トランプ政権、NASAの温暖化対策研究を打ち切る

トランプ政権がまた、学術界に衝撃を与えました。ホワイトハウスは、米航空宇宙局(NASA)の炭素観測システム「CMS(Carbon Monitoring System)」への資金提供を打ち切ることを決定したのです。CMSは世界の二酸化炭素(CO2)やメタンガスの排出量を衛星や航空機を使って観測・監視するシステムです。この決定は、パリ協定の重要な目標である温室効果ガス削減や、各国が進める地球温暖化対策に大きな影響をもたらすとされています。

■ トランプvs科学界

トランプ大統領は2017年1月の就任以来、学術界に影響をもたらしかねない決定をいくつか行っています。例えば、政府の諮問機関における科学者の数を減らしたり、アメリカ国立科学財団(National Science Foundation, NSF)の海外事務所を閉鎖したりしてきました。

トランプ大統領は地球温暖化に懐疑的であることを公言しており、政権の政策や予算の配分には、この見解が反映されています。その最たる例が、昨年のパリ協定からの離脱表明です。トランプ大統領はその理由について、パリ協定はアメリカ国内の石油やガス、石炭などの化石燃料産業や製造業を衰退させ、雇用を減らすから――と説明しています。そして今回は、NASAのCMSへの資金提供の停止。なぜトランプ大統領は、このような決断に至ったのでしょうか。

NASAのスポークスマンのSteve Cole氏は、その理由として「予算全体の縮小と、優先順位が高い研究に予算が割り当てられるため」と述べています。トランプ政権による研究費の削減には「気候科学研究への最大級の攻撃だ」との声も聞かれています。気候変動の研究を行っているウッズホール研究センター(マサチューセッツ州)のトップであるPhil Duffy氏は、「CMSがトランプ大統領の標的であったことは明白だ」と言います。真偽のほどは定かではありませんが、少なくともCMSが機能しなくなると、世界の温暖化対策に多大な影響がおよぶことは確かです。理由を見ていきましょう。

■ パリ協定の目標達成度合いの検証が困難に 

CMSは前述の通り、地球温暖化の主要な原因とされる温室効果ガスであるCO2とメタンガスの排出量を観測するシステムです。大気中のCO2とメタンガスの量が増加しているのか、減少しているのか、その変動がわかります。また排出量を測定するだけでなく、森林に吸収されているCO2量を測定することで、発展途上国での森林破壊防止の抑制にも一石を投じています。

またCMSはパリ協定の下で、どの国がCO2削減の目標を達成しているかを検証する情報を得る手段としても機能します。今回のトランプ大統領の決定でCMSによるデータが利用できなくなると、全球規模での温室効果ガスの排出量ならびに削減量を測定することが難しくなります。これはつまり、各国がパリ協定を遵守しているかどうかを確認する術がなくなることを意味します。

■ 世界は温暖化対策を進めるが…… 

CMSが新たな資金提供を受ける予定はありませんが、NASAは、いくつかの炭素観測衛星を新たに宇宙に飛ばす計画だと言います。2018年後半には、軌道上炭素観測衛星(Orbiting Carbon Observatory, OCO-3)が国際宇宙ステーションに搭載される予定です。この衛星は、地球表面のCO2濃度の一日の変化を観測することになっており、その情報は、気候変動の研究に大いに役立つことが期待されます(2022年からは静止軌道観測衛星がCO2排出を観測する計画)。

しかし、これらのプロジェクトの将来も不透明です。2018年は米国議会が一定の予算を確保し、NASAは資金を獲得することができましたが、国のトップが特定分野の研究に懐疑的である限り、その研究に関わる予算がいつ削減されるかわからない、というのが正直なところでしょう。

Duffy氏は、気候科学研究や炭素観測の主導権はアメリカからヨーロッパに移るだろう、と言います。ヨーロッパはすでに炭素観測衛星を所有しており、新たに製作する計画もあります。優秀な研究者が集まり、地球温暖化に関する最先端研究の集積地として機能するかもしれません。

こうした準備をしているのはヨーロッパだけではありません。温暖化対策も念頭に、中国は再生可能エネルギー技術の分野で、急速な前進を遂げています。世界全体が、地球温暖化対策にこれまで以上に乗り出す中、果たしてアメリカはどう出るのか。世界はまさに、激変の時代を迎えています。

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