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研究論文における結果と考察

研究成果を伝えるための研究論文は、序論(問題提起・仮説・目的)・方法・結果・考察・結論で構成されることが一般的です。学術論文の代表的な構成とされる「IMRAD形式」では、序論・方法・結果・考察となっていますが、論文を書くためには基本的な枠組みを理解しておくことが重要です。その上で、投稿する学術雑誌(ジャーナル)によっては書式に多少の差があるので、論文を執筆する前に投稿先の投稿規程を確認しましょう。中には、結果と考察を1つのセクションで書くよう指示しているものもありますが、今回は、結果と考察を分けて書く方法を見てみます。

■ 「結果」と「考察」の違いと書き方

まず、「結果」は実験などの結果または観察記録などであるのに対し、「考察」は結果に基づく分析や議論です。結果は、淡々と事実を述べればよいのに対し、考察は論理的な組み立てが必要です。そのため論文の評価では、考察が重要視される傾向にあります。結果と考察をまとめるか、分けて書くかは投稿規程に順ずるべきですが、どちらの形式にも長所・短所があります。結果と考察をまとめた場合、結果に応じた考察が続けて書かれるため、読者は流れをつかみやすくなります。結果と考察を分けた場合、考察が連続的に書かれるので読者は研究全体を俯瞰し、把握しやすくなる反面、何度も考察に関連する結果の箇所に戻って読み直さなければならないかもしれません。結果と考察の書き方としては、いずれも間違いではありません。


ここでは、結果と考察を2つに分けて書くときのチェックポイントを並べてみます。

■ 結果と考察を効果的に分けるために

結果と考察を分ける場合には、以下のことに注意します。

1.結果には、実験の結果、データを提示することに徹する。
2.結果の説明は、考察に記す。
3.結果で提示した情報を考察で繰り返さない。

結果は簡潔に伝える
結果は、論文の要であり、実験の結果あるいはデータを簡潔に示す部分です。

結果に書くべきこと

1.重要な研究結果
2.研究の意義を示す統計分析
3.データは図表やグラフを用いて分かりやすく表示

データの重複記載には注意しましょう。データを示す手段として、文中に記載するか、図表のどちらで表示するか、適切な方法を個々に検討します。結果の中に同じデータを別の方法で示すことはしません。

考察はインパクトが大切

考察では、結果、つまり観察された現象を説明し、なぜその結果となったのか論拠を示さなければなりません。特に、実験がうまくいかなかったり、仮定していた結果と異なったりした場合、考察はより重要視されます。

考察に書き込むこと・注意すべきこと

1. 序論で提起した問題の解決にどのように貢献したか(取り組んだか)を述べる。
2. 結果に示したデータなどに基づき、研究で明らかになった点、導かれた主要な所見を強調し、結果を批判的に分析する。
3.研究成果を文献や既存の知識で裏付けながら説明する(関連する研究の所見との比較検討も含む)。
4.今後の研究の方向を示す(今後の研究に向けた提言など)。
5.序論や結果で示したのと同じ情報を繰り返し述べない(必要な場合には簡潔に)。

考察では、序論や目的で提起した問題、結果、そして導かれた結果がどのような学術的意義を持つのかを検討します。その際、新しい問題や関係のない論議などを提示しないように気をつけます。結果と考察のどちらに何を書くか悩んだときは、ここに示すチェックリストを確認してみてください。

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