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大文字・小文字(1)

大文字と小文字の使い分け方について、2回に分けて説明します。

1. 固有名詞

1.1 大小文字の使い分け
原則として固有名詞の最初の1文字は大文字になります。また、固有名詞が2つ以上の単語を含む場合は(冠詞、接続詞、前置詞を除いて*)その各単語の先頭文字を大文字にします。このルールに関して最も注意したいことは、固有名詞が一般的な単語を含むこともしばしばあり、その単語の先頭文字も大文字になるという点です。たとえば以下の固有名詞がそのような例として挙げられます。
*原則として冠詞、接続詞、前置詞はすべて小文字で表記されますが、それが固有名詞の先頭に置かれる場合は語頭が大文字になることもあります。「The Oxford English Dictionary」はその有名な例です(関連した解説を第4節で行います)。

Pacific Ocean, United Nations, Lake Superior, Black Forest, Kyoto University, Center for Advanced Study, National Institute of Health

これらの固有名詞は一般的な(つまり、個々で見た場合固有名詞ではない)単語を含み、それらの単語の最初の1文字もそれぞれ大文字になっているという点に注目してください。
なお、ハイフンを含む固有名詞の場合は2つのケースに分かれます。ハイフンによって結ばれるものが独立した単語どうしであれば(たとえば「Cedars-Sinai Medical Center」、「Three-Fifths Compromise」など)、その2語とも先頭の文字は大文字になり、そうでなければ(たとえば「Institute for Non-invasive Surgery」、「Society for Promotion of Eco-friendly Sustainable Development」など)、後ろにくる単語の先頭文字は小文字になります。

1.2 固有名詞の基準
ある名詞が固有名詞であるかないかは簡単に決められる場合(たとえば人名、地名など)もありますが、判断のつかない微妙なケースもあります。ここではその基準について説明したいと思います。
ある名詞が固有名詞と見なされる条件は、その名詞が「特定の物事を指すために作られたもの」だということです。以下の例文はそうした条件を示す具体例です。

(1a) The University of Tokyo was established in 1877.
(1b) I will be visiting your university in the fall.

(2a) The field of mathematics is very old.
(2b) The mathematics department in our university is quite large.
(2c) The Department of Mathematics is headed by a Fields Medal recipient.

(3a) Jacques Chirac was the President of France during the period 1995–2007.
(3b) Someday, I would like to be president.

(4a) Our galaxy has a diameter of approximately 100 kly.
(4b) We live in the Milky Way Galaxy

1.3 生物学的分類
生物学的分類における大小文字の使い分け方は特殊ですので、ここでそのルールを述べておきます。リンネ式分類法(Linnaean taxonomy)での分類群、つまり、ドメイン(domain)、界(kingdom)、門(phylum)、綱(class)、目(order)、科(family)、属(genus)、種(species)、亜種(subspecies)、における分類群名では、種より上のものは大文字で、種と亜種は小文字で始まります。
また、大文字・小文字の使い分けとは関係ないことですが分類群名は必ずイタリック体で書かれるということにも留意してください。

2. 固有形容詞

固有形容詞は固有名詞に由来する形容詞のことです。固有形容詞には、固有名詞が変形したもの(例えば、「Irish」、「African」、「Westernized」、「Newtonian」)と固有名詞がそのまま形容詞の働きをするもの(例えば、「the Schrödinger equation」、「Bernoulli’s principle」、「the Turing test」における「Schrödinger」、「Bernoulli’s」、「Turing」)があり、どちらのケースでも一般的に語頭の文字は大文字です。

3. 固有名詞に由来する普通名詞

固有名詞に由来する普通名詞は専門用語の中によく存在し、科学の分野には特に多く見られます。たとえば以下の名詞はすべて人名に由来します。

algorithm (Al-Khwarizmi)、Hamiltonian (William Hamilton)、bel (Alexander Graham Bell)、pasteurization (Louis Pasteur)、Celsius (Anders Celsius)、Lagrangian (Joseph Louis Lagrange)、fermion (Enrico Fermi)

ご覧のとおり、この場合大小文字の使い分けについてはルールがなく、大文字を使用するかどうかは主に慣習によって決まります。

4. 題名

題名(書名、論文のタイトル、映画のタイトル、章の見出し、など)は固有名詞の一種なので、基本的に上述のルールが適用されます 。しかし最近、特に学術ジャーナルでは論文のタイトルとセクションの見出しの先頭文字のみが大文字に、それ以外が小文字になる例もよく見受けられます。
現在はどちらの形式もよく使用されますので、どちらを選んでも、一貫性を保てば問題はありません。出版物である場合は出版社独自の書式に揃えられます。


Dr. Paquette

グレン・パケットGlenn Paquette

1993年イリノイ大学(University of Illinois at Urbana-Champaign)物理学博士課程修了。1992年に初来日し、1995年から、国際理論物理学誌Progress of Theoretical Physicsの校閲者を務める。京都大学基礎物理研究所に研究員、そして京都大学物理学GCOEに特定准教授として勤務し、京都大学の大学院生に学術英語指導を行う。著書に「科学論文の英語用法百科」。パケット先生のHPはこちらから。

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