AMAスタイルガイドの概要
AMAスタイルガイドとは
米国医師会(AMA)は、医学の発展から教育資金の調達まで、医学関係者をあらゆる側面から支援するため、1847年に設立されました。1883年に創刊された米国医師会雑誌(The Journal of the American Medical Association:JAMA)は、世界でもっとも広く読まれている医学雑誌であり、JAMAも含めて計13の医学専門誌が発刊されています。『AMA Manual of Style』(以下、AMAスタイル)は、1962年にJAMAと特定の学術雑誌(ジャーナル)を編集するスタッフ向けに作成された68ページの内部文書でしたが、9回の改訂を経て2007年に発行された第10版では1032ページにまで発展しました。現在は2020年3月に改訂された第11版が提供されています。
医学論文の執筆以外にも役立つAMAスタイル
AMAスタイルは、医学論文だけでなく、医療、保健、その他のライフサイエンス分野まで医療系論文の執筆・出版に携わる人に役立つスタイルガイドです。科学系ジャーナルの多くは著者向けのガイドライン(投稿規定)を設けていますが、AMAスタイルを推奨しているジャーナルも少なくありません。特に引用や参考文献リストの書き方はAMAスタイルに準じた形を取っているジャーナルもあるので、投稿先ジャーナルの投稿規定と合わせて確認しておくとよいでしょう。
AMAスタイルには、医療、その他のライフサイエンス関連の投稿論文を書く際に使用する句読点、大文字/小文字の区別、文法といった項目に関するガイドラインが記されてます。こうしたガイドラインは、著者や研究者、所属団体・機関、医療編集者や出版社、ライター、科学研究系ニュースメディアにとっても、日々直面する問題に対処するために役立ちます。
AMAスタイル第11版の概要
AMAマニュアル第11版には、次の内容が網羅されています。
1. 倫理的・法的問題
2. オーサーシップ
3. 利益相反
4. 科学における不正行為
5. 知的財産
6. 出版用の投稿原稿の準備
AMAによる書式ガイドライン
論文の体裁を整える際は、必ず所属大学・機関のガイドライン、または投稿先ジャーナルの投稿規定を参照してください。書式が指定されていない場合は、AMAスタイルなどに記載されている一般的な書式指定に従いましょう。
• テキストを囲む4辺全ての余白を端から1インチ(25.4mm)で配置する。
• テキストは左揃えとし、段組設定にはしない。
• 本文はダブルスペースで記載する。
• 要約、注釈、タイトルと見出し、引用ブロック、図表、参考文献はシングルスペースで記載する。
• フォントはTimes New Roman 、サイズは12ptとする。
• 新しいパラグラフの冒頭にはインデント0.5インチを付ける。
• タイトルページを含むすべてのページの右上隅にページ番号を付ける。
• 文書のタイトルをページの左上隅に記載する。
• 原稿、課題、または著書のタイトルページには、中央揃えで以下を記入する。
o タイトル
o 作成者の氏名
o 指導教官の氏名
o 専攻コース名(課題の場合)
o 提出日
• 論文または課題のガイドラインで、タイトルページを設けない場合には上と同じ情報を最初のページの右隅に記入する。
AMAの引用に関するガイドライン
AMAスタイルでは、出典情報を2つのやり方で引用できます:
1. 本文中の引用(上付き番号)
2. 参考文献ページ
本文中の引用(上付き番号)
AMAスタイルでは本文中に引用した文献の著者名の後に上付き番号を付けます。著者名や発行年を括弧書きで記載することはしません。引用箇所に付けた番号順に参考文献セクションにリストします。
Johnson et al.2 provided the results of their studies in 1975.
本文中に同じ参考文献を複数回引用した場合は、同じ番号を使用します。参考文献セクションには次のように詳細を記載します。
2. Johnson AB, Smith CD, Houser EF. Shifts in alcohol consumption in pre-teens. Am J Clin Nutr. 1975;83(3):600–650.
AMAスタイルでは、著者の名前はイニシャルで記し、句読点でつなぎ、イタリック体で書くのが特徴です。ジャーナルの名称はPubMed のジャーナルデータベース(NLM Catalog)に準じて省略形で記載します。
参考文献リストの書き方
- 参考文献リストは、原稿、課題、書籍のいずれにおいても最後に、個別のページを設ける。
- 参考文献リストには、本文中で引用した全ての参考文献情報を一覧で示す。逆に言えば、参考文献リストに掲載した全ての文献は本文中に記載されているよう、相互の整合性を確認する。
- 参考文献リストは、左揃えで記載する。
- 番号付のリストをダブルスペースで作成する。各数字の後にはピリオドを付ける。
- 参考文献は、論文の本文中で引用された順番に番号順(引用番号の1から順)に記す。
- 参考文献ごとに改行しても行間をあけない。
さまざまな引用元の記載方法
学術論文を引用する場合
印刷ジャーナルの引用書式
Author AA. Title of article: lower case letter for subtitle. Abbreviated Title of Journal. Year; Volume number (Issue number): page numbers.
著者名AA. 論文タイトル: サブタイトルは小文字表記. ジャーナルタイトル(省略表記). 発行年; 巻数 (発行番号): ページ番号.
オンラインジャーナル掲載論文の引用書式
Author AA, Author BB, Author CC. Title of article: lower case letter for subtitle. Abbreviated Title of Journal. Year; Volume number (Issue number): page numbers. Date published. Date accessed [if using URL]. DOI or URL
著者名AA, 著者名BB, 著者名CC. 論文タイトル: サブタイトルについては小文字表記. ジャーナルタイトル(省略表記). 発行年; 巻数 (発行番号): ページ番号. 出版日. アクセス日 [URLを使用した場合]. DOIまたはURL
- ほとんどのジャーナルタイトルの省略形は、NLM Catalog Journal Searchで検索できます。
- AMAは、確認できる場合にはDOI(デジタルオブジェクト識別子)を記載することを推奨しています。DOIがあれば、長期にわたって継続的に該当の論文にアクセスすることができます。
学術書籍からの引用の場合
印刷書籍の引用書式
Author AA, Author BB, Author CC. Title of Book: Subtitle of Book. Edition. Name of publisher; Year of publication.
著者名AA, 著者名BB, 著者名CC. 書名: サブタイトル. 版. 出版社; 出版年.
電子書籍の引用書式
Author AA, Author BB, Author CC. Title of Book: Subtitle of Book. Name of publisher; Year of publication. Date accessed. URL
著者名AA, 著者名BB, 著者名CC. 書名: サブタイトル. 出版社; 出版年. アクセス日. URL
他のスタイルガイドとの違い
1. APAスタイル
アメリカ心理学会(APA)が発行している『Publication Manual of the American Psychological Association(APAスタイル)』は、行動学や社会科学の分野で論文を書く人に使われている標準的なフォーマットです。APAスタイルによる本文中の引用では以下のように著者名と日付を書きます。
After the intervention, children increased in the number of books read per week (Smith & Wexwood, 2010).
Smith and Wexwood (2010) reported that after the intervention, children increased in the number of books read per week.
著者の氏名と出版日を文の最後に括弧書きで記します。2つ目の文例は、著者名が文中で使用されているので、出版日のみを括弧書きで表記してあります。1つ目の引用箇所の例にはアンパサンド(&)が使用されていますが、本文中では2つ目の文例のように&を使用しません。
参考文献は、著者の名前のアルファベット順に並べ、その後に論文タイトルなどの情報を記します。
Wegener, D. T., & Petty, R. E. (1994). Mood management across affective states: The hedonic contingency hypothesis. Journal of Personality and Social Psychology, 66, 1034-1048.
氏名の順序や句読点の使い方がAPAスタイルとAMAスタイルとでは異なっています。論文タイトルは頭文字(イニシャルキャップ)を使いません。ジャーナル名はイタリック体になっていますが、省略表記しません。
2. MLAスタイル
米国現代語学文学協会(MLA)が発行しているMLA Style(MLAスタイル)は、リベラルアーツ(一般教養課程)や人文学系の論文作成に用いられています。MLAスタイルでは、本文中の引用箇所に著者の氏名とページ番号を記載します。
Wordsworth stated that Romantic poetry was marked by a “spontaneous overflow of powerful feelings” (263).
Romantic poetry is characterized by the “spontaneous overflow of powerful feelings” (Wordsworth 263).
MLAスタイルの参考文献リスト(英語での表記がReferenceではなくWorks citedとなることにも注意)には、著者の氏名をアルファベット順に並べますが、ファーストネーム(とミドルネームまたはミドルネームのイニシャル)も短縮せずに表記します。
Poniewozik, James. “TV Makes a Too-Close Call.” Time, 20 Nov. 2000, pp. 70-71.
論文タイトルの記載(大文字の利用)とクオーテーションマーク(“)で囲まれる点と、日付とページ番号の書き方にも違いがあることに注目してください。
APAスタイルのMLAスタイルのいずれにおいても、電子媒体についてはDOIかURLにかかわらず同じ書式が用いられます。
今回紹介したAMAスタイルは、医学研究論文を執筆する際に推奨されるスタイルではありますが、医学雑誌『JAMA』の投稿規定なので、実際に論文を執筆する前には自分が投稿したいジャーナル指定の書式も確認してください。AMAスタイルには多数の例文が掲載されていますし、『AMA Manual of Style』のホームページにはStyle Quizzes(練習問題)があるので、スタイルガイドの内容を理解できたか確認することもできます。是非、参考にしてみてください。
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