【東京工業大学 生命理工学院】小林 雄一 教授(後編)

天然から抽出するだけでは入手が困難でかつ複雑な構造をもつ生理活性化合物の合成を研究されている小林教授。研究内容が繊細なだけに論文を執筆される際、どのような英語表現を使うかは難しそうです。後編では、論文執筆についてご自身がご苦労されたことと、学生への指導について伺いました。


■ 先生ご自身が研究論文を書く際にご苦労された点などをお聞かせください。

口頭発表同様、論文の執筆にはいまだに苦労しています。語彙が足りないので、いまでも論文を書く上での表現に使える単語を覚える努力をするのと共に、気に入った表現を見つけたら必ず書き留めるようにしています。いつか使えると思っていっぱい溜めています。

論文を書き始めた頃、特別な指導などはまったくなかったので、ちゃんと指導を受けるチャンスがあったらよかったのにとは思います。僕の場合、指導教官に見てもらったというより、僕が助手(今の助教)の頃、自分で書いたものを時々ボスに直してもらったことはありました。ただ、基本的には自分で書いていました。

■ 論文を書くとき、何かを参考にされましたか?

他の論文ですね。似たような専門分野で同じような研究をしている人の論文を参考にしました。今では許されないかもしれませんが、当時は論文をコピーしろとか、その論文に書いてある文章を自分のものにしろ――という指導があったんです。こういう表現がしたければ、こういう真似をしろと。よく人の論文の表現を真似て書きました。人の論文を参考にするしかなかったですからね。化学英語などの一般的な教本的ものも何冊かは持っていますが、やはり普通の論文を読んで、気に入った表現を取り入れたほうがいいとなってしまいます(笑)。その方が、伝わりやすい。

■ では、学生が論文を書く際にはどのように指導されていますか。

この論文いいから、読んでごらんというところから入ります。論文には、論文本体の部分と、実験を説明する部分がありますが、実験部分は英語でも自分で書いてねと。もちろん、添削して直します。例えば、ここにある実験書も添削して学生に返します。それで、もう一回直したのを見せてもらって完成させる。今は、そんなふうにやっています。それから、論文の書式(フォーマット)は雑誌によって異なるので、なるべく各誌が出しているフォーマットに関する手引き(Author Guide)を読ませて、ここはこんなふうに書きなさい、あんなふうに書きなさいと、気がついたことを指導しています。フォーマットに沿って書かれているかをチェックして、直させて――その繰り返しです。

■ 指導されている学生は何名ですか?

今は5名です。実は来年3月に定年退職するため、大学院生は減りました。一時期はずっと10名以上いましたが。5名でも一人ひとり添削するのは大変ですが、なるべく丁寧にやっています。

■ 大学のプログラムで論文の書き方や発表の仕方などを学ぶ機会が少ないとよく言われますが、東工大ではいかがですか。

ここ10年くらいの間に英語の授業がかなり増えました。大学院の専門分野は、すべて英語で開講しています。大学院ともなると専門分野に分かれていて、分野が違うと当然ですが専門用語が違う。自分の専門以外の言葉は分からない。それを日本人の教員が英語で話すから、余計聞き取りにくい。何らかの工夫の必要性を感じています。専門分野とは別に、英語での科学論文の書き方を学べる授業があります。一般論ですが、半期で15回。内容ははっきり覚えていませんが、これは学生の間でもよかったという話を聞きます。この授業には、日英どちらもちゃんとできる方を講師に呼んでいるので、ある程度の基礎は学ぶことができます。本当に最近の話で、ここ10年ぐらいというより、この5年でしょうか。他に、コースの詳細はわかりませんが、若手の教職員向けに論文の書き方の講習会というのが年に数回開催されています。ただ、それぞれの学部の単位、あるいは大学院の単位の中でどんなカリキュラムにするかは、かなり独自色が出るので、同じ大学でも他の学部で同様のことをやっているのかは分かりません。

■ 日本人の研究者が英語力を鍛えていくためには、どうするのが一番効果的だとお考えですか。

やはり一つは英語漬けになることです。留学しても、しなくても英語で話す機会を設けること。機会を見つけること。今は、留学生の数も増えているので、彼らと友達になったりして、その気になれば必ず機会はあると思います。留学生との会話は英語ですから。留学生は日本語を学びたいという気持ちがあるので、最初は英語でも、そのうち片言日本語になったりして、どっちつかずになることもありますけど、お互い学び合いです。

留学に行く学生もいます。生命理工学院の下の学部のときから海外に行ける制度がありますし、大学院になってからも数ヶ月、あるいは半年、延長して1年などの期間、留学することができます。しかも、ちゃんと生活費とか渡航費なども出してくれます。

■ すばらしい制度ですね。では、最後に弊社のような英文校正サービスを行う会社に、こんなサービスがあったら役立つというものなどあれば教えてください。

英文校正を依頼する立場としては、もう少しジャンルが細かく分かれていたほうがいいんだけどという感じがします。僕は、有機化学の中でも合成、医薬品合成を専門にやっているので、その分野の専門知識のある方を多数そろえてもらえると助かりますね。自分で一生懸命努力して細かい微妙な表現を盛り込んでいるので、添削の際にその辺りをうまく理解してもらえると助かります。分野が混ざっているような領域ではどうするのかといところまでは分かりませんが、ジャンル分けが細かくなって、なるべく自分の今書いている論文の中身までちゃんと理解してくださる方に校正してもらえるといいなと思います(笑)。

■ ご意見を反映して、さまざまな分野で専門分野をきちんと理解している適任者が校正作業にあたれるよう、努めてまいります。本日は、インタビューのお時間をいただき、ありがとうございました。


インタビューの前編はこちらからお読みいただけます。

 

【プロフィール】
小林 雄一 (こばやし ゆういち)先生
東京工業大学 生命理工学院 教授・工学博士
1981 – 1982年 米国コロンビア大学博士研究員
1982年 東京工業大学助手
1991年 同大学助教授
2010年 同大学教授
受賞
1988年 日本化学会進歩賞
1991年 有機合成化学協会・研究企画賞
2011年 東工大教育賞2010年竹田国際貢献賞

 

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