第3回 色の情報に頼りすぎていませんか?

国際学会でのプレゼンを成功させるには、聞き手を引きこむ英語スピーチに加え、見やすいスライド作りも重要な鍵となります。より多くの人に伝わりやすく・わかりやすい色覚バリアフリー なスライドを作るために覚えておきたい「カラーユニバーサルデザイン」について迫る連載シリーズです。


日本人男性の20人に1人を占めるP型またはD型の色覚タイプの人は、赤と緑など特定の組み合わせの色を識別しにくい特性を持ちます。赤が目立つとも限りません。そのために日常生活のさまざまな場面で困ることがあります。

    1. 色覚タイプによる色の見え方の違い

 

図3-1 色覚タイプによる色の見え方の違い

で紹介した色覚タイプのなかから、代表的なC型、P型、D型の色の見え方の違いを図3-1に示します。このように、P型、D型の人にとって赤は決して目立つ色ではなく、赤と緑、淡い水色とピンクと灰色、黄色と黄緑、紫と青などが区別しにくいことがわかります(シミュレーションソフトで作成しているため実際の色覚を再現したものではありません)。

 

    1. 日常生活で困ること

情報のカラー化の進む昨今、その色使いのほとんどは、C型の人(のみ)にとってわかりやすいものとなっています。色のあふれる日常生活において色弱者が困る場面はたくさんありますが、ほんの一例を紹介します。通勤・通学においては、地図、路線図表示(図3-2)、交通標識、渋滞表示、カーナビなどにおいて必要な情報が受け取れない場合があります。最近ではCUDの取り組みにより改善された表示もあります。職場・学校においてはカレンダー(図3-3)、電話の表示ランプ、ウェブサイト、黒板、名刺、PowerPointによるプレゼンテーションなどで必要な情報が受け取れない場合があります。家庭では、テレビのリモコン、オーディオ機器のスタンバイ状態の表示(図3-4)、テレビにおける気象情報、サッカーのPK戦の結果表示(図3-5)から衣服の色まで、さまざまな例を挙げることができますが、改善された製品やサービスも多くあります。最近の津波警報は色弱者にも色の区別がわかるように配慮されています(http://jfly.iam.u-tokyo.ac.jp/color/tsunami/)。

図3-2 地下鉄の路線図[左:色弱者色覚のシミュレーション、右:C型色覚]

図3-3 カレンダー[左:P型色覚シミュレーション、右:C型色覚]

図3-4 オーディオ機器のスタンバイ表示[左:色弱者色覚のシミュレーション、右:C型色覚]

図3-5 サッカーのPK戦結果表示[左:色弱者色覚のシミュレーション、右:C型色覚]

  • 色を言葉で指し示すとわからない

 

「あそこの赤いのをとって」「ここの緑の線は・・」など、色のある物を指し示すときに色名で言うと、色弱者には何を指しているかわからない場合が非常に多くあります。「3番目のをとって」「ここの緑の点線は・・」など、色以外の情報に置き換えるか、形の情報を補うなどすれば伝わりやすくなりますが、色覚の多様性について十分に認識していないと、そのような配慮をすることができません。C型の人がP型、D型、T型の人の色の見分けにくさを手軽にシミュレーションできるスマートフォン用のアプリケーションを次の第4回で紹介しますので、色覚の多様性を是非体験してみてください。


※上記の写真はすべてCUDOおよびハート出版より許可を得て転載
参考資料:
カラーユニバーサルデザイン機構(2009)『カラーユニバーサルデザイン』ハート出版
岡部正隆、伊藤啓(2002)色覚の多様性と色覚バリアフリーなプレゼンテーション 第2回 色覚が変化すると、どのように色が見えるのか. 細胞工学21(8)909-930(
東京大学 分子細胞生物学研究所 脳神経回路研究分野研究室ウェブサイト内 ヒトの色覚 研究報告

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