第9回 正しく情報が伝わるグラフ作成のコツ

国際学会でのプレゼンを成功させるには、聞き手を引きこむ英語スピーチに加え、見やすいスライド作りも重要な鍵となります。より多くの人に伝わりやすく・わかりやすい色覚 バリアフリー なスライドを作るために覚えておきたい「カラー ユニバーサル デザイン」について迫る連載シリーズです。


情報を一目瞭然に伝えるためのグラフも、色の使い方によっては逆にわかりにくいものとなります。ほんの少し工夫するだけで、多様な色覚の人に見やすくなりますので、次の2点を是非取り入れましょう!

    1. 折れ線グラフ – 線の種類を変えましょう

Excelなどの表計算ソフトを用いれば、表の形で入力した統計データをクリックひとつで グラフ に変換できます。表9-1左に最もシンプルな例を紹介します。線の太さや色はデフォルトで決まっており、何も考えないうちにこのようなカラフルな折れ線グラフが出来上がります。これをVischeckというシミュレーションソフト(第17回で紹介)を用いてP型色覚のシミュレーションとして写してみると、表9-1右のようになります。黄緑とオレンジ、あるいは青・紫・水色の区別が難しいことがわかります。

図9-1 折れ線グラフ例①[左:Excelのテンプレートからプレーンな折れ線グラフを選択、右:P型色覚のシミュレーション(Vischeck使用)]

 

そこで、表をグラフに変換する際に、プレーンな折れ線グラフではなく、「マーク付き折れ線グラフ」を選ぶと、図9-2のようになります。少し煩雑になりますが、こうすれば、すこし時間をかければ凡例と線を照合することができます。ワンクリックで差をつけるためには、是非この「マーク付き折れ線グラフ」を選びましょう!

図9-2 折れ線グラフ例②[左:Excelのテンプレートから「マーカー付き折れ線グラフ」を選択、右:P型色覚のシミュレーション(Vischeck使用)]

 

マーク付き折れ線グラフは有効ですが、線数が多い場合は照合に時間がかかります。もう一手間加える余裕がある場合は、データ系列ごとの書式設定で、線の種類(実線/点線)を選びましょう。さらに、凡例との照合をしなくてもいいように、凡例をなくし、テキストボックスを使って系列名を線の近くに直接記載しましょう。このようにすると、図9-3左のようになります。図9-3右のP型色覚のシミュレーションの通り、色の区別がつきにくくてもグラフの情報が一見してわかるようになります。

図9-3 折れ線グラフ例③[左:Excelのテンプレートから「マーカー付き折れ線グラフ」を選択後、適宜加工を追加、右:P型色覚のシミュレーション(Vischeck使用)]

 

  • 棒グラフ・円グラフ – 塗りつぶしに「地模様」を入れましょう

 

棒グラフ、円グラフについても同様に、色の情報をなるべく形の情報に置き換え、凡例は使わず、直接指し示すことがポイントです。図9-4にExcelのワンクリックで選べるプレーンな横棒グラフを示します。系列データごとに、書式設定の[塗りつぶし]のなかの[パターン]から斜線、ドットなどの地模様を選んで入れ、凡例をなくして直接指し示すと、多様な色覚の人々に見やすい棒グラフができます(図9-5)。地模様を入れることを「ハッチング」と言います。

図9-4 棒グラフ例① Excelのテンプレートからプレーンな横棒グラフを選択

 

図9-5 棒グラフ例② Excelのテンプレートからプレーンな横棒グラフを選択後に適宜加工

 

円グラフについても、プレーンなタイプ(図9-6)を選択した上で、「書式設定」で系列データの境目にフチ取りの線を入れ、凡例をなくして直接指し示すと多様な色覚の人々に見やすい棒グラフができます(図9-7)

図9-6 円グラフ例① Excelのテンプレートからプレーンな円グラフを選択

図9-7 円グラフ例② Excelのテンプレートからプレーンな円グラフを選択後に適宜加工

 

  • 白黒コピーに耐えられることを目安に!

 

このようにほんの一手間加えることで、一般色覚型の人にとっても、より見やすい グラフ ができます。また、色にのみ頼らない表現をするということは、白黒コピーに耐えるということです。PowerPointのスライドを配布資料用に印刷して白黒コピーをしたら、カラー部分の意味がわからなくなったという経験はありませんか?
ここに紹介したような手法でグラフを作成すれば、そのような問題が生じません。今回紹介したグラフ作成のコツを、プレゼンテーションのみならず論文作成にも生かしましょう。論文審査において有利ですし、より多くの読者に情報が正しく伝わります。白黒コピーに耐えることを目安として、ユニバーサルな学術発表をめざしましょう。


参考資料:
カラーユニバーサルデザイン機構(2009)『カラーユニバーサルデザイン』ハート出版
岡部正隆、伊藤啓(2005)医学生物学者向き 色盲の人にもわかるバリアフリープレゼンテーション法
岡部正隆、伊藤啓(2002)色覚の多様性と色覚バリアフリーなプレゼンテーション 第3回すべての人に見やすくするためには、どのように配慮すればよいか. 細胞工学21(9)1080-1104

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菊田量三色覚バリアフリー - 発表資料作成のポイント色覚 バリアフリー スライド 3つのポイントカラーユニバーサルデザイン スマホで色覚シミュレーション Recent comment authors
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カラーユニバーサルデザイン スマホで色覚シミュレーション

[…] シミュレータは色覚の多様性について理解するのに役立つと同時に、すぐに実践に役立てることができます。C型の人が、自分の作ったプレゼンテーションスライドにカメラを向ければ、P型、D型の人にとってどの部分が見分けにくいかがわかります。強調したはずの部分がP型やD型の人から見ればまったく目立っていなかったり、重要な色分けが意味をなしていないことなどに気づくかもしれません。この後の第9回で、どの色覚型の人にも見やすいグラフの作成方法などを紹介しますので、スライド作成後のチェックツールとして活用できます。ここで紹介したスマートフォンのアプリケーションのほかにも、パソコンにインストールして画像そのものを色変換してチェックするツールもありますので(第17回でご紹介します)、さらに興味のある人は試してみましょう。 […]

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色覚 バリアフリー スライド 3つのポイント

[…] まず1つは、「この緑色の部分が○○です」と言いながらポインターなどのツールでもその部分を指し示したり、「緑色の小さな丸の部分が○○です」などと、色以外の情報も加えて言うことです。もう1つは、最初から多様な色覚の人々に情報を伝えることを想定して、色のみに頼らない表現方法でスライドを作成することです。CUDに配慮したグラフの作り方については第9回で紹介します。     […]

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色覚バリアフリー - 発表資料作成のポイント

[…] ・明るい黄色は白内障では白と混同するので使わない ・白黒でコピーしても内容を識別できるか確認する […]

菊田量三
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菊田量三

嬉しかったです。本当にありがとうございました、あれから、色々と勉強させて頂きました。こうしたコメントを、載せていただくこともでき、この場所も、今まで知らず、驚いて、いまかきました。まだまだ、知らないことがありすぎますが、83歳になっても、欲張りですね。今年の本展には、(第一美術展)深い森の中に、陽がさしこみその分さんしてる様を、F100号。に描きました。題名は「色覚よりの旅出」です。余分ですが、奨励賞でした。