論文の出版にかかる費用はいくら?

ジャーナルの出版には、膨大な時間と多大な経費がかかります。投稿されてきた論文が規程に沿ったものかを調べる事務的な作業から、査読者を探したり、複数の査読者の論評をまとめて著者へ連絡を取ったり、最終的にジャーナルへの掲載が決まれば、細かなフォーマットや誤字脱字を確認したり・・・。大学によっては、ジャーナルの編集にかかわることも職務の一環と見なし、編集長を任された教授に対して学内業務の削減などの援助を行っているところもあるようです。また、大学院生や学部の事務員が無償で手助けをしているケースも多く見られます。
それでも、印刷物を発行するジャーナルでは、印刷代だけでかなりの費用がかかります。そのため、多くのジャーナルが会員制を取ったり、会員以外の人への年間購読を斡旋したり、特定号のバラ売りしたりするなど、その経費を賄おうと必死です。このようなジャーナルの利点は、投稿する研究者へ掲載費を請求することが少ないということでしょう。しかしその反面、せっかく掲載されてもジャーナルの定期購読者(学会誌であれば学会員)以外には読まれる機会が少ないという弱点があります。
そのうえで昨今ではジャーナルの購読料が高騰しています。『Library Journal』の調査では、どの分野でもジャーナルの購読料は2013年から2014年にかけて6〜7%値上げされています。また日本の大学の図書館では、2004年から2012年にかけて電子ジャーナルの購入費が1000万円弱から3000万円近くへと激増していることが文部科学省の調査でわかりました。
そのため、たとえば名古屋大学を含む複数の大学が、大手出版社が出しているジャーナルをまとめて読める「パッケージ契約」を解約し、研究者個々人が必要とするジャーナルだけを購入するように方向転換しています。2012年には、著名な研究者たちが学術出版最大手のエルゼビア社へのボイコット−−投稿しない、査読しない、編集協力しない−−を呼びかけたことが話題になりました。
一方、読者を定期購読会員に限定することを基本とする伝統的なジャーナルとは別に、「オープンアクセス・ジャーナル(open-access journals)」といって、インターネット上で誰でも閲覧ができるジャーナルも激増しています。このようなジャーナルには、掲載されれば多くの人に読んでもらえるという魅力があります。しかしその反面、掲載時に、出版費(publication fee)またはAPC (article processing charge)と呼ばれる手数料を投稿者へ課すこともありますので要注意です。これらの費用の額は雑誌によってかなり違いますが、たとえばSpringer(シュプリンガー)社では3000ドル、『分子システム生物学(Molecular Systems Biology)』では3500ドル、BioMedCentralが出版するジャーナルでは1600ドルから1800ドル程度という数値が出ています。
また、『大気化学・物理学雑誌(Journal of Atmospheric Chemistry and Physics)』のように1ページあたり31ドルから50ドルを請求するジャーナルもあります。詳しくは各ジャーナルの投稿規程を読んでください。「publication fee」や「article processing charge」をキーワードに検索していただければすぐにわかると思います。
ひと昔前までは、「印刷物でなければ出版じゃない」といった意見が中心的でしたが、近年では著名な研究者たちが賛同することによって、オープンアクセス・ジャーナルのようなオンライン・ジャーナル(online journals)が学術雑誌としての権威を高めています。そのため、「オンライン・ジャーナルの方が簡単に出版できる」というのは、過去の話となりました。投稿先を考えるときには、オンラインもオフラインも同等に考慮しましょう。
しかし−−オープンアクセス・ジャーナルのなかには、投稿者に高い掲載料を請求するわわりには、査読といっても名ばかりのことしか行っていないような、信頼性の低い雑誌もあることが報告されています。こうしたジャーナルは、いかがわしい研究を発表したい(ニセ?)研究者と彼らからの投稿料で儲けたい出版社との共犯関係によるビジネスモデルともいえますが、学術界でまともな評価を得たいのであれば、そういうジャーナルでの論文発表は避けるほうがいいでしょう。そうしたいかがわしいジャーナルの「ブラックリスト」もありますので、参考にしてください。

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