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【東京大学】佐藤 泰裕 准教授インタビュー(前編)

各大学の研究室に訪問し、研究者たちにおける英語力向上の可能性を探るインタビューシリーズ。十八回目は、東京大学大学院経済学研究科の佐藤泰裕先生にお話を伺いました。インタビュー前編では、学会における英語での発表や、そこで得た大切な教訓について語って下さいました。


■ 先生の研究分野、研究テーマを教えてください。
経済学の領域で、その中でも都市経済学、地域経済学、空間経済学について研究しています。経済学とは元々、社会のルールや制度などをどのように設計すればより暮らしやすくなるのかを考える学問ですが、その中で都市や地域間の人口移動に関する分析や、地域経済政策の外部性を分析するのが専門です。いろいろな都市にある共通の問題を探ったり、都市に関する仮説を実証したりといった具合です。
例えば最近、大都市の混雑とか通勤などの問題が挙がっていますが、なぜ都市に企業や団体が集まるのか、その理由を理詰めで考えてデータで確認していくということをやっています。また、学歴の高い人ほど大都市に集まりやすいとも言われます。それをちゃんとデータで検証可能な形に整理するのです。そこが、私の研究が「理論分析」と言われる所以です。分析した後にあらためてデータを見て、実際に有意に観察されるかどうか、統計学を使って検証しているのです。
■ ご自身の研究を発表するのは、学会が主な場所でしょうか。英語で発表される機会はありますか。
そうですね、学会や研究会です。国内と海外、両方ありますが、子供がまだ小さいので海外にはあまり頻繁には行かれず、年に1回か2回ですね。
国内の学会でも、状況によっては英語で発表をしたり、資料を作ったりすることがあります。大学によっては研究会を全部英語でやっているところもありますし、聴衆の中に日本語のわからない外国の方がいる場合には、英語で――となることもあります。外国の方が来るかどうかわかった時点で資料を英語に訳すこともあるし、逆に、英語でプレゼンテーションする準備をしていたのに参加者が全員日本人だったから日本語に切り替わるということもあります。
■ 国内外問わず、英語で発表したり資料を作ったりしなければならない時のご苦労、大変だったご経験はありますか。
発表や資料作成ではそれほどないのですけれど、やはり質疑応答が・・・・・・。分野によって違うと思いますが、経済学の場合は、学会発表や研究会の発表でも(発表者が)しゃべっている間に質問が来ます。こちらがまだ話している間に手が上がって、「ちょっとこれの意味を教えてくれない?」とか「ここの部分をもっと聞きたいんだけど」っていうのが来る(笑)。国内の学会だと発表が終わるまで待ってくれますが、海外の学会は途中でも容赦なく手が上がります。
■ 準備していない段階で、予期せぬ質問が来ると。
そういうことです。なまりの強い英語で聞かれたり、ネイティブの方に(文を)省略してしゃべられたりすると質問の意味がわからないことがあって、それをどうやって返したらいいのか、どう切り抜けたらいいのか、最初は苦労しました。
今では、聞き取れなかったら素直に「今、何て言ったんですか?」と聞き返します。すると相手は、違う言い回しで質問し直してくれることが多いです。質問を予測して「こういう質問ですか」と尋ねたりもします。そうすると、やり取りが割とかみ合うようになります。最初に確認をすることで、話が有意義に進むようにしています。
もちろん事前にフレーズをいくつか考えて臨みますが、学会の会場で発表をされているノンネイティブの上手な返し方をストックもしています。学会や会議の場で学んだことを発表に生かすということです。
■ 発表の合間に質問が入るという以外に、経済学の分野で独特な「ルール」はありますか。
発表時間は長めです。学会だと1人の持ち時間がだいたい30分くらいで、短くて20分くらい。発表8割、質疑応答2割で構成されています。最初のころは原稿を発表時間に合わせて用意していたのですが、合間に入ってくる質問に対応していると網羅しきれず、やりにくさを感じたため、用意しなくなりました。スライドを見ながら説明して、質問が来たらその場で答えるという流れです。
研究会もけっこう長いですね。報告となると、1人につき1時間半くらいかけます。スライドは用意しますが、議論しながらやるので、濃密なやり取りになります。
■ そうした長時間の発表でも、外国の方が参加された場合には英語になるのですよね……?
もちろんです。大変ですが、いろいろなノンネイティブの方の発表を聞いているうちに、日本人は日本語なまりでいいのだというのがわかってきて、ずいぶん楽になりました。最初はRとLの発音を・・・とか気にしていましたが、今は全然(笑)。伝えたいことを伝えるのが一番大事です。とにかく話して、伝わらなければもう一回話す。曖昧にしないことが大切だなと。スペインの方なんかはもう、完全にスペイン語じゃないかっていうような発音ですし、フランスの方もそう。それでも気にしない。気にして伝えたいことを伝えられないほうが、かえって相手に失礼と思ってよいのではないかと。だから、日本人も日本語なまりでいいと思います。

【プロフィール】
佐藤泰裕(さとう やすひろ)
東京大学大学院経済学研究科・経済学部
1996年 東京大学経済学部卒業
2000年 名古屋大学情報文化学部講師
2002年 東京大学 博士(経済学)取得
2007年 名古屋大学大学院環境学研究科准教授
2008年 大阪大学大学院経済学研究科准教授
2016年から現在 東京大学大学院経済学研究科准教授
ご専門分野:都市経済学・地域経済学

 

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