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第4回 スマホでLet’s色覚シミュレーション

国際学会でのプレゼンを成功させるには、聞き手を引きこむ英語スピーチに加え、見やすいスライド作りも重要な鍵となります。より多くの人に伝わりやすく・わかりやすい色覚バリアフリーなスライドを作るために覚えておきたい「カラーユニバーサルデザイン」について迫る連載シリーズです。


他者の色覚を体験することは本来不可能です。しかし、C型の人がP型、D型、T型の人の色の見分けにくさをシミュレーションする、あるいはP型、D型の人がC型の色覚情報を知るためのツールがあります。

    1. 色覚をイメージできる『色のシミュレータ』

色覚をシミュレーションするツールには、メガネ型のものやパソコンソフトなどさまざまなものがあります。なかでも、浅田一憲氏(医学博士、メディアデザイン学博士)が開発したスマートフォン用のアプリケーション『色のシミュレータ』は、一般の人が手軽に試すのに適しています。浅田氏のウェブサイト内または各種配信チャンネルから無償でダウンロードできますので、ぜひ試してみてください。『色のシミュレータ』を起動して対象物にカメラを向けると、各色覚型で見えている色のイメージを同画面上で比べてみることができ、その画像を保存することもできます。あくまでもシミュレーションで正確な再現ではありませんが、身の回りのものにカメラを向けてみると、P型、D型の人がどのような色を見分けにくいのかがイメージとしてわかります(図4)。

図4 『色のシミュレータ』を用いたシミュレーションの例[上からC型、P型、D型]

 

  • 色覚補助ツール『色のめがね』

 

『色のめがね』は、同じく浅田氏が開発したスマートフォン用のアプリケーションで、P型、D型、T型など色を見分けにくい人のための補助ツールです。こちらも浅田氏のウェブサイト内または各種配信チャンネルから無償でダウンロードできます。『色のめがね』には、「色を見分ける」、「色をみつける」、「色値・色名表示」などの機能があります。カメラに映る画像内の混同色を変換して見分けやすくしたり、知りたい色名を指定してカメラを向けることでその色がどこにあるか見つけたり、画像内の特定のポイントの色名を表示させたりすることができます。また、『色のシミュレータ』と同様に、色覚型ごとのシミュレーションができますので、P型、D型、T型の人が、一般色覚型(C型)の人に自分の色覚のイメージを見せることができます。

 

  • 色覚シミュレータを学術発表に生かそう!

 

シミュレータは色覚の多様性について理解するのに役立つと同時に、すぐに実践に役立てることができます。C型の人が、自分の作ったプレゼンテーションスライドにカメラを向ければ、P型、D型の人にとってどの部分が見分けにくいかがわかります。強調したはずの部分がP型やD型の人から見ればまったく目立っていなかったり、重要な色分けが意味をなしていないことなどに気づくかもしれません。この後の第9回で、どの色覚型の人にも見やすいグラフの作成方法などを紹介しますので、スライド作成後のチェックツールとして活用できます。ここで紹介したスマートフォンのアプリケーションのほかにも、パソコンにインストールして画像そのものを色変換してチェックするツールもありますので(第17回でご紹介します)、さらに興味のある人は試してみましょう。


参考資料:
カラーユニバーサルデザイン機構ウェブサイト
浅田一憲氏ウェブサイト

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