境保護庁(EPA)傘下のNCCT(National Center for Computational Toxicology)に所属するアントニー・ウィリアムズらがF1000Research(生命科学分野のオープンアクセス・ジャーナル)に発表した記事によれば、多くの研究者がオンラインツールの利用価値を認識してはいるものの、活用できているのは、ほんの一握りであるとのことです。同時に、オンラインツールを使いこなすには時間と労力がかかるけれども、研究者がこれによって情報を共有し、人脈を作り、より多くの人に自分の研究内容を知ってもらうことは、研究者の業績や学術研究の発展に大いに役立つとも述べています。オンラインツールを活用する研究者の数は、今後も増え続けることが予想されます。

■ 論文の影響度の新たな測り方

研究者がオンラインツールを活用することで、投稿論文の影響度の測り方に、新たな指標が加わりました。従来は、研究論文の被引用回数から影響力を評価する「インパクト・ファクター(IF)」が主流でしたが、Altmetric(オルトメトリクス)など、論文のオンライン上での影響力を測る新しい指標が近年、登場してきたのです。

オルトメトリクスは被引用回数を反映するだけでなく、論文の閲覧数、ダウンロード数、フェイスブックやツイッターなどのソーシャルメディアや報道機関でのコメント数など、論文が持つ影響力をさまざまな面から反映させる新しい評価手法です。特にAltmetric.comが提供するスコアが有名で、さまざまな学術ジャーナルで採用されています。

このような総合的な指標の最大の利点は、所属機関や助成団体などが研究者の個人の業績を評価する際、論文を掲載したジャーナルの影響度とは別の判断材料として利用できるという点です。評価結果は、研究者のキャリアに直接影響しますし、新しい共同研究の機会や研究助成金の確保、ひいては新しい学術的発見にまでつながる重要なものなのです。

■ 研究内容の影響を最大化するオンラインツール

ウィリアムズらは、オンラインツールの利用目的を4つに分類しています。これはメリットにもそのまま置き換えられます。複数のツールを紹介していますので、用途に沿って、最適なものを使われてみてはいかがでしょうか。

・ネットワーク構築
学術界で最も活用されているネットワーキングツールにLinkedInがあげられます。プライベートの情報は共有せず、あくまで仕事に関連する情報のみを共有するこのプラットフォームは、研究内容や最近の研究活動、興味のあるトピックなどを投稿するのに適しています。最新の発表へのリンクを掲載したり、PowerPointやPDFなどのファイルをアップロードしたりすることもできます。画像も付けて投稿すると、閲覧者からの反応がよくなります(「いいね!」をもらいやすくなります)。同様に、Research GateやAcademiaも優れたネットワーキングツールで、技術的な内容を質問・投稿し、閲覧者から回答を得るのに適切なプラットフォームといえます。

ただし、これらのプラットフォームに出版済みの論文や資料をアップするには、著作元の許可が必要なので注意が必要です。

・研究関連情報の共有
情報共有ができるプラットフォームはたくさんありますが、やはり最も利用者数が多いものといえば、FacebookInstagramでしょう。しかし、これらはプライベートで利用されることが多いので、ブログやTwitterGoogle Plusのほうが研究関連情報の共有には適しているといえます。プレゼンテーション資料を共有できるプラットフォームのSlideShareは、研究発表のスライドを公開するのに優れています。動画を共有したい場合にはYouTubeVimeoWeiboがおすすめです。これらの他にもデータを共有するためのMendeley DataFigshare、化学分子データベースのPubChem、主に物理や数学分野の論文投稿サイトのarXivなどさまざまなオンラインプラットフォームが多数存在しています。

・影響度のトラッキング
影響度をトラック(計測)する新たな指標としては、先述のオルトメトリクスがあります。ブログへの引用数やリツイート数などを収集し、独自のアルゴリズムによって、論文に対するネット上での反響を示すものです。よく使われているものには、Altmetricスコアの他、ImpactStoryPlumXなどがあります。ORCID(Open Researcher and Contributor:ID<科学者や論文著者に識別するためのIDを付ける取り組み>)やGoogle Scholar(Googleの提供する学術用途の検索サービス)が、論文発表の有効性や引用数を見るために利用されることもあります。

・影響度の向上
影響度、つまり研究論文のインパクトを上げるために有益な著者支援ツールとして、Kudosというプラットフォームが注目されています。これは、投稿した研究論文をより多くの人に利用(引用)されやすくするのを支援するツールです。Kudosのオンラインプラットフォーム上に自身の論文を掲載することで幅広い読者にもわかりやすい言葉で論文の要約や説明を編集することが可能になるほか、論文の閲覧数やダウンロード数、引用の回数やオルトメトリクスの指標を確認できるようになります。公開した論文の影響度を向上させるのに何が有効かを分析することができる優れものです。

■ デジタルツール普及の流れは止まらない

以上のように、研究内容の発表方法は、ここ数年で著しく変化してきています。課題はあるものの、研究活動におけるオンラインツールを使ったコミュニケーションや研究データの共有は拡大し続けることでしょう。もはや抗えない流れになってきている以上、これに乗り遅れないようツールの活用についてアンテナを張り巡らせておいてはいかがでしょうか。

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