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ハイブリッドOAはダブルディッピングか

読者から購読料を徴収する従来の定期購読式の学術雑誌(ジャーナル)とは異なる出版形態である、オープンアクセス(OA)ジャーナルが広まっています。OAジャーナルは、購読料をとらずに掲載に必要なコストを回収するため、論文掲載料(Article Processing Charge : APC)を論文執筆者から徴収しています。OAジャーナルの新たな類型として存在を増しているのが ハイブリッド・ジャーナル 。これは、定期購読式のジャーナルが一部のコンテンツを無料で公開する、あるいは著者が投稿論文を出版する形式として従来の定期購読式かOAのいずれかを選択するという形態です。ハイブリッド・ジャーナルの場合、論文をOAで公開するコストについては執筆者が追加料金を支払うものが多くなっています。

ハイブリッド・ジャーナルは出版料の二重取りか

ハイブリッド・ジャーナルでは出版料の二重取りが発生するケースがあることが議論されています。

  1. 執筆者から論文をOAにするための掲載料を徴収
  2. さらに大学図書館などの購読者から、OAジャーナルの購読料を徴収

このケースでは、執筆者と購読者両方から料金をとっていることになるため、二重取りになります。つまり、出版社は著者や研究助成機関に論文掲載料を課金する一方で、大学図書館や読者にも購読料を課金する――「ダブルディッピング」とも言われる二重払い問題です。これに対する出版社の反論は、OA論文の掲載料相当分については購読料を割引しているというもの。しかし、この割引が適正に行われていることを確かめるのは、実際には難しいのが現状です。というのは、大学をはじめとする大規模な研究機関は多数のジャーナルを購読しており、多くの場合はそれらを「一括」する特別料金で購読契約しているのです。この場合、ひとつのジャーナルの料金を正確に特定することが可能でしょうか?大学図書館などが年間購読料を支払っている場合、ハイブリッド・ジャーナルの中でOAを希望した著者にAPCを課すことは二重取りになってしまうのではないでしょうか?

ハイブリッド・ジャーナルは高いのか

論文をハイブリッド・ジャーナルでOA化する場合、出版社は著者に対しても論文掲載料を請求します。その額はタイトルや出版社によって違いがありますが、一般的には1論文あたりUS$1,500~5,200とも言われ、フルOA(すべての論文をOAで公開)にする場合の掲載料に比べてはるかに高いと指摘されています。さらに、投稿した論文が複数の一括契約に含まれている場合、大学図書館などは知らないうちに該当の論文に対して二重払いをしたことになりかねません。ダブルディッピングは余計なコスト負担を強いるものであり、研究成果へのアクセスにも影響を及ぼすことにつながっているのです。

著者に追加費用の負担を課すだけでなく、ハイブリッドOA論文に対する読者のアクセスが十分に保証されていないケースがあることも問題視されています。過去には、論文が完全に公開されるまでに数ケ月から一年かかるものもありました。一定期間経過すれば掲載論文を無料でアクセス可能にするジャーナルもあることも考えあわせると、公開までに時間を要するハイブリッド・ジャーナルへの論文掲載は利用者にとって「無駄なコスト」を要するものです。

こうした批判を受けてハイブリッド・ジャーナルの多くは、ダブルディッピングへの対策方針“no double-dipping policy”を発表しています。一般的にはこうした出版社は、前年に掲載したOA論文の数に基づいて購読料を割り引いています。片や、ハイブリッド・ジャーナル出版社の中には、ダブルディッピング対策について明確に説明していない社もあります。説明がないからと言ってダブルディッピングしているとは断定できませんが、研究者に疑念が広がるのは避けられません。

ダブルディッピングに対抗する動き

2018年5月7日、OAビジネスモデルの継続・発展を図る組織であるKnowledge Unlatched(KU)の主導のもと、学術出版に関係する15の団体が、大学図書館などが学術ジャーナルや出版書籍への投稿に対する二重払いを容易にチェックできるようにすることでダブルディッピングを防ごうと“Anti-Double Dipping Alliance”を立ち上げました。既にOA出版されている論文などに対して、大学や図書館がOA化するための費用を改めて支出してしまうのを防ぐため、KUでOA化されているタイトルの情報を提供する(KUに登録済みのタイトルにフラグを付ける)ものです。発足後も、さらなる参加の呼び掛けを続けています。

研究成果に対して自由にアクセスできることは重要です。学術ジャーナルなどに対して読者がアクセスできるようにするためにはコストがかかり、誰かが負担しなければなりません。この点については誰も異論を唱えることはないでしょう。しかし、学術ジャーナルの購読費用は高騰し、電子化およびOA化が進んできました。多くの大学などが論文を流通させるためにOAポリシーを採択し、OAジャーナルへの投稿が急増するにつれ、OAモデルにおける論文掲載料(APC)の費用負担や助成が議論されるようになっています。そして、ハイブリッドOAの登場とダブルディッピング問題の浮上。今後も論文をOA化する動きはますます加速し、さらに2020年以降には公的資金を得た研究の論文のOA化を義務化する動き(プランS)も出ている状況において、OA化の進め方、ダブルディッピングの改善への取り組みも進むことでしょう。Anti-Double Dipping Allianceのような動きも広まっていくと予想されます。


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