Dr.Asamoto

【国際医療福祉大学 三田病院】朝本 俊司 教授インタビュー

各大学の研究室に訪問し、研究者たちにおける英語力向上の可能性を探るインタビューシリーズ。十三回目は、国際医療福祉大学三田病院の朝本俊司先生にお話を伺いました。脳神経外科医でありながら日本のスポーツドクターの第一人者でもある朝本先生。英語力を伸ばす最短の方法や、論文執筆の経験の大切さをお話し下さいました。


■先生の専門分野、研究室の研究テーマを教えてください。

脳神経外科で、脊椎脊髄外科が専門です。

■早速ですが、英語論文を執筆したり学会発表をしたりする際に英語でご苦労されたご経験はありますか?

中・高・大学のカリキュラムで学んだ程度でしたので、当初は苦労しましたね……。まず論文を書くにしても、基本的な文章の構成の仕方すらわからないので、色々な論文を読んで、使えそうな表現を持ってくるしかない。ある程度はそれで済むのですが、細かな言い回しとなると、そう簡単には書けませんよね。英文校正などを専門にしている会社の手を借りながら、何とかやってきたという感じです。

学会発表についてですが、準備の段階では、スクリプトをまとめて繰り返し読む。発表の約3ヶ月前から、ひたすらリピート。電車の中でもリピートします。そうして本番に臨むのですが、今でも苦労します。特に質疑応答になると、言いたいことがうまく伝えられないということがあります。

■想定外の質問が出てくることもありますものね……。

たまに突拍子もない質問が出てくるので、「何を言ってるんだろう」と内心、首をかしげてしまうこともあります。聞く分には、テクニカルターム(専門用語)はわかるので内容は理解できるのですが、答え方に悩む。時間がないし、瞬時のリアクションが求められるので難しいです。お互いにネイティブじゃないと、厳しいですよね……。ボキャブラリーの量によっても左右されますね。

■ボキャブラリーと言えば、先生はドイツ語もお出来になるそうですが、言葉で混乱されることはありませんか?

ドイツ語のほうが得意なので、英語より先にドイツ語が出てくることがあります。英語がドイツ語から派生しているせいか、英語とドイツ語は頭の中で切り替えやすいんです。ただそれが困るところで、英語を話していてもドイツ語が突然ぽろっと出てくることがあって、けっこう厄介です。

■「カルテ」をはじめ、医療用語にはドイツ語がいくつかあるので、ドクターはドイツ語を使用するイメージがあるのですが。

大昔の話です。僕よりも二世代、三世代前の時代にはドイツ語のほうが多く使われていたようですが、今の医学界は、ほとんど英語です。

■ドイツ語は留学して習得されたのですか?

はい。2000年から2002年まで留学していました。使わざるを得ない状況に追い込まれると、自然に身に付くものです。研究発表もドイツ語でやりましたからね。ですので、僕の場合はドイツ語より英語で困るケースが多いんです。

■今までインタビューさせていただいた先生方には無かったケースです。

本当ですか。複数の言語をきちんと使える方は問題ないのでしょうけれど、僕の場合、両方とも中途半端ですから……。

■留学されていたときのご経験は、その後、外国語で論文の執筆や学会発表をする際に役に立ちましたか?

度胸がついたという意味で役に立っています。外国人と24時間一緒にいたから、外人アレルギーが解消されたというか、物怖じしなくなった。ドイツでは手術の執刀もしたので、患者さんへの説明も外国語でしなければならなかった。手術前に「今からこういう手術をするよ」とか。

日本人の中には、外国人を避けてしまう方が少なくないように思います。どうしても日本語で話すより緊張しますからね。それゆえ言いたいことが言えなくなったり、言葉が出てこなくなったりするのですが、そうならないよう、度胸を付けておく必要がありますね。手っ取り早いのが留学です。外国人と時間を共にしていれば、おのずと度胸はつきますから、大きな収穫となるはずです。ドイツでの経験があるから、どこの国の人が相手でも、何かしらコミュニケーションできると思えるようになりました。

■学生や若手研究者に留学を薦めますか?

絶対薦めます。マスト(必須)と言っても過言ではないです。ただ、最近は留学に行きませんね……。もちろん行かなくても医者にはなれますが、海外での経験は貴重です。論文執筆を後回しにしてでも、留学はしたほうがよいです。そこで専門性を磨くこと。これが一番です。

■学生や若手研究者に限りませんが、先生の周りの研究仲間などに、英語で苦労されている方はいますか?

もちろんいますよ。苦労するところは同じで、学会発表や論文です。学生や若手も同じでしょう。若い子が論文を書いて持ってくるのですが、見ると、僕でもおかしいと思う部分があったりします。

■その苦しんでいる学生や若手には、どのような指導をされるのですか?役立つ本などはありますか?

英語論文の書き方の本などを参考にしながら、自分なりにチェックをします。時間をやりくりしてある程度の段階にまで仕上げ、その後は原稿を英文校正の会社に渡します。

ある程度というのを具体的に説明するのは難しいのですが、納得できる段階にまで自分で仕上げられるようになるには、「数」が大事です。自分で何本も論文を書くしかない。他の先生方が何とアドバイスをされるのかはわかりませんが、自分でやって経験するしかないと思います。

■たくさん書かれることで、語学を習得されてきたのですね。

ドクターになるまでも書きましたし、なってからも書いています。なってからのほうが、書く機会が増えるんです。ドイツ滞在中、1年で7本書きました。1本書くのにも当然かなりの時間がかかるし、投稿してからアクセプトされるまでも時間がかかります。それでも意地で7本、全部自分で書いて業者に出しました。本数がモノを言う世界です。これも経験ですね。

■教育の現場にどのような仕組みがあれば、研究者や学生の英語力がアップすると思われますか?

大学の中には論文の書き方を学ぶ授業をやっているところがありますが、僕は正直、いらないと思っています。研究者も学生も、専門性を深めるべきだと思うんです。論文の書き方を学ぶ、論文を書くスキルを上げるのは二の次で、時間があるときに各自で勉強すればよい。英文校正の会社もあるのだから、使えばよいという考えです。

■英文校正を仕事にする身としては、活用していただけて何よりです。最後に、これから英語論文を書いたり発表をしたりする学生や若い研究者へのアドバイスなどあればお願いします。

論文に関して言えば、年に1本は書いたほうがよい。一度に書くのは大変なので、1日3行ずつでも書けばいいんじゃないかと思います。論文にかかりきりになるのではなく、1日3行。それを積み重ねて、1年1本。学会発表については、やはり1年に1回ぐらいは国際学会にエントリーして、外国人と英語でディスカッションをしたらいいと思います。自分の分野の学会に自発的に参加して、経験を積むのが大切です。

■どうもありがとうございました。


【プロフィール】

朝本 俊司  (あさもと・しゅんじ)
国際医療福祉大学医学部教授
脳神経外科、脊椎脊髄外科
医学博士
東京女子医科大学脳神経外科兼任講師、東京医科大学脳神経外科兼任講師
前東京都保健医療公社荏原病院脳神経外科、元ギーセン大学脳神経外科、元自治医科大学附属大宮医療センター脳神経外科
日本脊髄外科学会認定指導医、日本脳神経外科学会認定脳神経外科専門医、日本脳卒中学会認定脳卒中専門医、日本体育協会公認スポーツドクター、日本アイスホッケー連盟医・科学委員、東北Free Blades(アイスホッケーアジアリーグ)チームドクター

1991年 昭和大学大学院卒業 医学博士取得
1991年 自治医科大学大宮医療センター(現:さいたま医療センター)脳神経外科 レジデント
1995年 東京都立荏原病院(現:東京都保健医療公社荏原病院) 脳神経外科 医員
2000年 Giessen大学病院(ドイツ連邦共和国 ヘッセン州) 脳神経外科 医員
2005年- 国際医療福祉大学三田病院 講師
2007年- 国際医療福祉大学三田病院 准教授
2014年- 国際医療福祉大学三田病院 教授 昭和大学医学部卒

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