博士号取得に必須のプロジェクトマネジメント・スキル

博士号を取得するためには、数年間の講座履修、研究活動、論文の執筆・発表、学会への出席など、限られた時間に多くのことをこなさなければなりません。すべてが計画通りに遂行できるわけではないので、時間の遣り繰りが難しいのが現実です。複数のタスクを混乱することなく計画的に進めるためには、プロジェクトマネジメント(PM)・スキルが必要なのです。

博士課程学生にはプロジェクトマネジメント(PM)スキルが必要

PMとは、プロジェクト全体を俯瞰的に眺め、全体の意思決定および進行管理を行うことです。さまざまなタスクに追われ、「五里霧中」に陥ることがあると評される博士課程学生には、PMスキルが必要です。規模の大小に関らず、プロジェクトの進行において計画的に仕事を進めることができず、収拾がつかない状態に陥った場合には、その状況から脱却するスキルが必要なのです。自身もジョージア工科大学でバイオエンジニアリング分野の博士号取得を目指しているAngel Santiago-Lopezは、博士課程の教育にPMの指導を含める必要があると感じ、他の学生にも役立ちそうなPMスキルを構築しました。そこには、プロジェクトの題材の組み立て、目標の設定、スケジュールの作成や管理などを含めた6つのアドバイスが記されています。ここでは、その中から特に重要な4つに絞って紹介します。

PMスキルの重要なポイント4

1.プロジェクトを定義する

プロジェクトの方向性を定めるため、達成の目標と、作業タスクを定義することがまず何より大切です。プロジェクトの目標は、「21世紀における生命倫理学の研究」などのように漠然としたものではいけません。特定の分野で進められている重要な課題の解決に貢献する新しい発見をするなど、具体的に定める必要があります。
作業タスクの定義に関しては、プロジェクトの目標達成に至るために必要と考えられる作業および課題を、すべて洗い出すことが必要です。経験したことが無いテーマのプロジェクトでは、想定されるタスクを拾い出して定義することは難しいでしょう。近似のプロジェクトの事例などを参考にして、そこに手を加えることで自分のプロジェクトに該当するタスク・リストを作成すると良いでしょう。大枠を先に設定し、そこから小さなタスクにブレークダウン(細分化)していく、トップダウン的なアプローチがお勧めです。

2.スケジュールを管理する

スケジュール管理はプロジェクトの成否の分かれ目です。定められた締め切り(中間報告なども含めて)までにプロジェクトを計画通りに進行させることは、プロジェクトの組み立てに際して大変重要です。スケジュールを立てるには、色々な方法がありますが、基本的な手順は次の通りです。

  • まず、最終締め切りを確認します。博士論文で言えば、執筆が完了し、見直しと修正も終えて、教授に論文を提出する期日です。プロジェクトの内容、特性に合わせて最終目的と期日を定めます。
  • 次に、プロジェクトの構成要素、つまり細分化したタスクそれぞれの期限を設定していきます。例えば、論文を書くことがプロジェクトとすれば、各章の前後関係を検討しつつ、それぞれの章を完成させることに期限を設定します。
  • 最後に進捗目標を設けます。研究の進め方について、日次や週次のスケジュールをたて、タスクをそのスケジュールに即して順次完了させながら全体の完成に向けて進めます。

スケジュールには遅れが付き物です。絶対に遅れてはならない部分と、遅れたとしても調整できる部分を認識しておく必要があるでしょう。優先度を把握し、スケジュールの多少の遅延に対しても有効な手段を取れるようにしてあると慌てずにすみます。

有難いことに、スケジュール管理に役立つツールが沢山あります。例えば、複数のタスクをどの順番で進めていくかをフローチャートにするツールや、個々のタスクの完了に向けた進捗度合いを示す「ガントチャート(Gantt Chart)」などを使ってスケジュールを視覚的に表すことは、進捗管理に有効です。プロジェクトの計画策定と進捗管理をサポートするソフトウェアも豊富に出回っているので、自分の使いやすいツールを活用してみましょう。

3.チェックポイントを設定する

チェックポイントを設定し、プロジェクトの進捗を確認するのは有効です。折々で進み具合あるいは、停滞していないかなどをチェックし、時々に必要な改善処置を図ることは最終的な目標に向かって仕事を続けるためのモチベーションを維持することにもつながります。チェックポイントは、例えば次のようなものです。

  • 教授との打合せまたは報告の機会
  • 学生同士の協議
  • プロジェクトの節目となる作業が完了するタイミング
  • その他、プロジェクト終了までに自分で設定する種々の節目

チェックポイントは、予期せぬ事態に備えることにも役立ちます。段階的に、進捗やそれまでの成果の内容を振り返り、確認する機会を持つことで、内容に誤りがあれば修正するきっかけともなります。

4.成功を明確にイメージする

誰でも「良い仕事」をしたいと考えます。でも、それはどう言う意味でしょうか? プロジェクトの質を評価するために、成功とは何かを明確にしておくべきでしょう。例えば、新しいアイデアを発表すること。あるいは、自分の専門領域で長年課題になっていた問題を解決すること。最終的な目標がどのようなものであれ、取り上げるテーマに新しいアイデアを取り入れることにより、プロジェクトは斬新かつ興味深いものとなるでしょう。

どのようなキャリアでも役立つPMスキル

PMスキルは、どのようなキャリアパスを歩むとしても役立つスキルです。PMに関するノウハウや知識を体系的にまとめたPMBOK(Project Management Body of Knowledge)という世界標準もあり、プロジェクトを「独自のプロダクト、サービス、所産を創造するために実施される有期性の業務」と定義しています。PMは、始めと終わりのある仕事を、限られた期限内に計画的に、円滑に進めていくスキルです。独創的で創造的な取り組みや、問題解決の取り組みを進めるに際して、大きな力となります。

上に記したように研究業務においてもPMは極めて大切なスキルです。補助金の獲得、個人で進める小規模な研究プロジェクトから多数の研究者が共同で進める大規模プロジェクトまで、PMスキルはあらゆる規模、内容のプロジェクトの進行管理に役立ちます。そしてさらに、学生が博士号取得後に学術界を離れても、さまざまな分野で役立つスキルでもあるのです。

ぜひ、積極的にPMスキルを身につけることを、心がけてください。


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