Kudos協同創設者・チャーリー・ラップル氏へのインタビュー(第1部)

2016年9月、今年も多くの参加者を集めて開催されたALPSP(Association of Learning and Professional Society Publishers, 学協会出版社協会)会議の開催期間中、研究者のためのツールとして急速に成長しているKudosの共同創設者であり営業・マーケティング部長であるCharlie Rapple(チャーリー・ラップル)に、エナゴの欧州地区戦略的提携担当のTony O’Rourke(トニー・オルーク)がインタビューを行いました。チャーリーは、SSP(Society for Scholarly Publishing, 学術出版協会)と提携して出版されている学協会出版社協会の雑誌であるLearned Publishingの共同編集者でもあります。

このインタビューで、チャーリーは、若手研究者および日本・韓国・中国といった国々で業績を積み重ねてきた研究者にはKudosのような研究者を支援するサービスが必要であることと、その意義について述べています。また、チャーリーは、Kudos が世界中の研究者に対していかに有益かを説明し、Kudosの機能のいくつかの特徴を紹介してくれました。チャーリーの話を聞き、Kudosが学術出版に対して与えてきた影響の大きさを理解する機会を持てたことはエナゴアカデミーにとって大変有意義なことでした。

インタビューの第1部では、Kudosを支える概念と、 Kudosが研究者に与えてきた影響について伺います。


■Kudosの概念につきご説明いただけますか?

Kudosを開設する際には、様々な課題について同時に考えていたように思います。Kudosの共同創設者たちは、私も含め全員が学術出版に関わる業界で働いており、多くの同じ課題に取り組んでいました。昔に比べてはるかに多くの論文が出版されるようになり、研究者たちは、自分の論文の読者をどう見出すか、増え続ける文献を掌握し、自分の専門分野の最新情報に通じているにはどうしたら良いかという課題に直面していました。

そのころは、論文に関する新しい測定基準が生まれてきた時期でもありました。デジタル出版の構造が論文ごとの測定を可能にし、また、ダウンロード数といった論文単位の測定基準だけでなく、ソーシャルメディア、政府政策、ウィキペディア等における論文の注目度を測る別の基準への関心も高まっていました。

これらの測定基準のもとで研究者たちがより良い業績を上げ、論文の読者を見出し、ひいては研究資金を継続的に確保するのに必要な影響力を得るために役立つ方法とは何か。学術出版業界における様々な変化が、これらの問題について考えるよう私たちに迫ったのです。特に重要だったのは、研究資金の継続的な確保という課題です。資金の獲得競争はこれまで以上に激しくなっており、より多くの人々が資金の獲得を目指しています。そこで、私たちは、研究者たちが自らをアピールし、より多くの資金を獲得できる方法を構築し、彼らの業績を上げていく支援をしたいと考えました。

■研究者はKudosを無料で使えますか?Kudosを使う主な利点は何でしょうか?

Kudosは無料で、手軽に使っていただける使い勝手の良いサービスです。

私たちは、マーケティングと製品開発の専門家として、研究者が抱く多くの懸念を払拭し、研究業績を伸ばすことに焦点を合わせた、わかりやすいサービスを創りたかったのです。うまくできたと思います。Kudos開設当初数年間、第三者が行ったデータ調査では、研究者がKudosを使って論文を説明・共有した場合、その論文のダウンロード数を約23%増やせることがわかりました。言うまでもなく、ダウンロード数はその他すべてに影響する基本です。論文を引用する前に、あるいは論文についてオンラインで議論する前に、その論文を読む必要がありますからね。読者数を増やすことは、私たちの支援の主な目標です。

■研究者がKudosを使いはじめる際に必要なことは何でしょうか?

現在、Kudosのシステムは、CrossRefDOI(Degital Object Identifier, デジタルオブジェクト識別子)に基づいて作られています。固有のDOIが5,000社ほどの出版社に割り振られており、研究者の論文投稿先となる学術誌はほぼこれらの出版社から発行されています。Kudosを利用するのに唯一必要なのがCrossRefのDOIですが、これはほとんどの人にとって問題になりません。CrossRef DOIが手に入ればすぐにKudosでご自分の論文を見つけられるので、その後は3段階の簡単なステップに従ってより多くの人に論文を読んでもらうことができます。

■Kudosの登場で大きく変わった点について、いくつか例を挙げていただけますか?

全体として見ると、Kudosを使うと論文のダウンロード数が23%増えています。このことが個人にとって実際に何を意味するかについて、私たちは素晴らしい話をいくつか聞きました。

ひとつの例として、それまであまり論文を発表していなかった地理学者についてお話しします。彼女は、博士論文をもとに2本目の論文を書いて、それを発表したところだったと思います。彼女は、この論文について、わかりやすく平易な言葉を使った素晴らしい説明をKudosに掲載しました。私のような門外漢でも、彼女の研究の特徴が理解できるような説明でした。それから彼女は、この説明について3~4回ツイートしました。現在、彼女の論文は、Kudos上で1,000回以上閲覧されています。このことは、彼女を本当に勇気づけました。彼女はその後のツイートで、研究生活を始めたばかりでも論文を読んでくれる人がいるという事実に気づけたことが大きかったと述べています。この経験によって研究へのやる気を取り戻したと。真空地帯にひとりでいるのではなく、幅広い読者がそこにいると言えるようになったからです。

もうひとつ例を挙げましょう。Kudosで関連文献へのリンクをつけられる機能を使っていた人の話です。通常、自分の論文の後に発表されたものを、その論文に関連づける方法はありません。この研究者は、この機能を使って自分の論文にリンクするものをインターネットで検索していました。すると、自分では気づかなかったとても興味深い方法で自分のデータを使い、自分の論文を踏まえた研究を進めている人を見つけました。そこで、彼の論文をKudos上で説明し共有したところ、新しい共同研究者と出会い、その人との研究によりさらに業績を上げ続けています。

このように色々なタイプの興味深い話を聞いています。Kudosのサービスを使って成功した経験を、皆さん喜んで教えてくれるのです。

■そうしたことは、研究者にとってかなりの利益になりますね。大学、学術誌、出版社、資金提供者といったその他の関係者についてはいかがでしょうか?

私たちの活動の素晴らしい成果についてお話ししましょう。私たちは、論文の説明を当社のシステムを通して共有するよう研究者たちに促し、研究機関、出版社、資金提供者、学協会、その他当該の論文の成功に関心を持つすべての人が検索・使用できる巨大なデータセットを構築しつつあります。さらに、これらの関係者の誰もが、Kudosを通して研究者と協力し、その研究者が執筆した論文の影響力を高めていけるのです。

私たちは70の出版社と協力関係にあり、これらの出版社はあらゆる種類の興味深い試みを行っています。Kudosに投稿された論文のわかりやすい説明を利用したり、論文が見出される可能性を高めるため、これらの説明を出版社のウェブサイト上に掲載したり、論文をめぐる研究者の情報発信を評価してやりとりを行ったり、これらの情報をより多くの人々に届けられるよう支援したりしているのです。

この共通目標を追求する人たちの努力をお互いに利用し合えるよう、これらの努力すべてを一元的なシステムで管理するというのは素晴らしい方法です。

出版社と研究機関は、以前は別々に記者発表などの宣伝を行っていたかもしれませんが、現在両者は協力関係にあり、どこに効果が上がっているのかを理解することができます。また、出版社と研究機関は、関係する著者や研究者全員に組織として目を向け、どのつながりが最も効果的なのか、そして最も影響力があるのは誰なのかを理解することもできます。研究に関してどのように情報を発信するのが最善なのか、多くのことを実証に基づいて理解しはじめています。

このことは、出版社や研究機関自身の行動指針を形成する際に役立ちますし、物事をより効率的な方法で行うことにより時間も節約できるようにもなります。また、出版社や研究機関が研究者に対して行う助言にも決定的な影響を与えます。出版社や研究機関は、このような分析を地域単位で行うこともできます。中国の研究者にうまく機能しているもの、あるいはロシアの研究者によりうまく機能しているもの、といったことに目を向け、地域別の実証に基づいて様々な助言を提供できるわけです。

以前よりも状況はずっと改善されています。以前も様々な情報発信が試みられていましたが、情報発信と出版物に関する測定基準との間をつなげる細かい見識や方法は存在していませんでした。ですので、実際に何がうまくいくのかを知ることはとても難しかったのです。Kudosは、すべての人が抱えているこの問題を解決します。

■Kudosはどういった人たちを対象として事業を確立してきましたか?チャーリーさんも私もマーケティングを専門としているので、Kudosがターゲット層をどう獲得しているのか興味があります。

私たちは世界中にサービスを提供しています。Kudosのサービスを使っている研究者は現在10万人を越えていますが、約23%はアジアの研究者で、そのうちインドの研究者が8%、中国の研究者が5%を占めていると思います。世界中の多くの人々が、自らの論文の影響力を最大化するという共通のニーズを認識しています。

私たちは、主に出版社との提携関係を通してユーザーを獲得してきました。私たちは70の出版社と協力関係にあるとお話ししましたが、これらの出版社は、論文を出版する際に、著者全員に対して論文の説明を執筆し共有するよう勧めています。以前に出版した原稿についても同様のことを勧めることすらあります。また、私たちから研究者に対して、直接働きかけはじめています。現在、私たちは、Kudosのシステムを使うべき理由について充分な根拠を持っていますし、ブランドの認知度も少しずつ高まっています。これらを活かして、研究者と直接関わっていくことができます。

いま、私たちはMobilize Research(研究を広めよう)というキャンペーンを行っているところです。このキャンペーンを通して、研究者自身に自らの読者を増やすという考えを持ってもらい、Kudosを通して論文を共有することを推奨しています。また、#mobilizeresearchというハッシュタグを使ってツイートすることも勧めています。私たちのサービスの認知度を高め、理解を広げるうえで、このキャンペーンはすでに大きな成功を収めています。研究者たちに直接働きかけるこうしたキャンペーンをさらに拡大していくとともに、出版社や研究機関との協力も続けていきたいと考えています。

(第2部につづく)


Kudosについて
Kudosは、研究者・研究機関・資金提供者がその出版論文や研究を最大限に周知し、影響力を最大化することを支援するウェブ上のサービスです。Kudosは、次の3つを行うためのプラットフォームを提供します。
(1)検索の手がかりとなる情報の収集・創出 (2)発見を促す情報の共有 (3)これらの活動の効果の測定・検証
詳しくは、Kudosのウェブサイトをご覧ください。

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