マックス・プランク協会、プロジェクトDEALを支持

学術雑誌(ジャーナル)のオープン・アクセス(OA)を推進する動きが、ここ数年で加速しています。ドイツでは、この動きの一環として従来の契約に替わり、オンライン契約の締結を推奨するプログラムである「Projekt DEAL(プロジェクトDEAL)」を受け入れるように学術出版社に求めてきました。そしてついに、マックス・プランク学術振興協会は、2018年12月末をもってエルゼビアの電子ジャーナルの購入契約を更新しないと同月19日に発表しました。マックス・プランク学術振興協会は、傘下に80以上の研究所等を抱え、約14000人の研究者を擁するドイツ最大級の研究グループですが、購読契約の解約の結果、研究員は2019年からエルゼビア誌へのアクセスを失うこととなったのです。

■ プロジェクトDEAL対エルゼビア

大手学術出版社であるエルゼビア(本社、オランダ)は、2960を越える学術雑誌、48300の書籍を出版しており、出版論文数に至っては年間40万本を越えています。同社が提供する学術文献のオンライン・プラットフォーム『Science Direct』は、3800誌以上の学術雑誌と35000冊以上の書籍タイトルから記事の検索を可能とし、また、抄録・引用データベース『Scopus(スコーパス)』には2万タイトル以上の逐次刊行物などからの文献を収録するなど、研究活動を支援しています。これらのデータベースは多数の研究者に利用されていますが、システムの使用料金や同社の学術雑誌の購読料が高すぎるとの批判が高まっており、欧州を中心に購読契約の見直し交渉などが行われています。

プロジェクトDEALは、学術雑誌のOA出版の利用に関して学術出版社との新たな利用条件を目指して、ドイツの研究機関、大学、図書館などが結成したコンソーシアムです。現在では参加組織数は700近くに達しています。エルゼビアとの契約交渉は決裂しましたが、シュプリンガー・ネイチャーとのナショナルライセンス契約交渉は進展しているようです。また、2019年1月15日には、ワイリー(John Wiley & Sons, Inc.)と新たな条件の契約を交わしたことを発表しました。この契約は、コンソーシアム・メンバーは年間固定料金で1997年以降に刊行されたワイリーの雑誌を閲覧でき、かつ、コンソーシアム参加組織の研究者がワイリーの雑誌に投稿した論文はOA化するとの内容となっています。

■ エルゼビアとの交渉

プロジェクトDEALは、数年間エルゼビアとの交渉を続けてきました。求めてきたのは、学術雑誌を研究組織などがオンライン利用する料金の固定化、研究成果のOA化、そしてドイツの研究者全員に対して有料論文のオンライン利用と自らの研究成果発表をOA化する権利を併せて一括料金とする「publish and read」と呼ばれるモデルの適用です。このモデルは、出版社は研究および論文への対価を研究者に支払いませんので、学術機関や研究者にとって公平な条件だという声がありますが、エルゼビアの合意は得られていません。

これまでの交渉でも、コンソーシアム・メンバーのうち60以上の組織が2017年末をもって2018年のエルゼビアとの契約を延長しないと発表し、エルゼビアは折衝相手のオンラインアクセスを停止しました。このときは40日ほどで利用が再開したのですが、2018年分の契約をめぐるその後の折衝も難航し、前年を上回る数の組織が契約更新をせずに折衝を続けたところ、エルゼビアは2018年7月に再び折衝相手のオンラインアクセスを打ち切りました。実際、プロジェクトDEALに賛同する団体の中でエルゼビアとの個別契約を解消したドイツの大学・研究機関は200近くに及んでいます。

マックス・プランク協会は、プロジェクトDEALの中心メンバーであり、これまでも対エルゼビア折衝で重要な役割を果たしてきました。2017年には、傘下の研究者13名がエルゼビアの学術雑誌の編集関連のポジションを辞任して、同社に圧力をかけています。そして、2019年分のオンライン利用契約を更新しないことでエルゼビア誌へのアクセスが失われることに対し、すでに処置を講じていると表明しています。

■ 今後の見通し

エルゼビアは、シュプリンガー・ネイチャーや英国王立化学会(Royal Society of Chemistry)との出版物利用契約の見直しを進めています。プロジェクトDEALは、シュプリンガー・ネイチャーとの契約見直しは遅くとも2019年半ばまでに決着するとの見通しを述べています。先に触れたとおり、ワイリーとは契約条件の変更で合意しています。

プロジェクトDEALとエルゼビアとの対立は先鋭化しており、先の見通しは不透明です。このままの状態が長期間続くのは双方にとって望ましくないのは明らかです。さらに、同様の契約更新に関わる交渉の決裂はドイツに留まらず、多くの研究者が最新の論文を読めないという事態に直面しているとの記事がネイチャーに掲載されています。学術出版社との購読料に関する折衝は2019年に大きな山場を迎えることでしょう。


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