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論文がリジェクトされる理由とリジェクト後の対処法

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はじめに
投稿した論文がリジェクト(掲載拒否)されて落胆したことのある研究者は少なくないでしょう。そのとき、学術雑誌(ジャーナル)の編集者や査読者になぜリジェクトされたのかを尋ねたことはありますか?コメントがもらえれば、リジェクトの理由を考え、原稿をより魅力的なものになるように論文を改良するのに役立てましょう。リジェクトされたからといって、必ずしも論文の質が低いとは限りません。この記事では、学術論文がリジェクトされる理由、リジェクトを避けるためにできること、リジェクトされたときの対処法を概説します。

 

学術論文のリジェクトとは

学術論文のリジェクトとは、投稿したジャーナルで不採用になることです。研究の誠実性が疑われたり、研究倫理に反していたりする論文はリジェクトとなります。一流ジャーナルのリジェクト率は80%近いとも言われていますが、この数字はアクセプト(受理)率からも見えてきます。例えばエルゼビア社は、2,300誌のアクセプト率を算出したところ、1%から93.2%まで幅があり、平均は32%だったと記しています。つまり約70%程度はリジェクトされていることになるわけです。ですので、リジェクトされても落胆せずに、学術出版ではよくあることと割り切り、論文を改善するための貴重なフィードバックが得られたと考えて次のステップに進みましょう。

 

リジェクトされる理由

論文がリジェクトされる主な理由としては下の9つが挙げられますが、中には執筆段階で対応できることや、投稿前にチェックできるものもあります。書式の不備やスペルミスのように研究の内容とは関係ない基本的なミスでリジェクトされることは避けましょう。査読に回される前のデスクリジェクト(エディターキックとも言う。ジャーナル編集部の判断によるリジェクト)は避けたいものです。

 

1. 論文が投稿先ジャーナルの対象領域(研究対象)に合っているか
[問題例] 投稿論文がジャーナルのトピック分野に関連していない


2. 論文の構成、書式はジャーナルの投稿規程に準じて書かれているか
[問題例] 論文が定められた単語数を大幅に超えるか下回る、正しい書式で書かれていない


3. 論文に独自性、新規性はあるか
[問題例] 論文が新しい情報を提示していない、他の発表論文と十分に異なっていない


4. 研究デザインに不備はないか、リサーチクエスチョンは明確か
[問題例] 方法論が不健全(適切な調査方法を用いていない)、主張を裏付ける十分な証拠が提示されていない、論文の結論が証拠によって裏付けられていない


さらに、適切なコントロールの欠如、偏ったサンプリング、不適切なサンプルサイズ、不十分なデータ収集・データ分析といったデータ関連の問題がある


5. 自分の考えを明確に伝えているか
[問題例] 明確で論理的な議論を提供していない


6. 言葉・表現、文法、スペルといった言語の問題はないか
[問題例] 文法エラーがある、文章構造が複雑、メッセージが明瞭でない、読みにくい


7. 図表やインフォグラフィック、画像などに不備はないか
[問題例] 図表の正確性に欠ける、タイトルや判例の表記が曖昧、引用が不適切


8. 文献レビューは十分か
[問題例] 該当分野の既存の文献を十分に調査・カバー・評価していない、重要な既存研究への言及が漏れている、関連研究とのつながりが示されていない


9. 研究倫理上の問題はないか、盗用・剽窃は含まれていないか
[問題例] 関連文献の適切な参照または引用を欠いている、引用の欠落や誤りがる、盗用・剽窃の恐れ

 

これらの他にもジャーナルの査読者の判断、ジャーナルの方針、多すぎる投稿論文数などが理由でリジェクトされることもあるので、一概に自分の論文の質が悪いからリジェクトされたと思い込まずに、しっかりと理由を考え、対処していくことをお勧めします。

 

リジェクトを防ぐ

どのような理由でも、論文がリジェクトされればガッカリするものです。リジェクトを避け、アクセプトされる可能性を高めるためにできることを4つ紹介します。

 

1. 他の研究者が着手していない研究テーマを選ぶ
研究とは、未知の分野を開拓する道のりです。他の研究者によって開拓されていない道を歩むことは時に厳しいものですが、その新規性ゆえに、ジャーナルの編集者や査読者の注目を集めることができます。研究の独創性は重要な要素なのです。また、既存の研究分野に斬新なアイデア、方法論、発見を提供する論文は、ジャーナルへの掲載が認められる可能性が高くなります。

 

2. 研究テーマに適した研究デザインを選ぶ
テーマが決まれば、それに適した研究デザインを選択します。研究デザインにはさまざまな型があるので、研究で評価したいこと、導き出したい結論に応じて決定します。

 

3. 徹底的かつ包括的な文献レビューを行う
次に、徹底的かつ包括的な文献レビューを行う必要があります。専門分野における既存の知識とギャップを理解した上で、論文でしっかりとした基礎知識を提示し、関連文献を適切に引用します。先行研究で何が課題として残されているか、研究の着眼点をどこにもてが良いかを理解します。

 

4. ジャーナルのガイドラインと書式要件を厳守する
最後に最も基本的なことですが、ジャーナルのガイドラインと書式要件を厳守することは不可欠です。編集者や査読者は、よく整理され、明確に書かれ、ジャーナル特有の書式に従っている論文を高く評価します。明瞭さと簡潔さも重要です。不適切な専門用語や俗語を避け、自分の考えや発見を明確かつ簡潔に示すべきです。

 

投稿する前に、英文校正やプルーフリーディングを行うとともに、同僚や指導者からフィードバックを求めることをお勧めします。新鮮な視点で論文を見てもらうことは、改善点を明らかにし、論文全体の質を高めるのに役立ちます。

 

リジェクトされたときの対処
1)リジェクトの理由を探る
論文がリジェクトされた場合、取るべき手段はいくつかありますが、エディターキック(査読の前段階でジャーナルの編集者がリジェクトするもの)なのか、査読後のリジェクトなのかによって対処が異なります。

 

エディターキックであれば、査読する価値がないと判断されたわけです。もちろん改善して再投稿することはできますが、何を直せばよいのか分からない場合には、別のジャーナルに投稿してみるのも一案です。ただし、ジャーナルごとの投稿規程を確認し、必要な調整を行ってから再投稿するようにしましょう。

 

査読後のリジェクトであれば、査読者からのフィードバックを注意深く読み、リジェクトされた理由を理解し、改善できる部分を修正します。リジェクトの理由が納得できない場合には、ジャーナルに対して異議を申し立てることも可能です。

 

なお、論文が何度もリジェクトされた場合は、同僚や指導教員らにフィードバックを求めることも検討してください。

 

2)投稿先ジャーナルの検討
論文を改善した後は、同じジャーナルに再投稿するのか、別のジャーナルに投稿するのか検討しましょう。別のジャーナルに投稿する際には、必ずジャーナルの投稿規程を確認して、必要なフォーマット調整を行ってください。英語論文のフォーマット調整は難儀な作業ですが、不完全な調整のまま論文を安易に投稿してしまうと、防ぎ得るミスで再びリジェクトされてしまうことになります。

 

著名なジャーナルでの掲載は多くの研究者が狙っており、投稿数が多いがゆえに敷居が高いものも多いのが現状です。とはいえ、他の投稿先ジャーナルを探す際、最初にリジェクトされたジャーナルより低いランクならアクセプトされるだろうと考えるのは間違いだという点です。研究の新規性や妥当性といった論文の価値が明確に示されていなければ、どのジャーナルでもアクセプトされることは難しいでしょう。また、ランクに関わらず、査読者は専門知識に誇りをもって論文に取り組んでいますので、査読者への敬意を忘れず、ジャーナルの指定する規程に準じて投稿するようにしてください。最初の査読で指摘された部分は、しっかり対応しておきましょう。なお、掲載料さえ払えば掲載するというハゲタカジャーナルへの投稿は論外です。悪質なジャーナルに引っかからないように注意してください。

 

また、ジャーナルに論文を掲載する以外の選択肢、会議録やワークショップで論文を発表することや、オープンアクセスジャーナル、プレプリントサーバーへの投稿も合わせて検討してみることをお勧めします。

 

リジェクトは辛い経験です。それでも避けては通れません。どんなに成功した研究者でもリジェクトの経験の上に経歴を積み上げているものです。リジェクトされたのは自分だけじゃないと思い出し、論文が公開される日まであきらめないでください。大切なのは、失敗から学び、前進し続けることです。

 

こんな記事もどうぞ
エナゴ学術英語アカデミー「投稿原稿がリジェクトされる一般的な理由
エナゴ学術英語アカデミー「リジェクトへの対処法―起死回生のチャンスを掴む

 

参考文献
Rejection Blues: Why Do Research Papers Get Rejected? - PMC (nih.gov)
Journal Acceptance Rates: Everything You Need to Know

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