【ニューハート・ワタナベ国際病院】捶井 達也 先生インタビュー

研究者の方たちの英語力向上法などについてお伺いするインタビューシリーズ22回目。

心臓血管外科・循環器内科の専門治療を行う『ニューハート・ワタナベ国際病院』で、高度な心臓手術などを手がけている捶井先生。手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ」を使用した心臓手術の訓練にも取り組まれるほか、日本の若手心臓血管外科医の技術と知識の向上を目指している「若手心臓外科医の会」にも世話人として所属され、お忙しい日々をすごされています。心臓外科の道に入られたきっかけから、 英語学習法 まで、お話いただきました。


■ ここは新しい病院と伺っているので、病院のことと、ご専門の心臓外科について、ご説明くださいますか。

ニューハート・ワタナベ国際病院は、2014年に開院した心臓血管・循環器に関する治療および手術を専門に行う病院です。年間500件以上の手術を行っており、心臓手術の実績としては都内でも多い方だと思います。当院では、手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ(da Vinci Surgical System)」を使った新しい治療法も積極的に取り入れており、心臓の僧帽弁の手術に使っています。ダ・ヴィンチによる手術は、傷口が小さいので非常に低侵襲手術だと言われており、患者さんへの負担が少ないのです。ロボットで僧帽弁の治療を行っているという点では日本で一番多く手がけています。

■ 先生が心臓外科という領域を選ばれたきっかけは何ですか。

金沢大学医学部での病院実習の時、現在はここの総長である渡邊剛先生の手術を見て、深い感銘と感動を受けて、ぜひ学びたいと思ったんです。医者になるのであれば、やっぱり憧れの心臓外科に挑戦してみたいという気持ちになりました。ものすごくインパクトが強くて。僕が学生だった当時、渡邊先生は金沢大学の教授をされていましたが、この心臓外科専門の病院を開設するという時にお声がけいただき、上司や先輩と一緒にこちらに来て四年半です。

■ 難しい心臓外科の治療や最新の設備を使った手術などをされている中で、何本ぐらい論文を書かれるのでしょうか。

去年は英語だけでも4本か5本は書いたと思います。新しいことに取り組んでいるということもありますし、民間病院ではありますがアカデミックなこともやっていきたいと思っているので。将来的に何かにつながるようなアカデミックなこともやっていきたいという強い思いもあります。

■ 英語で論文を書くための勉強などされましたか?

英語の勉強は学生の頃から少しずつやっていました。英語ができないと、何を伝えるにしても中途半端になってしまい、せっかく一生懸命やったことをしっかり伝えられないのは、もったいないです。しっかりした研究をしても、伝える英語の部分がしっかりしていないとついてこない。やった仕事の半分しか伝わらないとしたら、残念ですから。逆に、仕事の成果を十分伝えられれば、自分のキャリアにも役立つと思い、学生のうちから意識していました。

英語の勉強法としては学部生の時からいろいろなことをやりました。とりあえず『ニューズウィーク』や『タイム』とかの雑誌を読んだりしましたし、あとは、何か目標が必要だと思ったので、TOEFL iBTと英検の勉強もして、英検は1級を取って、iBTも80何点か取ったかな。他は、学生のときに海外留学の研修プログラムみたいなものがあったので、それに応募して1カ月間ハワイ大学での研修に参加しました。とにかく、なるべく英語に常に接するようにしていましたね。特に英語を指導してくれるような固定の先生はいなかったので、論文を書いて出して、その返事とかを見てまた書いてとか、うまく意図が伝わらなかったらネイティブの友達に聞くとかやってきました。ほぼ自分で書き慣れてきたという感じです。

■ 英語で発表される機会も多いですか?

そうですね。結構大きな演題もあります。学会などでの大きな演題になると、海外の研究者などもいるので、英語でスライドを作ることもありますし、場合によっては海外で(英語で)発表し、ディスカッションもということもあります。

■ 英語での発表には事前練習などされますか?難しいのはどんな点でしょう。

結構練習して行きます。しっかりこちらの意図が伝えられるように、文法や発音は気をつけます。聞き手に違和感を覚えてほしくないので。作った原稿を読んだり、上司に相談したりしますね。みんなで発表会というか、予行練習みたいなものをしたりもします。しかし、準備練習して臨んでも、発表の瞬間は大変です。僕らの発表は、手術の話が多いのですが、ちょっと曖昧というか伝えにくい部分があったり、動画と一緒にしゃべる時に、動画のスピードにうまくタイミング合わせられなかったり……動画とスピードを合わせて説明するというのが難しいんです。あとは、優しくとか、ふわっとみたいな、何というか感覚的なところというか、日本語独自のニュアンスを伝えるのもやっぱり難しいですね。

■ 発表のあと、海外の研究者の方が質問をしてきたりして、コミュニケーションに発展することはありますか。

やはりいい発表ができるとフィードバックは来ます。実際に連絡を取り合って、別の機会などで会うこともあります。懇親会やパーティーで海外の人たちの輪に入っていくのは結構つらいこともありますが、そこは臆せず。せっかくの機会なので、グイグイいくしかないと思っているんです。そこでネットワークができるってことも結構ありますし。アメリカやヨーロッパの先生はもちろん、南アフリカの先生とか、クロアチアの先生とか、近いとこだと韓国とか台湾とかの先生とかとも時々連絡を取り合っています。全部英語ですが、ここはこうかとか聞いたりしますね。

■ これから英語を研究で使う人たちにお勧めの勉強法があれば教えてください。

勉強法ですか。テレビなどで見聞きする英語と僕らがやっている学術的な英語は違うと思うんです。独自のニュアンスもそうですし、決まったニュアンスというのがあると思います。常日頃から、こういうのはこういうふうに言うとかを学習しておく必要があるので、原著を読むとかして、英語を使う間隔を空けないことじゃないでしょうか。ただ、僕が学生時代に『ニューズウィーク』や『タイム』を読んだりしていたことは、意味がないわけではないけれど、直接論文を書くことにはつながっていない。論文を書くには、いつまでに原稿を仕上げるとか、いつまでにデータ集めるとか、そういったことを決める必要があります。そうしなければ、年に3本4本の英語論文は書けない。やはり論文を書くためには、自分でスパンを決めて、定期的に論文を書く、自分で手を動かすってことが大事だと思いますし、添削してもらうことも大事だと思います。間違いを指摘されて直しながら覚えていけばよいと。自主トレですね。

■ 発表についても同じように自主トレでしょうか。

理想的には英会話教室に通えればいいのでしょうけれど、僕らはどうしても忙しくて、決まった時間を取るのが難しいので……。まあ今はいろいろありますけど。でも、継続していくことが大事だと思います。

■ 英語論文の作成や発表に関して、こんな授業や機会が学生時代にあったら良かったのにというようなものはありますか。

プレゼンのトレーニングじゃないでしょうか。受け身の授業ばかりでは、なかなかつかめない。これを読んで答えを出すみたいなものではなく、どう思うかを問われたときに自分の言葉で要点をまとめられるか――というようなトレーニングですね。その場でぱっと、これはどう思いますかと聞かれて、1にこう思う、2にこう思う、3でこう思う、で結論はこれって。海外の人は、子供の頃から小中学校でやってきているので、そういう展開に慣れています。そういった文化にこっちから入っていかないといけなくて、しかもそれを英語でやらなきゃいけないのは大変です。プレゼンもですが、自分の意見をしっかり伝えるってことが難しいので、そのトレーニングは必要だと思います。そんな練習をする機会があったら良かったかなと。

■ 弊社は英文校正サービスを提供させていただいていますが、サービスについて何かご要望などありますか。

すごくよくしてもらってますし、結構早く返してもらえるので助かっています。もし、エナゴを利用している研究者同士がつながるコミュニティみたいなものが作れたらいいかなと思いますね。Twitterとかいっぱいありますけど、人と人がつながったら面白いかなと。時々、企画のご案内をもらっているものに行かれればとも思うのですが……。

■ エナゴのご利用者様なら必ず受けられるセミナーを時々社内で開催しているのですが、論文の書き方とかプレゼンテーションに役立つ英語といった内容であれば、お役に立ちますか?

そうですね。是非参加してみたいと思います。

■ 最後に、若手研究者への応援メッセージをお願いできますか。

僕も言われてきましたが、英語論文っていうのはその人の顔であり、履歴書に残るものですし、一生残ります。書いている人と書いてない人って、明らかに差が出てくる。名刺代わりじゃないですけど、やはり論文は書かないと。書くのは結構つらいと思いますし、投げ出したくなることも多々ありますが、頑張って書けば実績として残るし、研究費の獲得につながったり、プラスプラスに働いていくものです。最初の一歩は大変だと思いますが、最初の1歩2歩を乗り越えられれば、もっと書けるようになりますし、どんどん好循環に回っていきます。とにかく最初を頑張って乗り越えること――最初の1本目2本目が大事です。

■ お忙しいところ、ありがとうございました。

 

【プロフィール】
捶井 達也 (たるい たつや)先生
ニューハート・ワタナベ国際病院 心臓外科医長 医学博士
2009年 金沢大学医学部卒業
2011年 富山赤十字病院 心臓血管・呼吸器外科
2012年 高邦会高木病院 心臓血管・呼吸器外科
2013年 金沢大学 心肺・総合外科 医員
2014年 ニューハート・ワタナベ国際病院
2016年 ニューハート・ワタナベ国際病院 心臓血管外科医長

 

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