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h指数の提案者が問題提起 !?

学術論文の影響度を測る指標にはインパクトファクター(IF)や h指数 (h-index)などが知られています。h指数は物理学者のJ. E. Hirsch氏が「個々の科学研究成果を定量化する指標」として提案したもので、研究者の研究成果を定量化する指標のひとつとして広く利用されています。しかし、複数分野に及ぶ研究を行っている研究者の影響力を考慮できないなど、評価指標としては不十分であるとの意見も出ています。

h指数の意味

例えば、ある研究者のh指数がh=10と示された場合、この研究者が発表した論文の中で被引用数(引用された数)が10以上ある論文が少なくとも10本以上あることを意味しています。一般的にはh指数が高ければ、被引用数の高い論文を多数発表しているということになります。h指数の算出は被引用数の正確な調査に基づいて行われるべきものであるため、被引用数の数値が正しくない場合にはh指数の正確性も怪しくなってしまいます。また、共著者が多数いる場合の考慮が欠けていたり、分野によっては引用数に差があったりするなど、すべての分野、あらゆる研究者の評価指標としては適切ではないといったいくつかの懸念も指摘されています。そのため、h指数はあくまでも研究成果を定量的に評価する指標のひとつとして利用されています。h指数は学術雑誌(ジャーナル)を評価する指標としても使われていますが、これはGoogle Scholar上で被引用数を算出した「Google Scholar Metrics 」として掲載されているので参考にしてみてください。

h指数ではわからない5つのこと

上述のようにh指数は学術界で広く使われている指標のひとつですが、h指数の問題点については学術界で議論されてきました。査読を迅速化かつ効率化させることで認知度を高める査読登録サービスであるPublons が「h指数ではわからない5つのこと 」と称する記事を掲載しているので紹介します。h指数ではわからないこととは以下の5つです。

  1. 研究者のキャリアがどの段階にあるか
    評価対象の研究者が新米研究者か、既に多数の論文を発表しているベテラン研究者なのかh指数だけ見たのではわかりません。
  2. 発表した革新的な論文における研究者の立場(該当研究者が筆頭著者なのか共著者のひとりなのか)
    h指数は発表された論文に名前があるか否かを見ているため、多くの論文に共著者として名前を連ねている著名な研究者の評価をゆがめることになりかねません。
  3. 引用された理由がポジティブなものかネガティブなものか
    論文の内容が誤ったものであることを証明するためであっても被引用数が高くなることはあります。
  4. 論文を投稿した学術ジャーナルのインパクトファクター(IF)
    IFが絶対的な評価手段ではないとは言え、h指数は論文の被引用数を考慮するのみであり、IFが異なる学術ジャーナルによる論文の被引用数への影響は考慮されていません。
  5. 学術コミュニティにおける貢献度合い
    論文を学術ジャーナルに発表すること以外、科学研究を世の中に広めて理解を促すためにどのようなコミュニケーションを行っているか、後続の研究者育成に努めているか、査読に参加しているかなど、学術コミュニティにどのような貢献をしているかについては考慮されません。

h指数が評価として絶対ではないことの一例ですが、1996年にノーベル化学賞を受賞した英国サセックス大学のハロルド(ハリー)・クロトー(Harry Kroto)教授 のh指数は264位でした。というのは、教授が1985年に発表した画期的な1本の論文がノーベル賞受賞につながったからです。この事実からも、h指数が科学的な影響の大きさを判断する基準として万能ではないことが見えます。

提案者もh指数の問題点を指摘

さらにh指数の提案者であるHirsch氏もこの指標の問題点を指摘していることが2020年3月24日のnature index の記事に示されています。Hirsch氏は、研究者が公表した論文の数とその論文の被引用数から算出する科学的成果の評価指標として2005年にこの指標を提案したとき、これほど学術界に広がるとは思っていなかったと言っています。Hirsch氏はh指数が科学研究の客観的な評価指標のひとつとして利用されつつも、その使用については賛否両論があることを認識した上で、h指数が高いというだけで間違った評価を下してしまったり、意図せず深刻で否定的な判断につながってしまったりする可能性があると述べています。被引用数の高い論文に対してその信頼性に疑問を呈することは難しくなります。h指数を高めようとするあまり、話題性の高い研究題材を選択し、次々と論文を発表することに集中してしまうことも懸念されます。また、Hirsch氏が自身の研究における発表論文について述べているように、h指数は主流から外れた(マイナーな)分野における研究を考慮していません。Hirsch氏は30年以上を超伝導の研究に費やしており、出版論文の約半分を超電導に関する論文が占めています。ところが、これらの論文は彼の引用数全体の10%にも至らない一方、引用数が多いのはh指数に関する論文です。このようなh指数による見解とは異なり、彼自身は他のどの研究よりも超伝導の研究が重要であると考えており、h指数だけで研究の意義を測定することはできないとしています。h指数からだけでは、超電導研究における彼の貢献度は見えないのです。自身のことを踏まえ、Hirsch氏はh指数だけに基づいて研究者を評価してしまう危険性として、不適切な雇用や、重要な研究を行っている研究者への助成金支給に悪影響を及ぼす可能性が否定できないことから、研究者の評価にあたってはキャリアのさまざまな面を注意深く考慮するように促しています。
h指数の提案者自身による指摘および指南が意味するものは大きいものです。


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