日本独特の概念の英訳:「ぬるま湯体質」ってどう訳す?

日本語から英語への翻訳をしていてしばしば困るのが、冗談と日本語独特の概念です。冗談というものは、思いのほかその社会にとって当たり前であることが反映されていることが多く、日本人の間では何の問題もなく通じるオチも、文化の違う英語圏の人にわかってもらおうとすると、何がどうして面白いのか、歴史や文化や生活形式を長々と説明せざるをえなくなることがあります。2ページにもまたがって説明を終えた後のオチでは、冗談の面白さも半分以下になっていまいます。
同様に、お茶席で抹茶の飲み方を説明するとき、“侘び”や“さび”などの日本特有の概念を表現する言葉が出てきたら、お茶席での礼儀についての話から脱線しない程度に、茶道とわび・さびとの関係を的確に要約して説明する必要があります。
このように冗談や日本語独特の概念が出てくると、翻訳者は「ここが腕の見せ所!」と思うわけです。
このような日本独特の概念のなかには、“侘び”や“さび”、“甘え”などのように、日本文化に興味を持っている人にはある程度知られている言葉も多くあります。そのような場合には、まずはwabi, sabi, amaeというようにローマ字で表記し、その初回に簡単な説明をするという方法がよくとられます。
しかし、“ぬるま湯体質”のように少し長めで、一般的に複合語と呼ばれる単語の場合、日本の文化として知られている概念でも、英語圏ではあまり使われない言葉もあります。また、長い言葉は覚えづらいため、wabiのようにローマ字でnurumayu taishitsyuと表記しても読者の記憶に残りにくく、全体に読みづらくてわかりにくい印象を与えかねません。そこで英語に訳す必要性が出てきます。
“ぬるま湯体質”を“ぬるま湯”と“体質”に分けて考えると、“lukewarm quality”とでも訳せばよいような気がしますが・・・。もともと“ぬるいお湯”がよくないものだという考えは、熱いお風呂につかってホッと一息つく日本人独特のものです。英語でも、a lukewarm responseといえば“気のない反応”という意味なので、まったく意味が通じないわけではありません。しかし、それが悪いことだというニュアンスはヒシヒシとは伝わってきません。
このように日本語独特の概念を英訳しようとして、行き詰まったとき役に立つのが・・・なんと国語辞典なのです! まずは“ぬるま湯体質”を国語辞典で引いて、言葉の意味を確認してみてください。“安楽な現状に甘んじて、のんきに過ごすこと。馴れ合いの関係”などという説明が出てくると思います。そこから逆に「馴れ合い」をキーワードに英語訳を探すと、cozyやup to fate、contentなど、さまざまな選択肢が見つかります。選択肢がいくつか集まったところで、日本語原文の論旨を最もよく反映する言葉を選べば、“ぬるいお湯”という概念に捉われない訳語が見つかるはずです。

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