学位論文(卒業論文)の計画書の書き方

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論文計画書の作成は、学位取得を目指す学生にとって重要な作業です。研究で一定の成果を出し、論文執筆というステップに進む準備ができた段階で計画書を作成します。論文自体の執筆は、長く大変な作業ですが、計画書はその道しるべとなります。

優れた論文計画書を作成するための鍵は何でしょうか?この記事では、指導教官に納得してもらえる論文計画書を作成するため、その構成や内容について、具体例を交えて説明します。

論文計画書とは

学位論文の計画書はロードマップです。自分の書こうとしている論文テーマの背景を示し、そのテーマに関する先行研究について概説します。また自分の論文ステートメント(Thesis Statement)や仮説を述べ、それをどう証明していくかを説明します。論文計画書の多くの部分は、選んだ研究課題の重要性や、それがその分野でどう位置づけられるのかの説明に費やされます。

論文計画書を作成する理由

研究課題を選んだだけでは、論文執筆は始められません。論文のアイデアがいくら素晴らしくても、実際に文献を読み方法を練り始めた時点で、適切なリソースがないということに気づくこともあるでしょう。最初に考えていたリサーチ・クエスチョンが、その文献を読み込むうちに実は意味がないことに気づくこともあります。自分が書こうと思っていたテーマで、すでに誰かが論文を書いていたなどの場合です。また、同じテーマの別の側面に関心が移り、論文の焦点を変更することもあるでしょう。論文の作成とはアイデアを洗練させていくプロセスであり、論文計画書は、リサーチ・クエスチョンと仮説を洗練する最初のステップなのです。

計画書は、自分のアイデアを指導教官に提示し、自分の提案したプロジェクトがどれだけ現実的かというフィードバックを受けるための叩き台にもなります。指導教官は自らの経験に基づき論文の指導を行いますが、研究論文についての継続的な対話の第一歩が計画書なのです。

計画書を実際に書き始める前に

計画書を書き始める前に、いくつか準備をする必要があります

  • まずは論文テーマの決定です。テーマを決めるには、できるだけ多くの文献に触れるのが良いでしょう
  • テーマが決まれば次は下調べです

この下調べの目的は、自分のテーマについてどのような文献が存在するかを把握することです。綿密な調査は必要ありません。状況を把握し、そのテーマについて論文を成立させるだけのリソースがあるかを見極めます。読んだ資料や読む予定の資料をリストアップしておきましょう。

論文計画書で示すべき、以下のポイントを念頭に置いて、資料の収集と執筆準備を行ってください。:

  • リサーチ・クエスチョンは何か?
  • そのリサーチ・クエスチョンは解明したり理解したりするだけの意味があるのか
  • その問題に取り組むことは重要なのか
  • その答えをどうやって見出すのか
  • なぜそのやり方で答えを見出すのか
  • どのような結果が予測されるのか

文献リストができ、上の質問に対する答えの大体の見当がついた段階で、論文の計画書を書き始めます。

論文計画書の構成

論文の計画書のフォーマットは単一ではなく、長さや文字数、セクションなどはさまざまです。書き始める前に、必ず大学や所属機関のガイドラインをチェックしておきましょう。一般的に、計画書には、以下の項目のほとんど、またはすべてが含まれます。

  1. 論文タイトル
  2. リサーチ・クエスチョン
  3. 背景と先行研究
  4. リサーチ・クエスチョンの重要性
  5. 文献レビュー
  6. 理論的フレームワーク/研究方法
  7. 研究スケジュール
  8. 参考文献

テーマによっては、倫理面での配慮についてのセクションも必要になります。また、研究の範囲と限界の両方を詳述するセクションを求める研究機関もあります。これらのセクションの順序も決まっているわけではありませんが、タイトルは最初に、参考文献は最後に記載します。論理的な流れがあり所属機関のガイドラインに従っていれば問題ありません。

論文計画書を書き始める

まずは計画書の最初の部分について詳しく見ていきますが、残りの部分についても具体的にどのようなもので、例を挙げながら簡単に見てみましょう。

タイトル

何についての研究か

できるだけ簡潔にします。1段落もあるようなタイトルの論文は敬遠されます。また、漠然としたタイトルにしても誰も読みたがらないでしょう。

「なぜ植物性の餌のみを猫に与えると悪いのか」というタイトルは、要点を押さえ情報を伝えるものです。

「肉食傾向、エシカルな消費:飼い猫へ与える餌で地球を救えるか? 」ならば、ちょっと野暮ったいでしょうか。

「肉食とヴィーガン」では、非常に曖昧で、読者がその論文が食の選択について何を論じようとしているのか全く分かりません。

リサーチ・クエスチョン

何を研究しようとしているのか

多くの場合、ここに仮説や論文の内容を書きます。読者を惹きつける工夫をしてください。論文だからといって魅力のない記述に徹する必要はありません。

「ペットとして飼われる猫は通常肉食だが、野菜を食べるのかと疑問に思う人もいる」では、なぜ著者が猫にニンジンを与えようと考えているのか読み手に伝わりません。

「猫や犬が食べる肉は、急速に温暖化している地球に毎日50,000トンのCO2を加えている。猫に植物性の餌を与えることで、ペットを飼うことによる気候変動の影響を減らすことはできないか」という記述であれば、研究を気候変動という大きな問題に結びつけているため読み手の関心を引きやすいでしょう。

背景と先行研究

課題の背景には何があるのか

どのようにして現在の状況に至ったのか

そのテーマについて何も知らない読み手にも伝わるよう、研究の背景を、簡潔で説得力ある文章で書きます。

論文の導入部では、自分が何を研究したいのか、なぜ調査・研究が必要とされる課題なのかを明確に記述します。

深く掘り下げる。先行研究との関連における位置づけ

リサーチ・クエスチョンを定義し、問題の背景情報を説明した後は、同じ分野の先行研究との関連を明確化する必要があります。具体的に何を説明すれば良いかを見ていきましょう。

リサーチ・クエスチョンの重要性

なぜこの問題を研究することが重要なのか

なぜ注目に値するのか

専門分野のどのようなリサーチギャップに対処しているのか、どのようなニーズを満たしているのか

重要な研究とは、必ずしも革命的な研究ではありません。他の人の研究を元にしたものでも、身近な問題を新しい角度から見たものでも、価値ある研究は行えます。

文献レビュー

他の研究者による研究で、自分の研究に関連するものはあるか

論文計画書の段階で、包括的なレビューを行う必要はありません。選んだ論文テーマに関しして行われた主要な研究を適度に理解し、その中で自分の研究がどう位置づけられるかを示すことができればよいのです。

計画書の中で、この点を明確に示すことが理想です。

「人間の食生活と、それがどのように工場畜産の需要を促進しているかについては多くの研究がなされているが、ペットの飼育が世界の食肉消費をどう促進しているかについては、ほとんど検討されていない」

理論的フレームワーク/方法

どのようにして研究を進めようと考えているか

実験を行うのか

インタビューを行うのか

何を行う予定か、できるだけ詳しく説明します。例えば、飼い猫に1週間肉を食べさせないなど、倫理的な配慮が必要な研究を行う場合、計画書のこの部分で、実験をどうやって倫理的に行うのかを説明します。

計画書のロードマップ作成

論文の計画書の実質的な部分を書き終えたところで、計画書の残り2つの構成要素、研究スケジュールと参考文献についてみていきます。その構成要素は何でしょうか。     

研究スケジュール

多くの研究機関では、論文計画書を提出する際、予定スケジュールの提示が求められます。指導教官は、学生がプロジェクトを計画的に完了させられるかを知る必要があります。それが、研究の他の要素と同じく重要なことだからです。論文計画書の役割のひとつは、利用できるリソースを使い限られた時間内にプロジェクトを計画的に実行できることを教育機関や指導教官に示すことです。

参考文献

論文の本体とは違い、論文計画書の参考文献欄は、既読文献だけでなく、今後読む予定の文献も合わせたリストとなります。現実的なスケジュール感でリストを考えます。たとえば、半年間で200冊の本を読むのはまず無理でしょう。ほとんどの場合、20から30の参考文献がリストアップされますが、所属機関の要件を確認した上で、十分な数の参考文献を挙げましょう。

参考文献一覧は、いい加減なやり方で作成すべきではありません。論文は一大プロジェクトですから、最初の段階から必要な文献の管理・引用を進めていくべきです。計画書作成の時点で優れた文献管理ソフトを使うことが、論文本体の執筆にも非常に役立つでしょう。どの引用スタイルを使うかもあらかじめ確認しておきましょう。論文執筆の際に引用ジェネレーターなどのツールを使って参考文献を作成するプロセスは、最初の段階から引用スタイルと参考文献を把握していれば、より迅速になります。

優れた論文を書くためのヒントや、論文の校正・校閲サービスに関する情報は、このサイトをご覧ください。

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