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研究室で効率化をアップするコツ

研究活動は忙しいものです。日々新しいことに取り組みつつ研究を進め、期限通りに成果をまとめ、研究資金提供者への報告も行わなければなりません。特に研究を助成金に頼っている場合、研究成果をきちんと提出しなければ次の助成金獲得にも影響するため、計画的に研究プロジェクトを進めることは必須です。そのためには、効率的に研究をすることが求められるので、スケジュール(時間)やリソースをうまく管理できるように努めるべきでしょう。今回は、納期を守り、ワーク・ライフ・バランスを保つためにも有用な時間およびリソースの管理、実験時間の短縮につながるコツをご紹介します。

有能な研究責任者(PI)の効率化術

研究責任者(PI)は、研究活動と同時並行で研究室の管理業務や研究室メンバーの管理指導をバランスよく進めることが求められます。負担は大きいかもしれませんが、次のようなコツに留意しておくと助けになるでしょう。

  • 計画を立てる:スケジュールを立て、研究室メンバーと共有する。資料などを読む、ものを書くための時間もきちんと配分することが大切です。詳細かつ合理的にスケジュールを立てることが、一日の時間を効率的に使うことにつながります。
  • テンプレート(ひな型)を用意する:実験経過や結果の報告など研究室で作成する資料のテンプレートを用意しておくと、PIを含めて研究に関わるすべての人の作業の効率化が図れます。
  • 情報共有の仕組みを標準化:ファイリングシステムを整備し、その分類法や命名法を標準化しておくことで、情報を共有し、誰もが素早く必要な情報にアクセスできるようになります。
  • 会議の集約:会議は貴重な時間を奪うとともに、集中を途切れさせる要因にもなります。会議を週の決まった日にまとめると、他の日は本来の仕事に集中することができます。
  • 計画の見直し:週の半ばに計画の確認・見直しを行い、必要に応じて計画を調整すると、時間のロスを抑制できます。
  • 読書時間の確保:あらかじめ計画しておかないと資料や研究動向の情報などをタイムリーに読めなくなってしまうので、日次または週次で読書時間を確保するように決めておきます。
  • 研究企画会議:研究に関するアイデアや方向性などを議論する企画会議は長い時間がかかるものです。こうした会議は月次開催とし、研究室メンバーにはしっかりした準備を求めておきます。
  • 対応時間の確保:学生や若手研究員から指導を求められることが多々あるでしょう。それらに対応するための時間枠を設けておきます。学生や研究室のスタッフが簡単な質問をする時間を設けることで、他の手間(やらなければと予定していたこと)をやらずに済むかもしれません。
  • 余裕をもつ:スケジュールには多少の余裕を持たせておき、計画した仕事が予定以上に時間を要する場合や、やりそこなった作業のフォローに充てられるようにしておきます。
  • 自分に合わせて調整する:時間管理の仕組みを、自分や一緒に働く人たちの事情にあわせて微調整していき、自分なりにやりやすい形に整えます。

研究メンバー向けのコツ

PI以外の研究室のメンバーの主たる業務は研究に従事することですので、以下のような点に注意することが研究時間を節約し、効率性と正確性を高めることにつながります。

  • 作業環境:作業を行う場所を、清潔でモノが散乱しておらず、秩序だった状態にしておくことで生産性が上がります。
  • 研究ノート:研究ノートに実験記録をメモしておくだけではなく、電子ファイルでも保存しておくようにします。きちんと記録しておくことで、メモを探したり、実験データを分析したりする時間の無駄を削減できます。
  • ラベリング:試薬や保管棚には明瞭なラベルを付けておきます。実験に使うものを簡単かつ素早く見つけることができれば、時間の節約になります。
  • 記録する:実験内容や実験手法を適切に記録しておけば、トラブルが生じた場合の対応や判断に役立ちます。実験に要した時間を記録しておけば、次の実験の所要時間見積りの参考にもできます。
  • 段取りをする:無用な遅れやトラブルを避けるため、実験用の機器の予約をタイムリーに行うことや、段取り良く実験を進められるように計画することを、常に心掛けておき、状況に応じて適宜見直します。
  • 定期的に休憩を取る:頻繁に休憩をとりにくい状況であっても、できるかぎり定期的に休憩をとるようにします。疲れを回復すると能率はあがるものです。

時間節約のコツ

研究室では短時間に沢山の仕事をこなさねばと感じ、常にプレッシャーを感じているかもしれません。研究者が実践している時間節約のためのコツを集めてみました。

  • 朝型、夜型のどちらかにより、一番集中力を要する仕事を自分の生産性が最も高い時間帯にあてる
  • 机につく前に、実験準備をする。
  • 実験に取りかかる前に、手順と使用する試薬などをすべて書き出す。
  • 研究成果を複数個所にバックアップする。
  • 手待ち時間に、試薬や事前調整が必要な反応液(マスターミックス)のような実験材料を準備しておく。
  • 自分を含めた研究スタッフは十分な訓練を受けておく。事前に訓練を積んでおけば、実験中にどうしたらよいかと考えて時間を無駄にすることなしに、実験を効率的にすすめることができる。
  • 研究室のレイアウトは仕事がしやすいように配置する。動線や仕事の流れを効率化することで時間節約になる。
  • 必要な消耗品を事前に準備しておく。実験途中に消耗品を取りに行った先で在庫が無いのに気付くといったことが起こらないように注意する。
  • 整理整頓。実験が遅くまでかかっても、翌朝はきれいな実験台で始められるように片付ける。

実験に必要な資材のメンテナンス

実験を円滑に進めるためには、実験機器を適切にメンテナンス(保守・整備)しておくことも重要です。実験を効率的に行うには、機器以外にも必要なものがすべてそろってなければなりません。必要な資材が適確に準備され、皆が共有できる仕組みがあれば、資材の在庫切れは防げるはずです。

  • 組織的な管理:どこに何があるかを把握し、かつ保管する場所を確保しておく。
  • 整理:よく使うものは取り出しやすい場所に保管し、予備品は奥(出入りのない所)に保管しておく。
  • ラベリング:間違いが起こらないようにラベル付けしておく。特に危険物質の管理には一層注意する。
  • 管理ソフトウェアの利用:管理ソフトを利用して在庫の適正化を図る。
  • 新人オリエンテーション:新しく研究メンバーに加わった学生や研究スタッフ全員にも資材管理の仕組みを徹底して理解させる。
  • 棚卸:適宜在庫を棚卸して、管理台帳との齟齬を回避する。

こうした日々の仕事の進め方に関する問題は、良いと思われるものを取り入れつつ不断に改善していくことが得策です。キャリアの長い研究者には今更と感じられるものも含まれていますが、初心にかえって現状を見直し、自分に合った方法で効率化を図ってもらえれば幸いです。

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