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【東洋大学】井上亜依教授インタビュー(後編)

各大学の研究室に訪問し、研究者たちにおける英語力向上の可能性を探るインタビューシリーズ。三回目は、東洋大学の井上亜依教授にお話を伺いました。インタビュー後編では、若い研究者が英語を上達させるコツについて、更に詳しくお話くださいます。


■学生さんから発表について相談を受けることもありますか。
あります。ここ防衛大学校(編集部注:防衛大学校はインタビュー当時2016年の井上先生のご所属先です)の大学生だけでなく、他の大学で教えている大学院生から相談を受けることもありますが、まずは自力で書いてくるように答えます。とりあえず書いてみれば自分の考えがまとまりますから。それを読んで、論文の内容のことでも英語のことでもアドバイスしてあげます。

大学院生との授業では、前期は講義形式で私がいろいろ教えて、後期では前期の講義を基に自分で問題を見つけて調査・発表後、クラスメイトと私からのフィードバックを基に論文を書くという流れにしています。発表の際には英語のスライドとハンドアウトも作らせますが、いきなりやれと言われても難しいですから、最初に私が一通りの見本を作ります。

■それはすごくいい機会ですね。
院生は修士論文を書くときに必ず口頭試問がありますから、授業で一通りのことをやっていれば、自信もつくと思います。

■学生さんや若い研究者の方々は、英語で論文を書いたり発表したりする力をどのように鍛えていくのがよいと思われますか。
英語論文の上達法は、うまい人の書き方をまねることです。自分の論文がジャーナルにアクセプトされないのには、必ず理由があります。内容も大切ですが、アクセプトされる論文の英語と、アクセプトされない英語は違うと思います。いろいろな論文を読んで、使える言い方を見つけたら書き留める。そして自分が論文を書くときに、それを活かして自分の言葉で書いていくのがいいと思います。英語の発表についても、アジアなまりの英語ではなく、きれいに聞こえる英語をまねるべきです。NHKが配信している英語ニュースなどの上手な発音を聞いて、それをまねるよう心がけます。でも結局は、英語で論文を書くのも学会で発表するのも、失敗して慣れていくしかないですね(笑)。

私が大学院生のときは、アカデミックライティングやスピーチコミュニケーションの授業なども取っていましたが、それに加えて自分で勉強していかないと身につきません。試行錯誤の連続でしたね。

■そもそも、英語力向上のためにはどのような学習法が有効でしょうか。
片っ端から英語に触れることが大事だと思います。学問に王道なし、です。

インターネットのおかげで、海外に行かなくても世界中の情報はいろいろ入ってきます。英字新聞もたくさん出ていますし、BBCやCNNなどの英語ニュースもオンラインで見られます。英語は私たちの母語ではありません。であるなら、考える前にやるしかない。本当に何でもいいから興味のあるのを読んでいく、聞いていく。英語にたくさん触れる。その上で、研究者ですから自分の専門の英文ももちろん読む。月並みな言い方になってしまいますが、今置かれている環境で最大限できることをやれば、必ず力はつくと思います。

■先生ご自身も、日本でできることをとにかくやってきたということでしょうか。
そうですね。海外は学会発表などで行くくらいです。特に留学の経験もありませんが、日本の大学院にも外国人の先生はいらっしゃいましたから、英語の授業も受けられました。英語が上達するかどうかは、本当に本人の心意気次第だと思います。

■今後、英語を扱う弊社のような会社にどのようなサービスを期待しますか。
現状のサービスで私は十二分に満足していますが、強いて言えば、論文のアブストラクトだけでも英語のナレーションをいただけて、専門用語の難しい発音を確認できると助かります。ネイティブの音の区切り方が真似できれば、それだけでより英語らしくなります。どんなにいい内容でも発音が悪いと聞いてもらえないので。

■貴重なご意見、ありがとうございます。


【プロフィール】

井上 亜依(いのうえ あい)
東洋大学 経済学部 教授

2021年4月-現在 東洋大学 経済学部 教授
2010年10月-2021年3月 防衛大学校 外国語教育室 准教授
2008年10月-2010年9月 防衛大学校 外国語教育室 講師
2006年4月-2008年9月 長崎外国語大学 外国語学部 講師
2005年4月-2006年3月 関西学院大学 非常勤講師
2005年4月-2006年3月 大阪産業大学 非常勤講師

 

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