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シンプルなアブストラクトの論文はより多く引用される

学術論文には必ずアブストラクト (要約)が付きます。そして論文は一般的にいって、引用される回数(被引用回数)が多ければ多いほど評価されます。では、アブストラクトの書き方はその論文の評価にどのような影響を与えるのでしょうか?
英国のワーウィック大学のデータ・サイエンティスト、エイドリアン・レッチフォード氏らは、論文の要約のスタイルが、その論文の被引用回数に影響するかどうかを調べ、その結果を『情報学ジャーナル(Journal of Informetrics)』で公表しました。
レッチフォード氏らは、オンラインデータベース「Web of Science」から、1999年から2008年までの各年について、最も引用された論文3万本の計量書誌学的データ(bibliometric data)をダウンロードしました。合計30万本のデータが集まったことになります。彼らはその中からアブストラクトや題名などが欠けている論文を取り除き、残りの21万6280本の論文について、それぞれのアブストラクトにある文字数や単語数、センテンス数をカウントして分析しました。その結果、アブストラクトでより頻繁に使われる言葉を使う論文を掲載するジャーナルは、論文1本あたりで見て、より多く引用される傾向があることが明らかになりました。また、アブストラクトでより頻繁に使われる言葉を使う論文は、同じジャーナルに掲載されるほかの論文と比較しても、より多く引用される傾向があることもわかりました。
さらに、アブストラクトの長さと論文が引用される回数との間にも関係があることもわかりました。レッチフォードらの分析では、アブストラクトがより短い論文を掲載するジャーナルは、論文1本あたりで見て、わずかに多く引用される傾向があることを示しました。また、アブストラクトがより短い論文は、同じジャーナルに掲載されるほかの論文と比べて、より多く引用される傾向があることもわかりました。彼らの計算モデルでは、5文字の言葉を1つ加えると、引用数が0.02%減るという結果が出ました。
レッチフォードらは、アブストラクトがより短くて、より頻繁に使われる言葉を含む論文がより多く引用される理由について、3つの可能性を述べています。第1に、インパクトファクターの高いジャーナルは、論文のアブストラクトの長さを制限し、より広い読者に適した書き方を要求しているのかもしれないこと。たとえば、『サイエンス』のアブストラクトは125語に制限されています。第2に、大きな科学的進歩を報告する論文は、より短いアブストラクトで書かれ、あまり専門的でない言葉を使うのかもしれないこと。第3に、より一般的な言葉を使ったより短いアブストラクトは読みやすく、それゆえにより多く引用されるのかもしれないこと。
ということは、より頻繁に使われる言葉で、より短いアブストラクト、つまりよりシンプルなアブストラクトを書くようにすれば、より多く引用される論文を書けるような気がしてきます。しかしもちろん、研究内容自体が優れていることが大前提でしょう。


ライター紹介:粥川準二(かゆかわじゅんじ)
1969年生まれ、愛知県出身。ライター・編集者・翻訳者。明治学院大学、日本大学、国士舘大学非常勤講師。著書『バイオ化する社会』(青土社)など、共訳書『逆襲するテクノロジー』(エドワード・テナー著、早川書房)など、監修書『曝された生』(アドリアナ・ペトリーナ著、森川麻衣子ほか訳、人文書院)。博士(社会学)。

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