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【上智大学】黄 光偉教授インタビュー(後編)

各大学の研究室に訪問し、研究者たちにおける英語力向上の可能性を探るインタビューシリーズ。五回目は、上智大学の黄 光偉(ホアン グアンウエイ)教授にお話を伺いました。インタビュー後編では、英語を「実際に使って」上達させる重要性についてお話くださいます。

■日本人の研究者が英語力を鍛えていくためには、どういう方法が一番効果的だと思いますか。
簡単です、英語をもっと使えばいいと思います。使えば必ずレベルアップできますから。
留学も効果的ですが、 留学 するためにはいろいろ条件があり、誰でも行けるとは限りません。留学に行かなくても、日本国内で英語力は身に付けられます。
上智大学は昔から英語教育を重視しています。例えば国際教養学部では、学部生の時から授業は全て英語です。数年前から始まった総合グローバル学部も、授業の多くが英語です。私の研究科には一般コースと国際コースのふたつがあり、一般コースは日本語で授業を行い日本語で論文を書きますが、国際コースは基本的に英語で授業しますし、修士論文も必ず英語で書かなければいけません。英語が上手な学生が多く在籍しており、周りの学生にも波及効果があると思います。
今後は国際コースを更に強化しようという構想もあります。そうすれば間違いなく英語によるコミュニケーション能力、文章力も相当向上するはずです。
また、教員の評価基準のひとつとして、論文は日本語で書くよりも英語で書いた論文が高く評価されるという制度が、上智大学でももうすぐ始まります。そういう評価システムが若手の研究者にも適用されれば、初めから英語でどんどん書いていくようになると思います。

■そうなると他大学と差が付きそうですね。
私は東大で学位を取りましたが、在籍中、指導教員とは基本的に日本語を使いませんでした。博士のプログラムでは、指導教授とのディスカッションや研究室のゼミでは全て英語でした。日本語を使ったのは「おはようございます」くらいでしたね。

■英語を話す環境にどれだけ身を置くかということが、やはり大事ですね。
東大の学生時代、最初はそれほど英語が上手ではなかった先生方が、英語で教え続けることで先生自身の英語も上達されていることに、よく気づきました。

■でも、先生方も突然「明日から英語で授業してください」と言われたら大変ですね。
1年目は大変だと思います。でも2年、3年続けるうちにどんどんレベルが高くなると思います。
もっと英語の授業を増やすというのは大学の方針です。学内で先生方に呼び掛けて、交流会のようなものを作った先生もいらっしゃいます。
少子化の社会では、いろいろな国から学生に来てもらわないと大学の経営そのものが成り立たなくなりますから、授業を日本語だけで提供し続けるのは難しくなります。英語での授業を増やすことは、そういった視点からも必要なのです。
もちろん日本の学生が外に出ていくことも大事なのですが、最近は留学志向を持っている人が減ってきているように感じます。欧米への留学に手を挙げる人はそれなりにいるのですが、英語が公用語として使用されているフィリピンの大学などには、留学を公募しても学生がなかなか集まりません。正確な理由はわかりませんが、安全面や生活習慣の違いなどへの心配が先に立ってしまっているのではないかと思います。

■英語に触れる機会を求めて外に飛び出していく学生さんが増えてほしいですね。私たちのような英文校正会社に求める新しいサービスはありますか。
いま英文校正会社が提供しているサービスは、われわれにとって不可欠なものになっています。国際的なジャーナルのほとんどが、投稿前のネイティブチェックを必須条件としています。冗談ですけど、英文校正会社とジャーナルが結託しているのではないかと勘繰りたくなるくらいです。

■ジャーナル側の事情を聞くと、査読する先生方に時間がないということが一番の理由のようです。
昔はとりあえず投稿して、内容が認められてアクセプトされた時点で英語をきれいに仕上げるというプロセスが一般的でした。最近は、投稿前にネイティブチェックに出さないと一発で落とされてしまう可能性もあります。
聞いた話ですが、スリランカ出身の研究者の方が論文を投稿したら、内容の評価は一切なしで、英語を改善するよう回答が来たそうです。その方は相当の英語力を持っていたそうなんですが。
そういうわけなので、現在の英文校正サービスは市場のニーズに応えていると思います。

■英文校正以外ではいかがですか。
例えば、スカイプなどを使用したプレゼンテーションの指導などあると役に立つと思います。
あと最近、一部のジャーナルで「グラフィカルアブストラクト」というのがトレンドになりつつあります。通常のアブストラクトは文字だけで書きますが、グラフィカルアブストラクトは論文の要約を表した図やグラフによって、研究結果を一目で読み手につかんでもらうものです。現時点では推奨するジャーナルがいくつかある程度ですが、これは結構効果があると思います。私も一目見て「ああ、これは分かりやすい」と感じたものがいくつもあり、次に投稿するときは取り入れようかなと考えています。読者の目を引くものが作れれば瞬時に研究内容を理解してもらえるわけですから、引用されることも増えて、私の評価も上がりますから。
ただ、これはセンスが求められると思うので、特に工学系の研究者の中には苦手な人もいるかもしれません。欧米の研究者の中にはすでにいいものを作っている人もいますが、日本ではまだまだ少ないですね。日本人の漫画力を使えば、面白いものが作れるのではないでしょうか。

■確かにそうかもしれないですね。参考にさせていただきます。


【プロフィール】

黄 光偉(ホアン グアンウエイ)
上智大学 地球環境学研究科 教授/上智大学地球環境研究所長

中国・上海にて生まれ育つ。1983年に復旦大学卒業後、1994年に東京大学にて博士号を取得。東京大学工学系、金沢大学、新潟大学、東京大学新領域、水災害・リスクマネジメント国際センターを経て現職。

1996年-2000年 東京大学工学系研究科河川/流域環境研究室 3次元流れ解析、湖沼富栄養化、
1996年-2000年 河川水温、局地気象モデル等について研究
2000年-2002年 金沢大学工学部水工研究室 河川流れ解析、河川構造物等について研究
2002年-2005年 新潟大学工学部水工研究室 氾濫解析、都市域水害軽減策、河川水温等について
2002年-2005年 研究
2005年-2010年 東京大学大学院新領域創成科学研究科 水圏環境研究室 湖沼富栄養化、
2005年-2010年 河川環境、渡り鳥と湿地環境容量、治水、流域統合管理等について研究
1996年-2現在: 乾燥地域における持続可能な発展のためのイノベイティブな水管理、湿地の保全と
1996年-2現在: 賢明な利用について研究

 

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