定期購読型とオープンアクセス型ジャーナルの未来

自分の論文の投稿先を考えるとき、そのジャーナルの現在の知名度もさることながら、将来への継続的な知名度も気になります。そのためか、従来型の定期購読者に配布されるジャーナルと、新進気鋭のオープンアクセス型のジャーナルと、どちらが将来性があるのかという声をよく聞きます。
出版までのプロセスが迅速に行われ、インターネットさえあれば自由にアクセスできるオープンアクセス・ジャーナルは、研究者の時間的負担を軽減し、視野とネットワークを広げるという大きな利点があります。そのため従来型の学会誌の中にも、ジャーナルの一部オープン化や出版から一定の期間を経てのオープン化など、 何らかの形でオープン化を取り入れていこうとする傾向が見られるようです。
「オープンアクセス・オプション」といって、投稿者が1000ドルから3000ドル程度の掲載料を払うことによって、自分の論文をオープンアクセスにすることができるジャーナルもあります。また、アメリカ微生物学会(ASM: American Society for Microbiology)の発行する雑誌の論文は発行4カ月後に、コールドスプリングハーバー研究所出版(Cold Spring Harbor Laboratory Press)の発行する雑誌の論文は6カ月後に無料公開となります。
また、ジャーナルのオープン化は、自分の研究の成果をより早く、より多くの読者に読んで欲しいという研究者の願いをかなえることに大きく貢献しています。昨今ではそのスピードをより高めるために、ピアレビュー(査読)前の論文や、使用されたデータなどを出版前に一般公開するオープンアクセス・レポジトリー(Open-Access Repositories)を設けているところも少なくありません。この傾向は従来のクローズド・アクセス・ジャーナルにも見られ、出版されるジャーナル自体はオープンでなくても、ジャーナルのウェブサイトを通して、研究者が自由に自分の論文や使ったデータをアップロードする手助けをするところも見られます。
しかしすべてのジャーナルがオープンアクセス化するまでには、まだまだ時間がかかるでしょう。定期購読費を取らないオープンアクセス・ジャーナルでは、その運営費を安定的に確保することが困難なため、1000ドルから3000ドル程度の掲載料を投稿者に課すことが普通です。また、突然の廃刊に見舞われたりするケースもあります。この点では、従来のジャーナルのほうが、より安定しているともいえるわけです。
今後もオープンアクセス・ジャーナルが成功を続けるためには、 何らかの公的な資金の導入が必要かもしれません。実際、オープンアクセス・ジャーナル大手のPLoSが新しいジャーナルを創刊したとき、ビル&メリンダ・ゲイツ財団からの多額の寄付を受けたということもありました。
このように、従来型の定期購読されるジャーナルとオープンアクセス・ジャーナルは、今後もお互いに影響を与え合いながら、学術界全体により多くの利益をもたらすよう共存発展していくと思われます。

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