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【日本医科大学】 根岸靖幸 講師インタビュー(前編)

各大学の研究室に訪問し、研究者たちにおける英語力向上の可能性を探るインタビューシリーズ。20回目は、日本医科大学の微生物学免疫学教室で生殖免疫学の研究を進めている 根岸靖幸 先生です。
物理学の修士を取得後、大胆な方向転換で医学の道に入られたという異色のご経歴を持つ根岸先生。生殖免疫学研究における第一人者として、日本医科大学で教鞭を執られる傍ら、産婦人科医として診療にもあたられています。多忙な日々を過ごされながらも「研究環境に非常に恵まれている」と笑顔でおっしゃる根岸先生に、研究の概要と英語でのご苦労話を伺いました。


■ 物理学から医学へ転向されたとのことですが、きっかけは何だったのですか?
子どもの頃から宇宙やアインシュタインなどに興味があり、大学で物理学を専攻したのですが、研究者になるのは天才的なひらめきを持った人たちで、努力だけではなれないなと……。おまけにポストも少ない。そこで医学に移りました。実は、子どもの頃に大病をして、当時ご高名なある小児外科の先生に手術をしていただきました。以来、その先生とプライベートも含めて長年お付き合いさせて頂くようになり、そのなかで様々な影響を受け医学にも興味を持っていました。高校を卒業して大学に進学する際、物理学か医学かで悩んで、ロマンを追い求めて物理学に進んだのですが、結局は医学に転向したという経緯です。
■ 宇宙というマクロから「微生物学・免疫学」というミクロの世界への大転換ですね。ご専門について教えてください。
生殖免疫学という分野で、産婦人科学を免疫学の視点でとらえる研究をしています。早産や流産、妊娠高血圧症候群や胎児発育遅延など、生殖に関わる問題を免疫というアプローチで解決していこうとの試みで、特に今、注目しているのは早産の発症です。
早産の原因は感染が多いといわれていたのですが、僕が見ているのは感染を伴わないような、自然免疫を中心としたものです。無菌性炎症というもので、菌がない炎症。無菌性炎症に起因する何かが、早産の原因になる可能性を検証しているところです。赤ちゃんにはお父さんの遺伝子が半分入っているので、お母さんにとっては異物です。お母さんは生物学的な異物を妊娠期間中にお腹の中に保っておいて、時期がきたら分娩の形で、体から出さなければならない。この一連の流れの中で、母体への外からの刺激だけでなく、母体自体の免疫が早産や流産を起こすのではないか、という見解を持っています。10年前ぐらいにこの研究を始めましたが、国外でも同じような考えをしているグループが研究を進めていることが分かって、この概念が徐々に議論にあがるようになってきました。それでも、まだ一般的ではないし、確固たる証拠はない状況。道半ばです。
■ この分野の研究をしている研究者は少ないのですか?
少ないと思います。事実国内では産婦人科医不足が叫ばれていますし、多忙な産婦人科業務の中、なかなか研究の為に自分の手を動かして実験するのは難しいと思います。しかしながら免疫学的アプローチで流早産を研究している国内、国外グループはみな頑張っており、お互い切磋琢磨しているところです。ありがたいことに、私は産婦人科医としてヒトの検体を得やすい環境におり、さらに病棟で患者さんを受け持っている訳ではないので得られたサンプルを研究室ですぐに解析することが出来ます。現在は、ヒトとマウスの両面からアプローチできているので、本当にバランスよく仕事ができる環境にいます。何とかこの分野を引っ張っていける立場になろうと、今頑張っているところです。
■ それではここからは、英語についてお伺いしたいのですが。
僕は留学経験もないし、英語に関しては全然前向きじゃないんです(笑)。うまくなってやろうという意気込みがないというか……。何とか学会を乗り切ろうとか、何とかこの論文を出そうとか、目前のやらなければならないことで精いっぱいです。
最初の頃は、同じ研究分野の英語論文でも業界用語が分からないので、本当に一字一句辞書を引いていました。最初の1年ぐらいは、1本の論文を読むにもすごい時間がかかりましたが、最近はだんだんポイントが分かってきて、アブストラクトを読んで図を見ると、大体イメージがつかめるようになりました。そして結果を見て、後は必要なところを自分でピックアップする。徐々にそういった要領のいい論文の読み方ができるようになったのかなと思います。
書く時は、本当にエナゴさんにお世話になっています(笑)。最初のうちは、なかなか筆が進みませんでした。なので、読んだ論文で使われていた単語やフレーズなどをノートに書き溜めて、少しずつ自分のボキャブラリーを増やすようにしました。僕は同じ単語ばかり使ってしまいがちなので、他の人が使っている言い方やフレーズとかを書き溜めておくしかないんです。添削してもらって自分が思いもしなかった使い方をしているものなどを見つけると、それも書き留めておきます。「この表現もらった!」と(笑)。ネイティブになれないのは分かっているので、いろんな言い回しを手に入れるしかないかと。
他には、教授がいろいろな先生と英語でやり取りをされた際の記録を見せてもらい、ストックしておいて、抜き出して使う。出身が外科系なので基本、技術は盗むっていう立場なので(笑)。手紙の書き方やリバイスになった際の投稿期限の延長交渉とかを含め、そういった方法で書き方を習得しました。
■ 添削サービスがお役に立てて何よりです。
はい。おかげで論文を書くスピードがすごく速くなりました。あれこれ考えるよりもとりあえず書けば、直してもらえるので。直ってきた文章を見て、あ、こういう言い回しをすればよかったのか――と勉強すればいいと割り切って考えています。
■ 論文の(英語での)発表についてはいかがでしょう?
発表は結構慣れてきたので、割と楽しみになってきています。最初は発表の内容より、どういう風に挨拶するのか、どうやってプレゼンを始めればいいのか、イントロダクションから分からなかったので、いろいろ教えてもらいながらやってきました。
■ レビューを書かれることもありますか?
最近はレビューの執筆に苦戦しています。レビューを書くには全部読まなければならないから大変(笑)。期限は迫っているし……。批判めいたことも書かなきゃいけないのは難しいです。ネガティブな表現は結構苦手です。こんなこと書いちゃって失礼になるんじゃないかなとか考えますし。外国の方が書いたレビューには、こんな辛辣なこと言っていいの(?)みたいなものもあります。でも甘いことを書いてしまったら、何回もやり取りをしなきゃいけなくなるので、指摘すべきことはちゃんと指摘しないといけないと反省することも。ネガティブなことも含めてちゃんと書くようにしないとと思っています。

【プロフィール】
根岸 靖幸(ねぎし やすゆき)
日本医科大学 微生物学免疫学教室 講師
1995年3月:東京都立大学(現、首都大学東京)にて修士を取得(物理学)
1996年4月:日本医科大学医学部入学
2002年5月:日本医科大学医学部卒業、産婦人科学教室入局
2006年9月:日本医科大学大学院医学研究科入学(微生物学免疫学)
以降生殖免疫学の研究に従事
2012年3月:日本医科大学大学院医学研究科修了(微生物学免疫学)
2012年9月 日本医科大学助教 医学部 基礎医学微生物学免疫学、
2018年4月 日本医科大学講師 医学部 基礎医学微生物学免疫学
受賞
2010年度:第25回日本生殖免疫学会学会賞
2012年度:American Society for Reproductive Immunology, European Society for Reproductive Immunology(米欧合同開催)、Best Poster Award
2012年度:第27回日本生殖免疫学会学会賞
2017年度:日本医科大学 同窓会医学研究助成金受賞
2017年度:第25回日本胎盤学会学会賞(相馬賞)
2017年度:第32回日本生殖免疫学会学会賞

 

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