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失敗から学ぶ-論文却下を招く15のミス

研究者である以上、誰もが自分の研究論文が高インパクトな学術誌(ジャーナル)に掲載されることを目指していることでしょう。しかし、論文がジャーナルに掲載されるというのは簡単なことではなく、却下(リジェクト)されることも少なくありません。論文が却下されるのは辛くても、その経験は次に原稿が受理(アクセプト)されるためのコツを学ぶチャンスとなります。そこで今回は、「失敗から学ぶ」として、論文却下を招く15のミスを紹介します。

1.誤解を招く恐れのあるタイトル

見当違いなタイトルは論文の即時却下につながります。タイトルは、自分の論文テーマを正確に表すものであることが大切です。研究範囲に収まっていない内容を想起させるようなタイトルを付けるのは問題です。

2.整合性の取れていない要旨(アブストラクト)

要旨(アブストラクト)が論文に書かれた内容と整合性が取れていない場合もリジェクト要因となります。要旨において紹介する研究結果や結論が、本文で述べられている内容ときちんと一致し、的確にまとめられている必要があります。

3.不十分な序論(イントロダクション)

序論の内容が不十分であると、論文本文に読み進む前の段階でジャーナル掲載に値せずと見なされかねません。序論には、研究課題と仮説、研究の目的が分かりやすく述べられていなければなりません。序論は、上手に自分の研究の価値を伝え、本文につなげることが重要です。

4.研究方法(メソッド)の不正引用

複数の論文を執筆していると、つい同じ研究方法(メソッド)を複数の論文で反復して記述しがちです。しかし、たとえ自分の論文に書いたメソッドであっても、過去に出版された論文に記載された内容や研究方法を原典の引用なしに掲載した場合には、自己盗用とみなされます。データの収集方法や解析方法についても同様です。さらに、研究方法は常に状況を踏まえた内容でなくてはなりません。新しい技術や技法が現れた時点で、今までの方法は時代遅れとみなされます。

5.結果の記載の過不足

結果には、研究の結果のみを簡潔かつ明確に記さねばなりません。ジャーナルから指定された字数制限に気を取られるあまり、重要な情報を取りこぼしてしまったり、反対に説明が過剰になったりすると却下される原因となります。

6.非論理的な内容

当然ですが、議論が非論理的な論文は、容赦なく却下の対象となります。研究テーマに関連がない、結果に焦点を合わせないまま広がりすぎている、見解が偏っている(バイアス)、他の研究者による重要な発見を踏まえていない、研究の限界を見落としている――といった考察は、非論理的であると見なされます。

7. 投稿先ジャーナルの選択ミス

論文の内容が、ジャーナルの目的と研究領域(Scope)に一致していない場合、投稿原稿が受け入れられることはありません。ジャーナルによって、投稿論文への要求は異なるため、投稿先ジャーナルの「Aims and Scope」を確認し、自分の研究分野や内容に合った投稿先を選ぶ必要があります。

8. 剽窃・盗用

言うまでもなく剽窃・盗用や自己盗用(自分の過去の論文の無断利用)は重大な倫理違反であり、リジェクトの対象となります。たとえ文章を書き換えたとしても、引用元を明らかにしなくてはなりません。

9. 研究内容に斬新さと独自性がない

新規の研究論文として発表されるには、斬新かつ独自性のある研究である必要があります。

10. 誇張や改ざんされた結果

結果を誇張したとしても、大抵は査読過程で見つかりリジェクトとなります。結果の誇張や改ざん(Falsification)はすべきではありません。

11. 研究倫理違反

論文執筆に際して学術研究倫理は守らねばなりません。論文著者は自分の所属する研究分野の倫理規定を順守する責任を有しており、これに違反した論文はリジェクトとなります。

12. ジャーナルの投稿規程違反

ジャーナル所定の投稿規程が守られていない論文は、出版までに時間を要したり、ジャーナル編集者により却下されたりする可能性が高まります。

13.技術的な不備

論文の内容に技術的な不備が認められた場合、これもリジェクトの対象となります。例えば、要旨と本文の不一致や、結果と考察の関連性の薄さなどが技術的な不備と見なされます。

14. 研究デザインにおけるミス

研究デザインのミスもリジェクトにつながる問題です。これには、不十分な問題提起、不適切な方法、サンプルの選出ミス、不適切な統計作業なども加味されます。

15. 文章力の低さ

内容と同様に重要なのは文章力です。文章力が乏しい、つまり語彙、文法、言葉の選択、時制、スタイルなどに問題のある文章で書かれた論文は、リジェクトされる可能性が高くなります。

いかがでしたでしょうか。今回取り上げた15のミスは論文却下の主な原因となっているものですが、ジャーナルの査読者・編集者はこれら以外のさまざまな角度から論文を評価し、掲載可否を判断しています。このほかにも、たまたま同じテーマを扱う論文が2本同時に提出された、あるいは一度に掲載数を上回る大量の論文が投稿されたなど、自分ではどうにもならない理由で却下されることや、査読の問題やジャーナル側の事情によって却下となることもあるでしょう。

しかし、高インパクトジャーナルへの掲載を目指す以上は、ミスをなくし、出版の基準を十分に満たしているといえるレベルまで自分の論文レベルを引き上げ、いわば「人事を尽くして天命を待つ」姿勢が重要です。


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