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ソーシャル・メディアは学術活動に役立つか?

ソーシャル・メディアの利用者は、スマートフォンの普及に伴い、爆発的に拡大しました。一般的には、LINEやTwitter、Facebook、Instagramなどを友人とのコミュニケーションに利用するケースが多いですが、より専門的な分野で利用できる便利なツールも増えています。学術分野のコミュニケーションでも、ソーシャル・メディアが欠かせなくなってきているのです。
■ 活用する研究者は増えている
BioMed Centralに2017年6月15日に掲載された、学術関係者のソーシャル・メディアの活用に関する調査について書かれた記事によると(調査は同年2月にSpringer Natureが実施。本調査は2014年にNatureが行ったものにさかのぼる)、回答者の95%が何らかのソーシャル・メディアを活用しており、最も普及しているプラットフォームはResearchGate(71%)で、そこにGoogle Scholar(66%)が続いていました。
2014年の調査では、最も選ばれていたのがResearchGateとAcademia.eduで、これらのプラットフォームの利用目的がプロファイルの更新だった(68%)のに対し、今回の調査では4分の3以上が「コンテンツ探し/閲読」と回答しています(前回調査では33%)。また、今回の調査ではソーシャル・メディアの利用目的として57%が「自己支援」か「研究促進」を挙げており、活用する研究者が増えていることが伺えます。
■ 多様な研究特化メディア
ソーシャル・メディアは情報収集や関心を集めるために有効な手段であると認識する向きが多いにも関わらず、中には倦厭(けんえん)される方もいます。その理由は「時間の無駄」と考えるからでしょう。テキストだけでなく写真や動画のアップロード、多様なプラットフォームの使い分け、さらには他者の発信内容のチェックなど、活用しようと思えば時間と労力を割く必要があります。重要なのは、自分にとって有効なソーシャル・メディアを見極めることです。前述の調査で名前が挙げられたプラットフォームのように、一般的なコミュニケーション・ツールとして使われているTwitter、Facebook、YouTubeなどとは用途や閲覧者層が異なる学術研究に特化したプラットフォームが登場し、研究成果の発信や他の研究者とのつながりを作るのに役立っています。いくつか例を挙げます。
LinkedIn
ビジネス特化型ソーシャル・ネットワーキング・サービス。自分のプロフィールを掲載することで自身と研究をアピールするとともに、研究内容や論文を特定のグループなどで共有、公表することができる。個人のブログ、論文記事、ウェブサイトなどへのリンクも掲載可能。人脈の構築や仕事探しに活用する人が多い。
ResearchGate
科学者・研究者向けのFacebookと呼ばれる。研究についての共有や情報交換が可能。他の研究者をフォローして、最新の研究成果を確認できる。プロフィール画面では論文リストを作成でき、論文の被引用回数も表示される。ResearchGate内で論文が何回クリックされたか、論文をアップロードした際には何回ダウンロードされたのかも把握可能。
Academia.edu
研究者の情報交換に特化したソーシャル・メディア。研究論文や講演などの情報を登録し、共有することができる。登録者数は5000万人を越え(2017年10月)、研究者は、自分の論文や著書・発表資料などをアップロードした後、論文がどのくらい読まれたかを分析できる。投稿前の論文や掲載済みの論文をアップロードすると、内容について閲読者からコメントがもらえるという機能がある。
researchmap
日本の科学技術振興機構知識基盤情報部が提供している研究者向けのプラットフォーム。国内で研究活動を行っている研究者および海外で研究活動を行っている日本人研究者を対象としており、平成27年4月時点で、3,383の研究機関、240,445名の研究者の情報が収録されている。日本語で問い合わせられる窓口やQ&Aがあるのは、海外プラットフォームにはない強み。
他にも、コミュニケーションより論文管理に重点を置いたプラットフォームもあります。
Google Scholar
Googleが提供する学術論文の検索プラットフォーム。検索だけでなく、論文の被引用回数の表示や、他の論文管理ソフトと連携して、参考文献として利用したいタイトルなどのコピー&ペーストや論文のエクスポートが可能。スマートフォンやタブレット端末でも操作可能。
ORCID(Open Research and Contributor Identifier)
研究者に固有のID(デジタルオブジェクト識別子)を付与することで、その研究者の成果を一貫して管理できるようにするプラットフォーム。世界中の研究者が登録しており、ORCIDのIDを持っていることが助成金申請の条件とされるケースが増えている。
Mendeley
学術論文の管理とオンライン上での情報共有を目的とした文献管理ツール。論文管理のほか論文閲覧ソフトとしても利用できるので、自身の論文の影響力を見るだけでなく、話題になっている他者の研究も探すことができる。共同研究者同士が執筆中の論文を校閲する場としても活用可能。自分の興味のあるグループ(人脈)とのネットワークを作るのにも役立つ。
これらのリストおよび機能は一例に過ぎません。学術活動をサポートするプラットフォームの選択肢は今も増えています。自身の研究分野や使いやすさなどを考慮し、最も有効だと考えられるソーシャル・メディアを選んではいかがでしょうか。
■ 可能性は無限!ただし……
ソーシャル・メディアを継続的に利用するなら、毎日5分でもログインし、興味を惹かれた投稿へのコメントや、自身も情報を発信することを日々の作業に取り込んでしまうのが得策です。自分の専門分野のキーパーソンや団体・機関をフォローしていれば新しい情報を入手できますし、査読のような正式な手続きを踏まずとも、自身の研究について、他の研究者からフィードバックを得ることもできます。また自分の研究についての情報を発信して、活動の宣伝をすることも。反響があれば論文評価指標「オルトメトリクス(Altmetrics)」にも有利に働きます。影響力のある発信をするための、ちょっとしたコツを紹介します。
・テキストは簡潔かつキャッチーに。画像や動画を付ければ視覚的なインパクトを与えられます。
・適切なハッシュタグ(#)付け。同分野に関心を持つ研究者とのネットワーク構築にもつながります。
・掲載するプロフィールに、自身のホームページや研究室のリンクを付ける。
研究室にいながら世界の最新情報を入手し、コミュニケーションまでできるのであれば、ソーシャル・メディアを活用するのも悪くありません。ただし、一度公開した場合、その情報を完全に消去することはできない、という特徴があることも忘れてはなりません。投稿内容に事実誤認はないか、数字は正確か、他者を傷つける表現は含まれていないか……。手軽で便利ゆえ、各自が責任を持って運営していくことが肝心です。


こんな記事もどうぞ:
エナゴ学術アカデミー エディターズ・アイ
いま話題の新しい論文評価指標「オルトメトリクス(Altmetrics)」
参考記事:
Harvard Business Review: How Academics and Researchers Can Get More Out of Social Media 
Run Run Shaw Library: Maximising the visibility of your research 
QUT Library Subject Guides: Social media and research impact
authors: Tips for Using Social Media to Promote Your Research

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