プロシーディングと学術雑誌-その違いは

学術界では“Publish or Perish(出版か死か)”という言葉がよく聞かれます。これは、論文が学術雑誌(ジャーナル)に掲載されないと、研究実績として認められないので、研究を続けるため、つまり研究者であり続けるためにはよい論文を書いて出版しなければならない――ということです。特に、研究者はインパクトの高い査読付きの学術雑誌に論文を掲載することを目指し、日々の努力を重ねています。研究が評価されれば、昇進、終身在職権、資金調達も夢ではなくなるからです。

論文投稿と並んで研究成果を広める場となるのが学会(学術会議)です。プレゼン発表だけでなく、配布される プロシーディング (講演要旨集)に論文を掲載するという方法で研究を広めることができます。プロシーディングは、学会が出版する学術雑誌ではなく、あくまでもその会議で発表する予定原稿をまとめたものです。そのため、掲載への査読がない、またはあってもそれほど(査読付き学術ジャーナルほど)厳しくないことが多いので、査読付き論文とは別の出版物として扱われます。では、プロシーディングに論文を掲載することは、研究者にとってどのような意味を持つのでしょうか。

■ 学会発表とプロシーディング

研究者が学会で発表を行うには、学会主催者に事前に論文などを提出し、研究発表として、また該当分野の研究者間の情報交換として価すると承認されなければなりません。学会での発表方法としては、ポスター発表、口頭発表(プレゼン)、またはワークショップ形式のディスカッションなどがあります。これらの発表方法は会議によってさまざまです。そして、提出された論文などを学会主催者側の編集チームが確認を行った後に、会議論文をまとめて冊子にしたものがプロシーディングです。学会開催前後に参加者や希望者に配布されます。

分野や学会によっては、学会後に査読付きのプロシーディングを書籍やジャーナルとして刊行することもあるようです。また、発表者自身が、学会後にプロシーディング用に執筆した原稿(proceedings paper)/会議論文(conference paper)を原著論文(full paper)にまとめ、学術ジャーナルに投稿することも可能です。ただ、その際には必要な許可を確認しておくことが重要です。前述のようにプロシーディングが学会によって学術ジャーナルの形で刊行される場合や、プロシーディングとまったく同じ内容で学術雑誌に投稿した場合には二重投稿となる危険がありますので注意しましょう。

プロシーディングに採録する会議論文に査読を行っている学会もありますが、査読システムや採択率は学会によって多様です。査読の有無は学会への申込み時点で確認できるはずですが、いずれの場合でも会議論文を書くときには、以下のことに気をつけましょう。

会議論文を書くときの注意

・表題:表題は、論文が何に重点を置いて書かれたものかを明確に伝え、かつ人の興味を引くものにする。
・要約:研究の全体の寸評となるように注意深く作成する。
・スタイル:論文全体に統一性をとる。
・焦点:学術ジャーナルへの投稿論文では複数に焦点を当てるのが一般的ではあるが、学会論文では焦点を1つに絞る。
・本文:研究の背景を短く述べつつ、方法と結果は詳細に記す。論理的な順序に従って説明すること。
・結論:読者にとって記憶に残ることを結論に記す。

■ 学会出版物(プロシーディング)と学術雑誌

一般的には、プロシーディングより学術雑誌に論文が掲載されることのほうが高く評価されますが、両者には明確な違いがあります。

学会出版物 学術雑誌
フィードバックが早い 出版まで時間がかかるため、フィードバックが遅い
研究途中であっても発表できる 完結した研究を発表する
査読(有無)-学会による判断 査読有
インパクトファクターが低い インパクトファクターが高い
研究中の新しい概念や技術を発表する 実験などにより検証された新しい概念や技術を報告する

 

そして、学術雑誌の方が高く評価され、引用されることも多いのには以下のような理由があります。

1.学術雑誌は完成された研究の論文を掲載している。
2.出版に至るまでに、匿名性を保持したシステムの中で同分野の専門家が詳細に及ぶ査読を行っている。
3.学術雑誌にはインパクトファクターが付くので、研究者は論文の質を評価する指標として参照できる。
4.査読された論文は、学術機関による信頼性が担保されたことになる。

■ プロシーディングから学術雑誌へ

これらの違いを踏まえながら、多くの研究者は、学会での発表を論文にまとめて学術雑誌に投稿しています。学会での参加者からのコメントや質問などの有意な情報は、論文の完成度を高めるのに役立ちます。学会発表で得られた情報やその後に検討したことなどを参考にしながら、実験の微調整を行い、さらなるデータを追加し、結論に反映させることができるでしょう。学会のプロシーディングには、原著論文の骨子、あるいは論文そのものの要素が書かれているので、学会発表を踏まえて加筆・修正することで、投稿論文として完成させることができるのです。

プロシーディングに採録される会議論文を作成することも含め、学会で発表を行うことは研究にとってプラスです。発表準備に追われる前に、プロシーディングの作成も研究論文に磨きをかける絶好のチャンスとしてうまく活用されるよう願っています。


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