調査結果:オープンアクセスに肯定的でも掲載料金負担が
ユレイタスが2021年1月に実施したオープンアクセスジャーナルの現在の課題にまつわるアンケート調査にて、200名を超える研究者の皆様にご回答をお寄せいただきました。オープンアクセスについて日本の研究者がどのように感じているか、有料購読誌に対し、オープンアクセスジャーナルで出版するという選択肢がどの程度普及しているかの指標となるデータとして調査結果を発表させていただきます。
■調査概要■
- 調査対象:学術翻訳ユレイタスを利用してくださっている日本の研究者
- 調査集計期間:2020年12月1日~2021年1月31日
- 調査方法:インターネット調査
- 有効回答数:203名
Q.あなたにとって、日本でオープンアクセスジャーナルの受け入れが遅れている原因は次のうちどれだと思いますか?(該当するものにすべて印をつけてください) [複数回答可]
Q. 公的な助成金を受けた研究は、オープンアクセスジャーナルに掲載され、研究コミュニティ間で自由に利用できるようにしなければならないと思いますか?
Q. 研究者として、オープンアクセスジャーナルでの出版は、研究の到達度や影響力を高めるのに役立つと思いますか?
Q. 研究者にとって、オープンアクセスは研究がしやすくなると思いますか?
調査結果の概観:
ユレイタスの調査では、日本の研究者たちがオープンアクセス化に対して肯定的な捉え方をしているものの、掲載料の高さがオープンアクセスの普及を阻む大きな要因となっていることが明らかになりました。
また、掲載料の高さに加え、オープンアクセスジャーナルの認知度の低さも、受け入れの遅れの原因だと捉えることができます。
オープンアクセスジャーナルの論文掲載料とは
論文掲載料(APC) とは、オープンアクセスジャーナルが論文出版のために著者に課す料金です。料金は、研究者個人、研究者の所属する研究機関、または、研究資金提供者(助成団体)が負担します。掲載料はジャーナルによって異なります。人気の高いジャーナルでは50万円になるものもありますが、10万円程度のものもあります。
助成を受けた研究の中には助成金の中から費用を捻出できる場合もありますが、ほとんどの研究者が掲載料を高いと感じている理由も明白です。自己資金で行われている研究も少なくからずあり、また助成を受けた研究でも、研究者は予算を研究自体に費やして出版への出費はできる限り少なくしたいと考えているからです。
このように、オープンアクセス出版が本格的に軌道に乗るためには、日本だけでなく世界の他の地域においても、掲載料の問題が最大の障害になりうるということが予測されます。
なぜ日本の研究者はオープンアクセス出版を支持しているのか?
オープンアクセスのメリットを理解するには、従来の有料購読式の論文出版を理解することが重要です。有料購読式のジャーナルでは、研究者が事実上無料で論文を出版できるようになっているものの、読者側が出版された研究論文にアクセスするには料金が必要となります。一方、オープンアクセスの学術ジャーナルに掲載された研究論文へのアクセスは完全に無料です。出版された記事は誰もが読むことができるため、より多くの読者の獲得と引用回数の増加につながるということが広く知られています。
オープンアクセスを後押しするもう一つの大きな要素は、自己資金で行われたり、研究機関が資金を提供したりする研究の成果は、誰でも無料で利用できるようにすべきだという考え方です。それにより、長い目で見ると、より詳細な研究、知識のより有益な共有、各分野の研究の加速がもたらされる可能性があるためです。
今回の調査結果をまとめると、日本の研究者たちはオープンアクセスのメリットについてはしっかりと認識しているものの、日本におけるオープンアクセスの普及のためにはオープンアクセスについての認知向上と、掲載料の問題の解決が必要だと考えられます。
本アンケート調査は、当社サイトおよび研究者へのダイレクトメールを通じて実施されました。各質問に、1人1回のみ回答できる方式で意見を収集しています。今後のアンケートにご協力いただける場合には、下記よりご登録ください。
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